地域で協力して、飼育・加工・販売まで行う仕組み
福井逸人氏:今までは鹿屋の中での動きなんですが、この豚を併せて外にも売っていこうということで動いていきました。豚の産地は日本中にあるんですけど、鹿屋では飼育から、加工、販売まで地域内でできるんです。
特に屠畜場(家畜を食肉にする施設)って本当に県に何個かしかないんですね、それがうちの町の強みだと思っています。
加藤:そうなんですね。普段、畜産に関わらない人は全然知らないことだと思います。
福井逸人氏:はい。屠畜場の次に加工なんですが、元々鶏を調理していた鹿鳥食品という会社があって、鶏肉を調理する技術がものすごく高かったので、「地元の豚もできませんか」って話をしたら、二つ返事でやってもらえました。
そして最後に飲食店、陣力さんという全国丼グランプリで、金賞を受賞した飲食店で、こちらに味付けを監修してもらうという体制ができました。
福井逸人氏:はい。地域でひとつになって、スーパーで売られるお弁当の、ご飯の上に載せる具を加工し、出荷するというところまでこぎ着けて、北は栃木から南は沖縄まで、今年8万食売れました。こういう地域食品としては、大成功だったと思っています。
豚は元々、JAが市外の加工業者に売っていたんですけど、そうすると、その加工業者から先のことはわからないんですよね。今回の鹿屋の仕組みで良かったことは、市内で商品が完成しているから、小売店・スーパーさんと直接どうしたら買ってもらえるかという話ができるんですよね。そして、もう1つ嬉しいことは、市が1円も広告費を使っていないのに、全国のスーパーに8万個、鹿屋という名前が入った商品が並ぶわけなんです。
薔薇王子コンテストの開催
福井逸人氏:次が『かのや薔薇王子コンテスト』ですね。これは、「鹿屋のことが大好きなステキ男子を探す」というミスターコンテストに近いイベントなんです。鹿屋にはばら園というのがあって、バラの町だと言っているんですけど、みんながそんなにしっくりきていなかったんです。
加藤:なるほど。
福井逸人氏:例えば、バラの町作りに参加してもらって、バラの苗を植えてもらったりするんですけど、そもそもバラは育てるのが難しくて、花を咲かせられる人なんて世の中にほとんどいないんですよね。
だから、「市民がもっと身近にバラのことを考えられるアイデアがないか」というのを考えました。ばら園って、来るお客さんの6割は女性なんですね。残りの4割も男性も、なかなか男性同士手を繋いで来る人ってごく稀で(笑)、ほとんど女性に連れられてくるんで、もっと女性向けにやるなら、薔薇王子コンテストなんじゃないかと思ったんですね。
ただ、この案が市役所の中で本当に通らなくてですね、1年半かかりました(笑)。鹿屋には体育大学や自衛隊の基地もありますから、僕の構想としては、マッチョを集めて来て自衛隊の人が上半身ムキムキな体で、機関銃持ってバラを咥えている写真とか、体育大生が上半身裸でカヌーのペダルを持っている写真を12ヶ月分並べてカレンダー作るっていう提案をしていたら、完全に僕がそっちの人だと思われたんです(笑)。
加藤:(笑)。コンテストの出場者はそんなに簡単に集まったのでしょうか。
福井逸人氏:やはり、最初はコンテストに出場してくれる人が集まらないと思ったので、色々なところにスカウト活動に行きました。
体育大学にマッスルコンテンストが元々ありまして、そこを紹介してもらって・・・あ、ちなみに僕は純粋に、かのやばら園を応援したいだけでやっているんで、別にマッスルにそんなに関心があるわけじゃないんですよ(笑)。本当に。
ただ・・・。ただですね・・・・・。皆さんすっごい僕好みのマッチョで良い胸板してたんですよ。それで、猛プッシュしてコンテストに出てもらいました(笑)。
加藤:(笑)。
福井逸人氏:もう1つ地域で興味を持ってもらう上で、大きかったのが、これも鹿屋の大きな資源だと思うんですけど、鹿屋には鹿屋市立鹿屋女子高等学校という、市立の女子高があるんですね、市立の女子高って日本で片手の指に収まるぐらいの数しかないんですって。
それが地域の資源だと思っているので、女子高に話をしに行ったら、生徒会の子たちが「手伝います」って言ってくれて、この子たちがキャッチプリンスという、王子を探す手伝いをしてくれてから大分風向きが変わりましたね。あの子たちが探しているなら皆で探そうじゃないかと思ってくれる人が増えたんです。
加藤:一緒になって巻き込むわけですね。
福井逸人氏:市役所の会議はほとんど男性しかいないので、これだけは女性をメインにしなければいけないと思って、14名のメンバーのうち10名を女性にしたんですね。そこでの会議で瞬く間にマッチョ案がダメってことになって、私の志が折れるようなこともありました(笑)。
加藤:(笑)。
福井逸人氏:ただ、そんな女性中心の会議はこれまで無かったので、そういう場を作れて良かったと思います。お堅い男性の会議と違ってすごく議論が盛り上がるんですよね。
実は、王子候補の中には還暦の祝いをされている方もいました、参加するのは正直少し恥ずかしいことだと思うんですよ。それでも、市民の方が町のために一肌脱いで来てくれるって、すごく嬉しいことですよね。
結局、第1回では25人の候補が集まって、この中から王子を選ぶことになったんですが、薔薇王子になるために必要な資質が何か皆で議論した時に、こちらの壁ドンで審査することに決めたんですね。僕も1日15回練習しています(笑)。
加藤:(笑)。
福井逸人氏:地域の皆さんが、地域にある資源を好きになってくれたらと思って、そんなことをやっています。
カンパチダンスでも地域を巻き込む
福井逸人氏:これが今、鹿屋の皆が知っているカンパチダンスですね。
これも色々な出会いがありました。クジラアパートメントさんという方たちに、曲を作ってもらうことになったんですけど、NMB48ってわかります? AKBの難波版です。彼らはそのNMB48とかにも楽曲を提供しているんですけど、実はたまたま、私の友達の友達だったんです(笑)。
本当に何か面白いことをやろうとしていると、友達の友達か、友達の友達の友達ぐらいには助けてくれる人がいるんですよね。やりたいことを実現してくれる人が。
加藤:わかる気がします。
福井逸人氏:彼らも、元々音楽で新しいことをしたい、地域を盛り上げられないかと思っていてくれたらしくて、こっちにはお金が無かったので、カンパチ1本という話で仕事を受けていただいたんですよね。ただ、後で聞いたら実は5人いらっしゃって、5本もお渡ししたんです(笑)。
これまでカンパチも豚と一緒で、皆が地元の資源だとあまり思っていなくて、鹿屋に海があることさえあまり意識してないんですよ。でも、農水省の人間からすると、それは年間30億40億を売る主産業なんですよね。
町の人がカンパチという題材をハブとして集まってくる。町の人たちが1つの言語で、心を1つにする。ソウルフードとかそういうものがこの町に足りないんだと思っているんで、カンパチダンスをあと5年か6年続けてもらったら、全ての小学生が知って、将来、その子たちが鹿屋を離れたとしても「他の町であれやってなかったの?」って思えるような、鹿屋の人の心の原風景みたいなものを作れたらと思っています。
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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 農林水産省から出向し、資源を活かして町を活性化。ダンスもできる副市長
第2話 地域で協力して飼育から、加工、販売まで行う仕組み
第3話 ただPRするだけでなく販売に繋げることを意識する
第4話 原発の対応とも向き合った栃木県庁時代
第5話 なぜ楽しく働くことができるのか