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林琢己副市長3

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【横浜市 林琢己副市長 #3】破天荒な上司から学んだ信頼関係の大切さ

逃げない局長

加藤(インタビュアー):林さんが素敵だと思われた上司にはどのような方がいましたか。

林氏:今まで紹介した上司もそうですが、都市計画局の時代に、庶務係長として3人の局長に仕えました。どの人のエピソードも話したいぐらい、すごい方々でしたし、影響を受けています。分かりやすいエピソードを話すと、総務課には開発事業に反対する方が、突然アポなしで見えて、猛烈なクレームが始まることもあります。

加藤:物騒ですね。

林氏:当時の私は庶務係長として、局長に何かあってはいけないので局長室の扉を閉めてなんとかこっちで収めたのです。それが正しいと思ってやっていました。
そうしたらそれを知った局長が私の元にやってきて、「扉を閉めれば、大将が逃げたことになる。二度と扉は閉めるな。いつでも対応するぞ」と怒られてしまったんです。

加藤:すごい。豪傑ですね。

林氏:そういう格好良いエピソードがたくさんあるんですよ。そういう人の背中を見てきたので、私も局長時代には扉を閉めないようにしていました。やっぱり開いている方が職場も良い雰囲気になるし、怒鳴り込みはなくても逃げない心構えは持てると思うんですよね。

自らリスクを背負う

林氏:見ていて本当にすごいなと思ったのが、先の見込みは立たないが誰もやめられなかった事業をどんどん撤収させていったんですね。戦国時代でいえば、負け戦のしんがりって一番大変じゃないですか。それを次々に引き受けて実行していく姿が実に見事でした。

加藤:役所は止めることが難しいので、ストレスのかかる仕事でしょうね。

林氏:当時だと新横浜の開発事業だとか、モノレール路線の計画だとか、色々難しい案件があったんですよ。地元とこじれてしまい、身動きが取れないで、膠着状態が続いていました。開発案件は、議会も含めて推進する方針がもともとあるので、撤収する際は、議会や様々な関係者と話をつけないといけない。そういうことを含めて、その局長は全部自分から手をつけていって、最後は反対派の代表者の家に乗り込んで話をしていましたね。

加藤:命がけで仕事をされていますね。

林氏:そうやって全部自分でリスクを背負う人でしたから、困難に直面したときに、その方の爪の垢でも煎じて飲まなきゃなみたいな思いが今でもありますね。地方公務員の矜持というか、そういうプライドをしっかり持っていた方でしたから、本来ならばそういう方が取材に値します。今思い出しても本当に痛快で、素晴らしい先輩でしたね。

議会で他局の質問に答える局長

加藤:他にも影響を受けた方はいますか。

林氏:同じく庶務係長の時代に、残念ながら現職で亡くなられた局長がおられましたが、その人もリーダーシップ抜群でした。議会で色々質問を受けたとき、普通の局長は自分の局の答弁だけで精いっぱいじゃないですか。でもその局長は他の局長が困っていたら「ハイ」って手を挙げて、代わりに淡々と答えて、結果収めちゃうんですよ(笑)そういえば、問題の多かった開発事業の地元説明会にも出向いて、現場責任者が答えに窮していると、マイクを取り上げるような感じで(笑)、自らどんどん答えていました。

加藤:そんな人がいるんですか(笑)。

林氏:私も他に会ったことはありません。それは局長が積み上げてきた信頼のなせる業だと思います。そこから何を学ぶかで言えば、重要なのは見かけの良い説明ではなく、まさに信頼と実績です。その局長は、道路局長時代に横浜では難しいとされていた環状二号線を整備した立役者ですけど、そういう実績がちゃんとあって、その上で議会を含めた様々な人との信頼関係をしっかり築けているんですね。なかなか真似できませんが、たくさん学ばせていただきました。

ピンチに必死に向き合い信頼を醸成

加藤:ご自身としてその学びが活きた経験はありますか。

林氏:庶務係長の次に、南区役所の区政推進課長を拝命しましたが、早速困難に直面しました。地域からの要望を受ける懇談会があって、16の連合町内会を順番にまわって、週に2~3回開催されるんですね。合計三桁に上る様々な要望に対して、しっかり回答できるよう準備するだけでも大変だったのですが、始まってすぐに、職場外で担当職員の不祥事が起きたんです。

加藤:それは住民からの強い風当たりが想像できますね。

林氏:着任したてで、要望のある現場をまわりながら把握するだけでも精一杯の時期ですから、一報があったとき、もう呆然としました。すぐにマスコミが取材に来ましたし、懇談会の場で地域の皆さんにどう説明したら良いのか悩みました。
 結果として、私がとった行動は、不祥事のあった夜に、各地区の連合町内会長さん一人ひとりに電話をしました。「担当職員の不祥事が起きて、非常に申し訳ない。私の責任で懇談会では説明いたします」と。

加藤:どんな反応でしたか。

林氏:厳しい反応を覚悟していたのですが、「不祥事を自分から電話かけてくる役人は初めてだ」、「区長に君を処分しないよう嘆願書を出すよ」など、むしろ励ましの言葉をいただきました。逃げない姿勢を理解していただけたと思います。
 懇談会ではその件で詰められることもなく、その後各連合町内会長さんに、こちらからお願いや相談に出向いたときには、非常に好意的に話を聞いてくれるようになりました。「あんたがそう言うなら信用するよ」と言っていただけたんです。

加藤:信頼関係を築けたのですね。

林氏:火事場で必死になってやったら、結果として町内会長さんから信頼されました。その体験も私にとって宝物のように貴重で、今でもその感覚で仕事をしているつもりです。

(取材=加藤年紀 編集=小野寺)

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