移転リニューアルオープンした新十日町市博物館
[記事提供=旬刊旅行新聞]
人口5万人以上の都市としては、世界で最も雪が降るといわれる新潟県十日町市。その雪国に6月1日(月)、新博物館「十日町市博物館」が移転リニューアルオープンした。
6月19日(金)に発表された2020年度の日本遺産にも、十日町市は「究極の雪国とおかまち~真説! 豪雪地ものがたり~」が認定されたばかりである。
新十日町市博物館は、この「雪国文化」を核に、3つのテーマで構成されるテーマ型博物館である。カラムシなどの植物繊維でつくる青苧を材料とした上質な麻織物(のちの越後縮)などの「織物文化」、信濃川河岸段丘上の笹山遺跡から出土した深鉢形土器、いわゆる火焔型土器群の「縄文文化」の3ゾーンである。火焔型土器は、1999年に国宝指定され、「国宝NO.1(縄文雪炎・じょうもんゆきほむら)」と名付けられ、国宝指定品の中でもとくに中心的存在として扱われている。
十日町市の景観を構成する大きな特色は、市内を貫く信濃川に沿った河岸段丘である。この段丘は約40万年前の隆起により形成された。その後、約5千年前から進行した温暖化(縄文海進)に伴い、この地域は世界有数の豪雪地帯となった。その段丘上の縄文集落から発見されたのが、火焔型土器群である。
これら大地の地形・地質は、特徴的な里地里山、ブナの原生林、アンギン(編衣・編布)の原料となる苧麻(カラムシ)など、固有の生態系を生み出した。十日町市・津南町で開かれる大地の芸術祭(アート・トリエンナーレ)の舞台でもある。そして、この環境のもと、雪国特有の暮らし文化や祭り、食、産業などが長い時間の中で育まれてきた。
越後縮は今日の十日町織物に発展し、地域の主力産業の一つとなった。豪雪は、雁木づくりや、2階と3階部分に外梯子がかかる特異な住宅構造を生み、床に切った地炉、節季市(チンコロ市)など雪と暮らす文化の温床となった。雪室貯蔵の保存食、繊維産業のつなぎである「フノリ」を使った「へぎそば」などの食を生み出した。奇祭と呼ばれる「バイトウ」(いわゆるどんど焼き)など「雪に祈る」風習なども雪国由来である。長い冬の暮らしで、暗くなりがちな気分を明るくしようと、1950年に始めた「十日町雪まつり」は全国の雪まつりの端緒ともなった。
十日町市博物館のような文化拠点を核に、地域に点在する多様な文化資源(文化観光拠点)をネットワークとして生かそうと、今年5月には「文化観光推進法」が施行された。
一見無関係に見える地域の資源も、その背後にある歴史・文化を物語化することにより、テーマ時代に相応しい、優れた文化観光が可能となる。十日町の新たな取り組みに期待したい。
(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)
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