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ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析top

HOLG編集室

著者が語る「ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析」(福岡県糸島市 岡祐輔)

(文=福岡県糸島市 岡祐輔)

データ分析ができればメリットがある!

 そもそもデータ分析がなぜ必要なのでしょうか。
 意思決定を下すため?、しかし、意思決定は勘や経験だけでもできます。そう考えると、成功率のアップ、自信や安心得、周囲の納得が得られることがメリット。つまり、「意思決定のプロセスを助けるため」という方がピッタリかもしれません。

データ分析がわかれば“竜に翼を得たる如し”

 政策立案するとき、計画書を作るとき、議会や住民向けの説明資料を作るとき、色々な場面で、統計学の知識や技術が役に立ちます。
 そこで、使ってみたいと思っているけど、なかなか重い腰が上がらず悩んでいる皆さんのお役に立てればと筆を取った次第です。
 地方自治体は、地域のあらゆるデータを持っており、データを収集するときも多くの協力を得られます。さらに民間企業と違い、データサイエンティストや研究員、マーケターといった役割分担や組織の分断がなく、政策実務を執る現場の職員が持てば、データがすぐに現場に活かされます。まさに自治体職員にとって、データ分析ができるようになれば、「竜に翼を得たる如し」です。

“根本の考え方”がわかる!

 本書のポイントのひとつ目は、分析の一連の流れに沿って、内容を構成したことです。
 まず、分析を行うときの全体の流れをつかんでもらい、そしてあとの章で、その流れに沿って1つずつやり方を理解してもらえるようになっています(下図参照)。

ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析

 「分析の目的があいまいになってしまう」「仮説の立て方がわからない」といったことを最初に解決し、何を分析するのかを把握できるようにして、分析の道具を後に説明しています。

道具の使い方より選び方を!

 ポイントの2つ目は、上画像の「4.分析する」ときに、道具一つひとつの使い方より、「どの道具を選ぶか」を最初に理解してもらうことに重点を置きました。データ分析では「比較する」思考を持つことが重要です。しかし、どのように比較すればエビデンスが取れるのかわからないので、どの道具を選べばよいのか迷ってしまいます。例えば、アンケート作るときに、なんとなくクロス表分析をしてみよう、となってしまうかもしれません。
 「学校ごとに差があるのかを調べたいので、行に学校名を並べて比較し、クロス表分析を使おう!」となってもらえると嬉しいです。
 統計学では、t検定、分散分析、相関分析、回帰分析、カイ二乗検定といった分析手法を学びます。これらの個々の道具をどのような場面で使うのかを判別でき、道具を自分で選べるようになることが重要です。

ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析1

 例えば、2つのグループで、平均の差を比べてエビデンスをとれるt検定は便利ですが、いつ使うのかを理解できていないと実践では使えません。2つの支店での商品の売れ行き、学校で2クラスの得点などを比較するときに、「平均の差を比較しよう!」という判断ができることが重要です。結果的に「t検定が使える(本当に平均値に差があるといえるかを検証)」ということになりますが、検定をしなくても、平均値を比較して大きく差があると一目瞭然の場合も多々あります。
 市職員の研修を実施した場合、10人に対して、研修受講前と受講後でテストを受けてもらい、前後(同じグループで2回受けることを「対応あり」と言います)で、平均得点に違いがあるかどうかを比較して効果を見ることができます。
 t検定の方法を覚えるより「平均値の差を比較する」手法があることを知っていれば、研修前は70.1点だったのが、74.7点に上がったと分析できるのです。
 検定の結果として、95%以上の確率でこの検証は正しいといえます(t (9)=-3.17, p<.05, d=-.54)。

ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析2

 さきほど学校ごとの分析でも、「カイ二乗検定を使おう」と思う人は、これは平均値ではなく、「クロス表分析で、学校ごとに各セルの比率の差があるか調べよう」というように、仮説を立てたときに、どんな分析手段を用いるのかを判断しているのです。

ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析3

 結果的に、カイ二乗検定を行った結果、1%の水準で有意であり(この検証結果が外れている確率は1%以下)、学校によって、好き嫌いに差があるといえます。
 さらに残差分析を行った結果、高い(△)、低い(▼)の箇所は5%の確率で有意であり(この検証結果が外れている確率は5%以下)、特に差を牽引しています。
 つまり、他校に比べて「A校は好きの割合が高く、C校、D校は好きな割合が低い」、「D校は嫌いな割合、どちらでもない割合の両方が高く、C校はどちらでもない割合が高い」といったことを、自信をもって確認でき、「なぜ学校によって違うのだろう?交通や買い物が不便な地域の生徒たちだろうか?」と次の仮説が浮かびます。
 アンケートでは、好きな理由や嫌いな理由も質問しますが、これだけでも、見えないものが可視化され、自信をもって提案できるようになります。そして、どんな分野でも役立つのです。

本書を読めばゲーム感覚でデータ分析ができる

 他にも道具の詳しい使い方などたくさんお伝えしたいこともありましたが、本書では紙面の限りもあり、ポイントを絞りこみました。ただし、本書では、次のパワーアップのためにご自分で調べてもらえるよう「ステップUP」の項目を設けていますので、ぜひ参考になさってください。
 ステップUPとして検定方法やより高等な分析方法も紹介していますので、あとから十分学べますし、今はソフトが自動計算してくれます。
 他に、テキストマイニングといって、本書ではWEB上のコメントや文章、アンケートの自由意見などから単語の頻出度や単語間の関係性を分析する手法である「共起ネットワーク分析」「階層クラスター分析」にも触れました。これもフリーソフトがあり、簡単にできます。
 私の周りの職員は、早速本書を見て、下図のような共起ネットワーク図を用い、「糸島市内にあるこのお店はどこだ?」というゲームをしたり、「市役所のイメージ図」を作ったりして、WEBの書き込みから、面白い分析をしてくれるようになりました。

ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析4

職員の仲間が本書を見てつくってくれた共起ネットワーク図(一部抜粋)

 分析の場面がわかり、道具を選んで使えると、分析が楽しくなると思います。
 巻末には私が作成したExcelでの分析フォーマットがダウンロードできるようになっています。また、インストールの必要がないフリーの統計分析ソフトの紹介もしています。ぜひステップUPして、検定まで分析を進めてみましょう。

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