インタビュー

【塩尻市 山田崇氏:第7話】公務員という後ろ盾があるから挑戦ができる

山田崇7

公務員には存在する意味がある

加藤:地方自治体で働くだいご味を教えて下さい。

山田氏:やっぱり、公務員には存在する意味があると思っているのが、だいご味ですよね。公務員がやっぱり必要だと思っているんですよ。そして、これからの変化や、不確実性のある中で、公務員は何を手放しちゃいけないのか、すごく関心がある。

 今までは、広く全国同じサービスを求められていたけど、これから民間にアウトソーシングしていく部分があったり、市民と協働していく流れの中で、『我々公務員が失っちゃいけないものは何なのか』っていうことを、実際仕事をしながら考えられるし、試せる。今そこに、私はすごくやりがいを感じています。

公務員は自分の生まれ育った地域から変化が起こせる

加藤:そうですよね。自治体の自由度が増して、その選択肢も増した。

山田氏:もっと言うと、地方公務員法と地方自治法っていう、全国、同じルールの上に僕らはいるじゃないですか。その中で、僕らが手掛けたプロジェクトは、日本のモデルになる可能性がある。

 『MICHIKARA』も塩尻だけじゃなく、全国に広がっていけば、私は「数人の地方公務員から、本当に日本を変える一つのきっかけっていうのを作れるんだな」っていうのを確信していますね。僕ら公務員は、自分の生まれ育った地域からそれができるんですよ。

「初めて、公務員がうらやましいと思った」

山田氏:『MICHIKARA』だって、自治体だからこそできている。

 行政だからやらなければいけないものが、何となく私の中でも見えてきています。それをやることによって、民間企業が地域を使って挑戦できたりする場は、本当に作れるんじゃないかと。

 最近、一番嬉しかったのが、民間の人で挑戦をしている人が、私の講演を聞いて名刺交換の際に言った一言なんです。彼は、「初めて、公務員がうらやましいと思った」って言ってくれたんですよ。

加藤:私もそう思います。

公務員という後ろ盾があるから挑戦ができる

山田氏:今、私が公務員に軸足があるから、変な恰好していても、一見はみ出しているようなことでも、一応ちゃんとした人かなって思ってもらえる(笑)。

 振り返っても、公務員であるということが私の中で、すごく大きな後ろ盾だったと思います。「そうは言っても公務員だから、そんなに変なことしないでしょ」と、地域の人が思ってくれている。だからこそ、挑戦ができる。

 一回新潟で、「空き家お掃除なのだ」をやりたいって言った民間の若い子たちが「うまくいかなかった」って言うんです。だって、「タダで掃除させてください」なんて、大家さんからみたら「もう怪しいよね」と。そういう意味では本当に、公務員ということには力があるのだと思います。

加藤:長時間、お時間をいただいてありがとうございました。インタビューは以上となります。

山田氏:こちらこそありがとうございました。

編集後記

 7月15日に、山田氏に誘われて『会場が「汐留」だけ決まっているイベント』という名前の会に参加した。シンプルに飲み会をするものだと思って参加したのだが、まず、ソフトバンク社の会議室に1時間程集まることとなった。

 そこで、「この場から何かアクションをしていこう」という話が山田氏からあり、その場に集まった約15人の方が、自身が「周りの人に対してどんな話ができるのか」という内容を発表し、その後に飲み会となった。

 『会場が「汐留」だけ決まっているイベント』というのは実に妙である。山田氏曰く、「何かをやろうとする過程そのものをイベント化してしまうことで、新しいアクションを生み出せるのではないか」ということであった。行動力のある山田氏ならではの、成果を支える根幹の発想なのだと思う。

 私は、「とりあえず動いてみる」という考え方は好きだ。「リーンスタートアップ」と呼ばれる―この言葉自体はあまり好きではないが―少額投資でPDCAを高速で回していく企業の在り方が、評価されているという時代背景もある。

 地方自治体は大企業にやや気質が近く、慎重に動く事のほうが圧倒的に多いといえる。ミスが許されない仕事が多いということもあるだろう。しかし、だからと言って、それは組織の新しい価値を創出するアクションを阻害する、正当な理由にはならないと思う。

 というのも、過去に発生した雪印の食中毒や、最近ではタカタのエアバッグの欠陥問題などを見るにつけ、何か一つの事象で存続の危機的状況に追い込まれる組織もある。ただ、これらのリスクを抱えてしまった企業であっても、常に試行錯誤しながらも、新しい価値を提供し続けようと動いて来たのである。恐らく、企業間競争にさらされていたこれらの会社が前例踏襲に拘り続けていたとすれば、もっと早い時期に存続危機が生じたのではないだろうか。

 翻って、地方自治体はどうだろうか。仕事におけるミスの許容度はその仕事によっても異なるので、リスクをとって良い部署と、そうでない部署の認識を切り分けることは大事なことかもしれない。そして、そもそものところ、自治体が何らかのミスを犯したからといって、それによって即自治体が潰れる可能性はほとんどない。

 もちろん、潰れないからミスをしてもいいということではない。しかし、安定的な財源や基礎的な下地に恵まれている組織故に、失敗を許容し、恐れずアクションをする。そして、PDCAを回し、長期的により高いサービスの提供を目指すという発想があってもいいのではないかと思う。もし、住民の反発があり簡単に調整ができないというのであれば、そこは議会と共に説得してほしいとも思う。

 組織の最小単位は人である。組織がチャレンジをしているということは、組織の中の誰かがチャレンジしている筈である。逆にいうと、『個人』のチャレンジなしに組織のチャレンジはあり得ない。そういう意味では、自治体職員個人がチャレンジできるような寛容さが、自治体組織にも住民にも必要とされているのではないかと思う。

 「市長から、山田みたいな人間は1人でいい」と言われたという話があった。野球の1番から9番までがホームランバッターである必要がないように、市役所全ての人が山田氏のようなタイプである必要はないと思う。

 ただ、様々な能力、個性を所持する多様な人材を生かすことの出来る自治体か、そうでないかで、これからの自治体のパフォーマンスは大きく変わっていくのではないだろうか。なぜなら、社会そのものが既に多様化して来ているからである。

※本インタビューは全7話です

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加藤年紀(かとうとしき)
株式会社ホルグ代表取締役社長。株式会社ネクスト(※現「株式会社LIFULL[東証一部:2120])に2007年4月に新卒入社し、営業グループマネージャー、WEBプロモーションに関するグループマネージャーなどを経て、2012年5月に同社インドネシア子会社『PT.LIFULL MEDIA INDONESIA』の最高執行責任者(COO)/取締役として出向。子会社の立ち上げを行い、以降4年半ジャカルタに駐在。2016年9月に同社退社後に、株式会社ホルグを設立。

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