記事タイトル:[令和07年09月12日 記者発表資料 イオングループ様からの10億円の寄附について | 四日市市役所]
https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1757487962175/index.html
(文=西村 飛俊)
図書館は必ずしも立派なハードがなくても、本棚ひとつあれば始められます。最近は私的な図書館として「まちライブラリー」とか「みんとしょ(一箱本棚オーナー)」など、いろいろな取り組みがあります。
しかし今回は、行き詰った図書館計画が大型寄付により動きそう……という話です。
三重県四日市市の新図書館構想は3年ほど前からスタートし、当初から市の中心市街地活性化の切り札と位置づけられていました。候補地に挙がったのは、近鉄グループが所有する旧スターアイランド跡地です。かつて百貨店が営業していたこの場所は、駅前にありながら長らく再開発が進まず、地域にとって懸案となっていました。市と近鉄はここに複合高層ビルを建設し、その低層階に図書館を配置することで、市民の利便性向上と中心市街地のにぎわい再生を同時に実現しようとしました。
計画では地上32階建て、高さ約147メートルの高層複合施設とされ、総事業費は約210億円、工期は37か月程度と見込まれていました。図書館は3階から8階までを占め、観光案内や交流機能と組み合わせた新しい都市拠点の顔になることが期待されていたのです。市は2023年度までに基本設計をまとめ、いよいよ本格的な整備に踏み出す段階にありました。
しかし、具体的な工事費算出に進むと、事業の実現性は一気に揺らぎます。建設資材や人件費の高騰を背景に、近鉄グループが提示した見積もりでは総事業費が約390億円に膨れ上がり、工期も49か月に延長される見通しとなりました。さらに図書館部分だけを見ても、当初想定の120〜150億円を大幅に上回り、270億円超の整備費が必要とされました。駅前という立地の魅力があっても、これでは市の財政負担が過大になるのは避けられません。
こうした中で2024年5月、市としては当初見込んだスケジュールや予算から大きく乖離した計画を維持することは困難と判断し、森智広市長が正式に共同開発案の断念を表明しました。基本設計まで到達していたプロジェクトが、事業環境の悪化により頓挫したことに、市民の間には落胆が広がりました。長年待ち望まれた駅前再開発の象徴が白紙となったことで、「新図書館は本当に実現できるのか」という不安が漂うことになったのです。
このあたりの経緯については、四日市市の森智広市長のブログに詳しく書かれています。
[【四日市市/中心市街地再開発】近鉄Gと協議整わず『新図書館』候補地をスターアイランド跡地から変更 | 森智広《四日市市長》オフィシャルブログ「31万人元気都市四日市に向かって!」 Powered by Ameba]https://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-12853410919.html
近鉄との協業案が白紙化されたことで、「もう新しい図書館は建たないのではないか」という観測すら見られました。ところが、その状況を一変させるニュースが飛び込みます。イオングループが「創業の地・四日市」に新図書館整備のため、10億円を寄付するという発表です。
寄付の方法について公開されていないのですが、イオンの本社は現在千葉県にあるので、おそらく「企業版ふるさと納税」を活用することになるかと思います。
額面どおりの寄付になれば、企業版ふるさと納税活用によってイオン側の負担は実質的に1億円で済みつつ、この象徴的な寄付により100億円超の図書館建設プロジェクトを動かし、今後何十年にもわたり何百億という経済効果を創業の地へもたらしていくことになるでしょう。
ここで注目したいのは、寄付の対象が「図書館」であるという点です。イオングループはこれまでも全国各地で商業施設と公共図書館を結びつけてきました。
地方公務員オンラインサロンに参加すると、本投稿の続き(さらに深い考察や表で話しづらい内容など)をご覧いただけます。
サロンでは様々な領域の記事について毎日投稿が行われ、サロンメンバー同士で意見交換など思考を深めることが可能です。
ぜひ、ご参加お待ちしております!
地方公務員オンラインサロンとは:https://community.camp-fire.jp/projects/view/111482
※facebookとXでHOLG.jpの更新情報を受け取れます