デジタル化時代の自治体に必要な、データ利活用のスキルとノウハウ
社会のデジタル化が急速に進む中、地方自治体においてもデータに基づく政策立案(EBPM)や業務改善が求められています。しかし、多くの現場からは「データ活用って何から始めればいいの?」「統計は難しそう」といった声が聞こえてきます。
本書『今日から始める公務員の地域データ利活用』は、そんな悩みを抱える公務員の皆様に向けて、データ活用の基本から実践的な手法まで、わかりやすく解説した実務書です。
データ活用の「はじめの一歩」から「実践レベル」まで
データ活用というと専門知識が必要で敷居が高いイメージがありますが、実際には身近なところから始めることができます。本書では、公務員が日常業務で遭遇する様々な場面を想定し、段階的にデータ活用のスキルを身につけられるよう構成を工夫しました。
基本的な統計の読み方から、地域の課題発見、政策効果の測定、住民への説明資料の作成まで、実務に直結する内容を豊富な事例とともに紹介。
理論だけでなく、実際の業務でどう活用するかという視点を重視して、業務の中のシーンとして描きました。
さて、そんな本の著者である私は何者なのか。以下のプロフィールをご一覧ください。
著者紹介:市川博之
一般社団法人シビックテック・ラボ 代表理事、総務省地域情報化アドバイザー、内閣オープンデータ伝道師、市川電産CEO、東京造形大学特任教授など多岐にわたる肩書きを持つ、地域データ利活用のエキスパートです。
長年にわたり地方自治体のデジタル化・データ活用推進に関わり、研修講師やコンサルタントとして、自治体の政策立案から現場での業務改革や改善まで、幅広い知見を蓄積してきました。オープンデータの推進、地域情報化の支援、シビックテックの普及など、公民連携による地域課題解決に精力的に取り組んでいます。
このように、多くの自治体や、市民との合意形成の現場に関わることで得た豊富な実務経験と多角的な視点から、公務員が日常業務で直面する課題を解決するための実践的な手法を提示しています。机上の空論ではなく、現場で本当に使える内容を心がけて執筆しました。
なぜ自治体では課題が見えにくいのか?著者の現場体験から見えた真実
私は日頃から自治体でデータ利活用やEBPM研修を行っていますが、そこで気づいた重要な問題があります。「解決方法は色々提案できるから、何が困っているか教えてほしい」と職員の方に聞いても、なかなか業務の課題が出てこないのです。
人手は足りていない、残業時間は伸びている。それなのになぜ、業務の課題はこんなにも出てこないのか? 課題が出てきたとしても「ペーパーレスになればいい」「転記がなくなれば楽になる」など、「目下の現状を変更すればよい」と見るようなものばかりでした。
この現象を通じて私が気づいたのは、課題が出てこないのは「なりたい姿」、つまりビジョンがないからだということです。ビジョンがないから解決しようという気持ちが起こらず、忙しいことは当たり前で、課題にも感じることがない。だからこそ、データ分析を行うときもビジョンを明確にする必要があると考え、本書ではビジョンの作り方を詳しくしたのです。
本書の最大の見どころ:定性的なビジョンから定量的指標へ
EBPMを実践する際に多くの職員が悩むのが、「定性的なビジョンについて、どうやって指標を設定していいか?」という点です。本書では、この指標の作り方について、わかりやすく説明しています。
単なるデータ分析の手法をあげるにとどまらず、ビジョンの立て方から始まって、それを測定可能な指標に落とし込む具体的なプロセスを学ぶことができます。これにより、データ活用が単なる作業ではなく、組織や地域の未来を創造する戦略的な活動だということを掴んでもらえるはずです。
たとえば本書では、まちづくりの指標に対して、「『きれいな商店街』とは、どういう指標を立てたら達成できるのか?」を例に、デザイン面、衛生面、誇りなど満足度の側面から、効果を計るための数値化の方法をわかりやすく解き明かすなどしています。
今、特に読んでほしい方々へ
DXの流行がひと段落し始め、次はEBPMに注目が戻ってきつつあります。それは導入したデジタルツールの効果を計り始めているからです。しかし、導入効果は導入してから決めるものではなく、最初に「どうありたいか?」があって、それに効果が数字としてついてきます。
本書は、できるだけたくさんの人に知ってもらい、データを活用できるようになってほしいという思いから、ラノベ形式で簡単に読めるような構成になっています。
指標の立て方に悩んでいる方、デジタルツールの効果測定に取り組んでいる方、そして真の意味でのEBPMを実践したい方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
変化する時代に対応できる職員になるために
人口減少、少子高齢化、財政制約といった課題が山積する中、自治体職員には限られた資源を効果的に活用し、住民満足度を高める施策の実現が求められています。そのために不可欠なのが、データに基づく合理的な判断と説明責任を果たす能力です。
本書を通じて、データ活用のスキルを身につけることで、より効果的な公務員として住民の期待に応えられるようになることでしょう。
デジタル化時代の公務員必読の一冊です。ぜひお手に取っていただき、地域データ利活用の第一歩を踏み出してください。
『今日から始める公務員の地域データ利活用』
- 著者:市川博之
- 出版社:公職研
- 定価:2,200円+税
- 発売日:6月19日
▼詳細・ご注文は公職研サイトからお申込みください
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20250324-838/