記事タイトル:自治体、新興と契約1% 目利きや情報開示に不安 政府推奨の制度、活用進まず(日本経済新聞・2026年8月26日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO98382710V20C26A8EP0000/
(文=晝田浩一郎)
今月は、スタートアップ×公共調達として「契約」と「4号随契」の話です。
ざっくりいうと、スタートアップから製品やサービスを調達できる「4号随契」という制度があるのに、使っている自治体は全国で18団体、1%程度にとどまっている、というニュースです。
そもそも「4号随契」ってご存知でした?2004年・20年前からある制度ですが、知る人ぞ知るってものだと感じます。いろんな行政職員の方とお話しますが、知らない方が大半です。
4号随契とは、地方自治法施行令167条の2第1項第4号にもとづく随意契約を指します。新商品の生産により新事業分野の開拓を図る事業者として首長が認定すれば、入札を経ずに随意契約で調達できます。
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経産省 4号随契
https://www.meti.go.jp/press/2026/08/20260804001.html
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では、なぜ広がらないのか……。
ひとつは、手続きの重さです。企業が新規性や生産計画を盛り込んだ計画文書を出し、自治体は委員会を開いて2人以上の学識経験者の意見を聞き、首長が認定したうえで契約を結ぶ。実績のない自治体からは「新規性を判断する目利き力が育っていない」「市民や議会に納得してもらえる情報公開の仕組みが必要」という声も出ています。
国も本気
経済産業省と総務省が8月、4号随契をめぐって新たな通知を全自治体に出しました。ご覧になりましたか、ぜひ供覧確認してみてください。
ちなみに弊社も今年度、経済産業省の事業を受託して、スタートアップの公共調達を進めるモデルづくりに取り組んでいます。現場に入っていて感じるのは、国がこの「あたりまえ」を本気で見直そうとしている、ということです。
先行している自治体の動き
国の通知を待たずに動いていた自治体もあります。
東京都の「ファーストカスタマー・アライアンス」は、政策目的随意契約の認定情報を、全国の参画自治体で相互に活用できるようにする仕組みです。ある自治体で認定された製品を、別の自治体が一から評価し直さなくていい。2025年3月に9自治体で発足し、いまは20を超える自治体が参加しています。
福岡市の「mirai@(ミライアット)」も見逃せません。民間事業者と福岡市をつなぐワンストップ窓口で、実証実験フルサポート事業、公民共働事業に加えて「スタートアップ公共調達サポート事業」を持っています。市が行政課題を提示して提案を募り、実証実験で良い結果が出れば、そのまま契約につながる前提で公募する。チャレンジがビジネスに直結するスキームです。
どちらにも共通するのは、「評価のやり直し」と「実証のやり逃げ」という、2つの無駄をなくそうとしていることです。
to G、through G、with G
企業と自治体の関わり方には、大きく3つの型があります。
1つ目は「to G」。
自治体を顧客として、製品やサービスを売る。入札、委託、そして今回の4号随契もここに入ります。
2つ目は「through G」。
自治体を通じて、その先の住民や企業に届ける。出産記念品の配布、学校での出前授業、広報誌での周知。自治体は顧客ではなくチャネルです。
3つ目が「with G」。
自治体とともに、まだ市場になっていないものを一緒につくる。実証実験、共同研究、新規事業の共創。
どれが優れている、という話ではありません。
公共調達は公共サービスを支える大事な仕組みですし、to Gなくして企業は成り立ちません。through G, with Gとして弊社は「自治体を顧客として見るだけ」から一歩進んで、連携や共創の促進に取り組んでいますが、to Gを否定しているわけではまったくないんです。
実証実験をやりきったスタートアップが、その後のプロポーザルや入札で大手企業に負ける。現場ではあるあるです。ぐぬぬ……となった自治体職員もスタートアップ企業の方も多数いらっしゃるはずです。
土壌を耕して、種をまいて、芽が出て、ようやく蕾になったころ。そこに大手がやってきて、きれいに刈り取っていく……。
契約事務を厳密にやることの重要性も、元公務員としてよくわかります。官製談合の防止は、公務員にとって絶対に外せない一線です。「あの会社がんばってたから随契で」なんてことは、できません。
しかし、実証にリソースを投じた企業が、最後に何も得られないとわかっていたら、次から誰も手を挙げなくなります。そうなって困るのは、結局は自治体であり、住民です。
実証実験で成果を出した企業に、ある程度のインセンティブがあること。これは公平性と矛盾しません。評価の中に「実証で何を証明したか」を正当に組み込むことは、公正な評価です。福岡市が「実証で良い結果が出れば契約につながる前提で公募する」と最初から宣言しているのは、まさにこの設計だとおもいます。
総務省や経産省が動いているのは、こうした「あたりまえ」を見直そうという流れです。
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