インタビュー

【弘前市 佐々木絵理氏:第1話】地域コミュニティが衰退している現場

佐々木絵理

【佐々木絵理氏の経歴】
青森県弘前市役所で市民協働政策課に従事。入庁4年目。「地域コミュニティの活性化」に強い熱意を持ち、市役所の業務にとどまらず、プライベートでも地域で対話の場を作り、積極的に飛び込んでいる。全国の自治体職員の勉強会にも数多く参加し、自らの行動力で仕事とプライベートで生み出せる成果を最大化している。

-通説的には、地方自治体の中で若手職員が何かを動かすのは難しい。しかし、想いを持って周りに配慮をしながら行動することで、若手であっても少しずつ自分のやりたいことをできるようにしていく佐々木絵理氏。
 佐々木氏を強く惹きつける地域コミュニティの現状とは? そこに佐々木氏がどう関わり、どうやって仕事とプライベートを充実させてきたのか? 活躍の場を広げる若手職員の目線と行動に、我々が学ぶべき多くのヒントが隠されている。

自治会を支援する仕事をしている

加藤(インタビューアー):今お仕事でされていることは具体的にどういうことになりますか。

佐々木氏:市民協働政策課という部署にいて、具体的には住民自治に関することで主に町内会とか自治会の支援や、地域コミュニティの活性化というところをメインに行っています。その他には、職場内の各課からの照会案件の取りまとめや、雑務的な仕事もしています。

加藤:たとえば、町内会への支援というのはどういう実務が発生するんですか。

佐々木氏:町内会は日頃、地域の中でさまざまな活動をしているんですけど、行政から町内会への支援は、それらの活動に応じた交付金みたいなものがいろいろあって、その交付事務や申請書類の作成、町会活動に関するいろいろな相談対応が基本となっています。

 たとえば、交付金は市への協力事務に対して、町内会の規模や加入割合ごとに決められたものがあったり、町内会で管理して電気料を支払っている街灯の維持管理費に関するもの、町内会が自分たちで持っている集会場の改修のための補助金など、市への協力事務の内容や、コミュニティ活動に応じてそれぞれあります。

 あと、相談対応として、たとえば、市民の方から町会加入に関する問い合わせを聞いて町内会長さんへ取り次いだり、苦情や意見について話を聞いたりもしますし、町内会長さんや役員さんから相談などを受ける際は、一緒に考えながらアドバイスをしたり、関係機関をつないだりしながら一緒に動くこともあります。

自治会に入る人が減っている

佐々木氏:現在は地方であっても、町内会に入ってくれる人が少なくなってきているのですが、若い世代では特に、存在や活動内容を知らなかったり、「それに参加して、なにか良いことがあるの?」と思っていたりする人も多いというのも、仕事の中で調査したデータにも現れていました。

 特に働き盛り世代では、仕事や自分の生活がある中で、地域と関わったり頼まれごとをしたりする余裕がない、というのも原因になっていると思います。ただ、町内会とか、地域のコミュニティ活動への関心や理解が低くなっていることは、これから人口が減少して高齢化が進んで、住民同士の支えあいや地域の力がますます重要になってくる中で、課題の一つだと思っています。

 地域の見守り活動、地域の中に住む子どもたちのための子ども会活動、地域内にある公園やゴミステーションの管理もそうだし、側溝や河川の清掃などなど・・・町内会が関わって、地域の中にある課題を解決していることや良くしているものって、普段普通に生活しているとなかなか気づかないんですけど、本当にたくさんあるんですよ。

ゴミ捨て場

 あと、会の役員が高齢化していることや、活動を引き継いでいける次の担い手がなかなか見つからないことを、町内会長さん自身も課題に思っています。今、地域を支えている方々もどんどんどんどん高齢化していく中で、そういう町内会の課題は行政と町内会との関係にも影響が出てきています。

 実際に、市の民生委員(住民の生活上のさまざまな相談に応じ、行政をはじめ適切な支援やサービスへの『つなぎ役』としての役割を果たす)とか、交通安全のコミュニティの協議会員とか、それに類する人を当て職として「町内会から何人出して下さい」という依頼が多くの自治体であると思うんですけど、町内会自体も高齢化で役員が不足している中で、人を出すことは難しい。

