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講演-和田大志さん「SIMULATION熊本2030が拓く『自治体経営』と『若者の政治参加』の未来」top

HOLG編集室

地方公務員オンラインサロンセミナーレポート『SIMULATION熊本2030が拓く「自治体経営」と「若者の政治参加」の未来』(熊本県 和田 大志さん)

文=納 翔一郎(富田林市)
みなさんは、対話型自治体経営シミュレーションゲーム「SIM(SIMULATIONの略)」を経験したことはありますか?2014年1月に始まった「SIMULATION熊本2030」が起点となっており、現在では、全国各地107種類まで広がりを見せています。今回の地方公務員オンラインサロンは、この「SIMULATION熊本2030」を開発した熊本県の和田さんによる講義でした。「SIMULATION熊本2030」の概要や想い、そして、今までとこれからのお話を聞くことができました。

<セミナーの流れ>
・「SIMULATION熊本2030」とは
・ゲーミフィケーションの歴史と展望
・「SIMULATION熊本2040」の方向性
・今後の研究計画

現在、和田さんは、東京大学公共政策大学院へ在職のまま進学しています。熊本県人事課人材研修センター在籍時に自主活動として「くまもとSMILEネット」を立ち上げ、「SIMULATION熊本2030」を開発しました。また、知事公室在籍時には、熊本地震と豪雨を経験しました。そして、漫画『ONE PIECE』と連携した熊本復興プロジェクトも担当されていたそうです。
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まずは、「SIMULATION熊本2030」についてのお話です。
「SIMULATION熊本2030」とは、6人が市の幹部(部長)になって「まち」の未来を決めていくロールプレイゲームです。ルールは、2030年までの市の政策課題を、財政破綻せずに解決できればゴールというものです。制限時間がある中で、限りある財源をどのように選択・配分、どの事業を廃止、そして、議会・住民にどのように説明するかなど、5年ごとに生まれるジレンマを体験する対話型のゲームです。
「SIMULATION熊本2030」は、開発メンバー5人が5ヶ月かけて作られました。そして、2014年8月に九州OM、2015年8月には関東でSIM体験会が開催され、そして、2017年11月には第12回マニフェスト大賞で「最優秀コミュニケーション戦略賞」を受賞しました。こうした取り組みが評価され、HOLGが開催した「地方公務員が本当にすごいと思う地方公務員アワード2017」も受賞されています。
2021年時点では、45都道府県107種類までSIMが広がっています。オープンデータ界隈や総合計画策定プロセス、選挙管理委員会、若手官僚チームなどでも導入されているそうです。また、水道事業に特化したものや高校生が開発するものなど、質的な広がりも見せています。
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和田さんは、「SIMULATION熊本2030」の体験後には、以下の3つを伝えています。

1.「対立」を「対話」で乗り越えよう!
2.「ありたい姿」から考えよう!
3.変化を知り、変化に対応し、変化を「リード」しよう!

