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産業が文化になったまち(福岡県北九州市)「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(226)」

工場夜景観光(産業観光フォーラムエキスカーション)

[記事提供=旬刊旅行新聞]

 北九州市と言えば、私たちの世代は官営八幡製鉄所を想起する。1901年操業の高炉は、日本が重化学工業にシフトした時代のシンボルである。他方、戦後の1960年代以降は、「死の海」と呼ばれた洞海湾などで激甚な公害も経験した。

その北九州市で11月初旬、実に16年ぶりとなる「全国産業観光フォーラム」が開催され参加した。フォーラムには日本製鉄、TOTO、安川電機、シャボン玉石けんなど北九州市の産業観光を牽引してきた主要企業のパネリストにご登壇いただいた。北九州市では、2014年に北九州市と北九州商工会議所および北九州コンベンションセンターが共同で「産業観光センター」を設置した。オフィスにはこの3者が同居し、まさにワンストップ窓口が早くからできていた。

北九州は、新日鉄八幡製鉄所(現日本製鉄九州製鉄所)の立地以来、素材型産業が集積し、まさに日本の素材産業の一大拠点となった。愛知県名古屋周辺がトヨタを軸に自動車など機械組立産業の一大拠点となったことと対比される。両拠点には、かつて日本を代表する国立産業博物館が構想されたこともあったが実現しなかった。

北九州は、我が国の重化学工業の先駆けとなった分、1960年代以来、公害の経験も早かった。既に70年代には、周辺住民に工場を開放して、いわゆる工場見学を行うようになった。これが産業観光の発端である。因みに「産業観光」という言葉が用いられたのも、北九州が最初である。

その後、率先して厳しい公害防止条例の制定や環境保全技術の開発などによって公害を克服してきた。これらの活動がその後、公害に苦しむ開発途上国の支援活動としても大きな成果を上げた。その取り組みが評価され1990年には、国連環境計画(UNEP)グローバル500賞や国連地方自治体表彰など、国際的にも高い評価を受けた。加えて環境・リサイクル産業の拠点づくりや低酸素、自然共生などの取り組みが「環境首都」「環境モデル都市」の取り組みにつながった。

産業観光施設のひとつTOTOミュージアム

こうした取り組みは近年、「産業文化」を軸とした文化観光への取り組みにもつながっている。北九州市が東田エリアを中核とする「文化×産業×観光」をテーマに策定した文化観光推進法地域計画「北九州ミュージアムパーク創造事業」は、西日本最大級の「いのちのたび博物館」などの文化拠点施設を核に、今回のシンポジウムにも参加した民間企業の工場や企業ミュージアム、八幡製鐵所関連施設や東田第一高炉跡などをネットワークにした博物館都市構想である。

1980年代末から3次にわたって策定された「北九州ルネッサンス構想」を指導した末吉興一元市長は、当時から「産業文化都市」(産業が文化になるまち)を口にされていた。その想いが、時を経て、いま実現し始めたということでもあり、誠に感慨深い。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

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