『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2025』、4人目の受賞者の紹介です。
※部署名役職名は推薦文登録時時点のものであり、現在とは異なる場合がございます。
油谷 百合子(茨城県 県南農林事務所 つくば地域農業改良普及センター 地域普及第一課長)
推薦者1:牧野 裕樹(大阪府)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
生産者、製粉・製パン会社との地道な関係構築が大手コンビニでのパン販売に繋がる!ゼロからの小麦産地形成
推薦文
【油谷さんたちの実現内容】 小麦「ゆめかおり」の栽培面積を0から230haに拡大し、1000tの産地を育成
【油谷さんの取組】
2017~2020年に2代目担当者として関わる。当時は生産量330t程度で、増産とタンパク含量の維持が課題だった。タンパク含量の維持には、肥料の投入タイミングと量が重要である。計測器片手に数百の畑を回り、指標となる計測値を生産者に伝えていたが、結果が一目でわかりづらかった。そこで企業の技術協力を受け、地図情報システムで計測値を色分け表示するICT技術の導入に挑戦。2年間の試行後に採用は見送られたが、生産者に課題解決を提案する姿勢が継承され、後任が衛星画像を活用し計測効率化に挑むなど、現在も課題解決が続いている。
増産するにつれて、当初の契約(10件以上の生産者と製粉会社の直接契約)では事務処理や品質担保の限界が来ていた。そこで油谷さんは専門家を交えて双方が納得する組織体制を検討。結果、個人課税のまま運用でき課題も解決できる組織としてLLP(有限責任事業組合)を設立。事務の効率化、信用力の向上に繋がった。
そして2020年にセブンイレブンでの販売が実現。当初は期間限定であったが、2025年7月時点では茨城・福島・栃木でコッペパン等の定番商品で通年販売されている。さらに販路開拓を支援したことで2020年度に生産量を600t以上にまで引き上げた。これらの取組みが評価され、農業普及活動高度化全国研究大会で農林水産大臣賞を受賞した。
【推しポイント】段階が進む中で新たな課題も出てきている。それでも各代が継続して課題解決に取り組むような組織風土が醸成されているのが素晴らしい。また生産者、製粉会社、製パン会社の多様な意思が渦巻く中、関係者をまとめる調整力が特にすごいと感じる(もちろん実行力も見事)。まさに「遠くに行きたければみんなで行け」を実践している。
推薦者2:原 涼子(茨城県)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
全員に「絶対無理」と言われた国産小麦をコンビニパンに
推薦文
茨城県の農業職(農業改良普及員)の油谷さんは、平成24年ごろには指標価格が全国最低で、現場の生産意欲が停滞していた茨城県産小麦に対し、「努力する農業者の成果が価格に反映される仕組みをつくらねばならない」という強い志をもち、平成29年から令和2年度まで、パン用小麦産地の育成に取り組んだ。油谷さんは、大手製パン業者とのネットワークづくりに粘り強く取り組むとともに、実需者が求める品質の小麦を納入するための出荷システムの構築や、実需者むけプロモーション動画の作成、製粉会社との契約一元化のための有限責任事業組合の設立支援等を行ってきた。その結果、多くの関係者から「絶対に実現不可能」と言われ続けたコンビニ国産小麦使用パンプロジェクトとして、令和2年からセブンイレブンで「茨城県産ゆめかおり」を使用したパンの販売が開始されるに至った。また、パン用として出荷できる品質の小麦(ゆめかおり)の場合は73,000円/10aと、地域標準小麦品種31,000円/10aを大きく超える利益を生み出すことができ(販売収入+交付金-変動費、令和元年度の生産量等をもとに試算)、農業者の努力を価格に反映する仕組みが実現された。
油谷さんの仕事は当時あまりにも革新的だったため、県内部に理解者が少なく、常時逆風が吹く中、お互いを「戦友」と呼ぶ農業者との信頼と約束を糧として、次々と新しい取り組みを実現していった。