2030年問題においては、「あれも、これも」から「あれか、これか」の選択を迫られる時代になります。そのため、様々な対立が生まれることも想定できます。そこで必要になる「対話」ですが、私たち地方公務員は「対話」が苦手でもあります。そのため、「対話」を訓練することが何よりも大切であり、訓練ツールこそがSIMなのです。
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次は、ゲーミフィケーションの歴史と展望のお話です。
ゲーミフィケーションとは、「世の中の様々な行動様式や課題などをゲーム化して取り組みやすくする、促進する」という意味です。ゲーミフィケーションの身近な例としては、くら寿司の「びっくらポン」やNIKEのランニングアプリ「Nike Run Club」などがあります。書籍やゲームでも、ゲーミフィケーションに関する様々なものが販売されており、ゲームショウや学会などもあります。
和田さんが様々なゲーミフィケーションを調べている中で、「SIMSOC」というSIMの大先輩がいたことがわかりました。日本軍が戦時中に行っていたとされるシミュレーションの歴史を通じて、シミュレーションゲームはその結果ではなく、「どのように使うか、結果をどのように評価するか」が大切であることを学ばれたそうです。
また、これからの社会では、「デジタルツイン」などのデジタル技術が普段の政策やまちづくりにも活用されることが見込まれていますが、現実空間における「①対話・腹落ち」に加え、仮想空間における「②データ提供への理解・納得や行政との相互信頼」の必要性は増すことが予想されます。SIMでは、これらの2つの醸成に強く貢献できると考えています。特にSIMのゲーム性として、「データがない状態での政策判断が、いかに危ういものであるか」を学ぶことができます。こうした「データを標準装備することの重要性」をSIMで感じてもらうことが狙いの一つでもあります。
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次は、「SIMULATION熊本2040」の方向性のお話です。
「SIMULATION熊本2040」の究極系として個人の教育に特化したものを作りたいと、和田さんは考えられているそうです。具体的には、高校における「公共」や「総合的な探究の時間」の授業にプログラムとして組み込んでいきたいという構想でした。
日本財団による18歳意識調査「社会や国に対する意識調査」によると、調査対象9カ国の中で、日本はすべての項目で最低でした。その中でも特に、「自分で国や社会を変えられると思う」という設問の回答は、わずか18.3%しかなかったそうです。和田さんは、この現状を変えていきたいという想いを持っています。そのために、日本財団への詳細ヒアリングやパートナー高校を探しながら、調査結果を基にした様々な仮説・研究を繰り返すとのことです。
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最後に、今後の研究計画についてのお話です。
和田さんは、「SIMULATION熊本2040」を高校の授業で実践することで、高校生の自己効力感を高め、SIMのミッションである「地域社会の未来をリードする人材の育成」につながるのかを立証したい想いを持っています。2040年の社会はどうなっているのか、SIM体験による効果やその測定方法、因果関係の有無などの検証すべき論点は多くありますが、今後の研究の中で修士論文としてまとめられる予定です。
今後、SIMに関するオフィシャル情報の発信・蓄積を増やしていきたいと考えられています。そのため、「対話型自治体経営シミュレーションゲーム学会」を2022年2月26日に設立し、ウェブサイトも立ち上げられるそうです。みなさんもぜひチェックしてみてください。
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今回の和田さんのオンラインセミナーでは、「SIMULATION熊本2030」の誕生から未来まで、想いと具体性のあるお話を聞かせていただきました。そして、「SIMULATION熊本2030」の汎用性の高さと効果について理解することができて、未経験の人には是非体験してもらいたいと思いました。私としては、対話とバックキャスティングの価値を感じてほしいです。地方公務員オンラインサロンでは、4月16日(土)13時から16時半で、「SIMULATION熊本2030」をオンライン上で体験するイベントも実施される予定です。ぜひみなさん、ご参加ください。

和田 大志(わだ たいし)さん
1980年、熊本県生まれ。2004年、熊本県入庁。2015年に知事公室勤務となり、熊本地震と令和2年7月豪雨の2つの災害を経験。漫画『ONE PIECE』と連携した復興プロジェクトを担当。今春から東京大学公共政策大学院にて自治体経営シミュレーションゲームの研究開発に取り組む。「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2017」受賞。
▼今後開催予定のオンラインセミナー
【3月23日(水) 21:00~22:30】
越境交流会vol.3
全国「道の駅」女性駅長会
不幸な道の駅が増えないために必要なコト
【4月12日(火) 21:00〜22:30】
講演-岡田淳志さん
「自治体の人事異動の仕組み」と「働きがいを感じるキャリアデザイン」とは

地方公務員オンラインサロンでは、月に3〜5回のペースで、魅力的なオンラインセミナーが開催されています。公務員という枠組みを超えた越境の交流や学びもあるので、一つひとつのセミナーへの参加をおすすめしています。地方公務員オンラインサロンでは、アーカイブで過去のオンラインセミナーを視聴することもできますので、ぜひご覧ください。

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