 既に、1人の人がいくつも役職を兼務していて、「忙しすぎてどうしようもない。できない!」という町内会からの悲鳴は結構あると思いますし、そこは全国みんな課題に感じているところだと思います

市役所と自治会、住民の関わりとは

加藤:弘前市には町内会はどのくらいの数があるのでしょうか。

佐々木氏:弘前では町内会や自治会のことを「町会」と呼ぶのですが、市内全体だと333の町会があります。あと、市内の小学校区くらいの規模で大体26の地区があって、その地区それぞれに地区町会連合会というものも組織されています。

 ちなみに、その地区の町会連合会の代表が集まって構成されている『町会連合会』という最上部の組織があるのですが、その機関が市内の地区ごとの町会全体の連絡調整なども行っていて、市とは別の組織として事務局機能を持ちながら運営されています。

加藤:市役所と町内会は、普段どう関わっているのでしょうか。

佐々木氏:今までは、町内会はそもそも自分たちで運営されていて、市からも独立したものだから、さっきお話した町内会への交付金や助成金などの支援や、町内会側からの相談の対応など、それ以外のところで行政が積極的に関わっていくことがあまりなかったんです。

 町内会自身が抱えている課題についても、地域の自主性に任せるというような形です。なので、町内会長さんとはもちろん、連合会事務局の職員の方との関係も薄かったんですよ。

回覧板

 地域住民を支える地域のコミュニティ機能がどんどん希薄化して、衰退して来ている。町会の加入率も年々減少してきている。

 それがこのまま続くと、さっき話したような地域の環境整備とか、弘前は雪が沢山降るのでその除雪、防災など地域で支えている部分でのまちの安全水準や、福祉などの支えあいの活動の力もどんどん下がってしまうし、何より人が関わり合う、共助をしていくような昔からある人と人の接点も失われてしまう。

 そういう危機感から、ちょうど私が働いて2年目の時に、「地域コミュニティ強化」というミッションが与えられました。もっと、行政も積極的に地域側が抱える課題解決のために調査検討しながら動いて、地域コミュニティの強化につなげていこうというものです。

加藤:なるほど。

佐々木氏:田舎だからかもしれませんが、一番市民の身近にある地域コミュニティは町内会だと感じていますし、町内会は昔からある組織なので、地域にとって大事な人と人のつながりや支えあいを生み出している基盤なんです。

『ねぷた祭』とかわかりますか?
ねぷた祭

加藤:わかります。

佐々木氏:弘前では、ねぷた祭りも町内会や地域のコミュニティ団体で関わって行っていることが多いんです。それぞれの町内会や、もしくは周辺の町内会がいくつか集まって、自分たちの『ねぷた』を作成するんです。

 そこで、子供からお年寄りまで『ねぷた』が好きな人が集まって、学校や仕事が終わった後くらいの時間から紙を貼ったり絵を書いたり、囃子の練習をしたりして、作業が終わったらみんなでご飯食べたりとか、『ねぷた』の出陣までずっと一緒になって一つのものを作っているというのが昔からずっと続いているんです。
ねぷた祭準備

加藤:確かに、お祭りの提灯とかには自治会の名前がありますね。

「どうせ役所の業務だから来ただけなんだろう?」

佐々木氏:でも今は町内会に関わらない、もしくは町内会を知らない人、関心がない人が増えてきている。町内会の加入率も低下してきている。だから、市役所が少しでも力になれるように、ミッションが与えられてから、「支援させて欲しいから一緒にやりましょう」と、まず町会連合会を中心に働きかけたんですね。

 ただ、その時の関係者のはじめの反応は「なに言っているの?」「今でも忙しいのに行政にまた何かやらされる」「別にそんなことやる必要はない」「どうせ役所の業務だから来ただけなんだろう?」という感じの(笑)、信頼が全くない中のスタートだったんです。

加藤:地域コミュニティの難しさがあったわけですね。そこからどうやって、関係を構築していったのでしょうか。

※本インタビューは全6話です

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