この活動は令和2年度第8回農業普及活動高度化全国研究大会で農林水産大臣賞(最優秀賞)を受賞、今では全国の農業改良普及指導員の見本とされている。
また、油谷さんが令和3年度に別部署に異動してからも、この取り組みは引き継がれ、産地規模がますます拡大するとともに、「茨城県産ゆめかおり」を使用したコンビニパンの販売も継続されている。
推薦者3:森岡 こころ(大阪府)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
『ワークアズライフ』を体現する唯一無二のロールモデル
推薦文
油谷さんは、専門性と実行力を兼ね備えた農業系公務員であると同時に、家庭と仕事を両立させ、周囲に勇気と気づきを与える、私にとって唯一無二のロールモデルです。
私が油谷さんと出会ったのは、農学系公務員が学び合うオンラインコミュニティ「農業現場お役(に立ちたい)人カイギ」でした。これは、全国の農業系公務員が立場や分野を超えて対話・交流する場として自主的に運営されているもので、問題意識や挑戦を共有する場となっています。油谷さんはその中で、物腰柔らかに参加者の声に耳を傾け、否定せずに本質を引き出すファシリテーション力で多くの信頼を集めています。立場や経験に関係なく誰に対してもフラットに接し、的確で実践的な提案を行うその姿は、常に安心感と学びを与え続けてくれます。
農業現場に足を運ぶ仕事柄、時間外勤務も多い中、「子育てか仕事か」で悩んだ末に、「ならば両方を楽しもう」との発想で、お子さんと共に現場へ赴くスタイルを確立。お子さんとと共に調査に出かけ、記録係などを担ってもらう“親子で働く”姿は、ワークライフバランスの枠を超えた『ワークアズライフ』の体現そのものです。家庭と仕事を切り分けるのではなく、人生の一部として融合させる姿勢に、私は深く感銘を受けました。
毎朝4時からの勉強、情報収集など、隙間時間を惜しみなく活用して自己研鑽を続ける姿勢も印象的です。必要とあらば県外にも足を運び、自ら学びに行くその行動力と情熱は、まさに公務員としてのあるべき姿を示しています。
地域に根ざした地道な実践に加え、他者への敬意と対話力によって多くの仲間を支え続ける油谷さん。その姿に触れ、私自身も農業系公務員としての新たな可能性を感じるようになりました。私のような遠く大阪府の一職員にも、その影響は確かに届いています。その誠実さ、柔らかさ、そして確かな実行力を心から称え、ここに油谷さんを推薦します。
審査員のコメント
技術・制度・販路改革と多層的な課題に挑み、小麦産地をゼロから再生。ICT導入やLLP設立などの制度設計力と実行力が光る取組です。農家・企業・行政を繋ぐ力、信頼を醸成する柔らかさと調整力も素晴らしく、社会的インパクトと継続性を兼ね備えた好事例です。(橋本 一磨)
ゼロから小麦の産地を作り上げた調整力と熱意がすごい!現場主義を貫いていることを強く感じました。(小野寺 崇)
「生産意欲の停滞」という課題に対して、「努力が価格に反映される仕組みをつくる」というビジョンのもと、「製造販売ネットワークの拡充」という解決策だけでなく、「有限責任事業組合の設立」といった継続手段まで手がける点に、スゴイ!の連続性を感じました。(市橋 哲順)
業務が人にくっついてしまうのがトンガリ公務員の悩みです。しかしこの事例は、いいことも課題解決法も想いも続いてるのがすごい!さらに各々がパフォーマンスを発揮した結果で成果が出ているので、後任育成を学びたいところです(中村 広花)
油谷 百合子さん、受賞おめでとうございます!
【地方公務員アワード2025 受賞者の推薦文はこちら】
(1)齋藤 久光 (2)和田 真人 (3)鈴木 満明 (4)油谷 百合子
(5)木下 義昭 (6)天野 博之 (7)朝比奈 克至 (8)村田 大地
(9)上田 昌子 (10)沼 泰弘 (11)及川 慎太郎 (12)横井 直人
【ネクストホープ賞(30歳以下)受賞者の推薦文はこちら】
『地方公務員アワード2025』全体発表はコチラ
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