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総務省消防庁コラム1

事例を知る 防災

消防広域化 ~更なる消防力の強化のために~[愛知県 尾三消防組合]

(記事提供=総務省消防庁 広報誌『消防の動き』

尾三消防組合の概要

 尾三消防組合は、平成30年4月1日から、これまでの構成市町である日進市、みよし市及び愛知郡東郷町に、豊明市(豊明市消防本部)と長久手市(長久手市消防本部)が加わり、管轄面積129.9㎢、管轄人口約32万人、1事務局、1本部、1特別消防隊、5消防署、3出張所、職員334人体制の広域消防として運用を開始しました。
 日進市、豊明市、長久手市及び愛知郡東郷町は、名古屋市の東部に隣接し、大都市のベッドタウンとして大規模な区画整理事業が展開され、また、相次ぐ大型商業施設の出店もあり、住環境の整備が進んでいます。また、みよし市は、自動車産業の中心である豊田市に隣接し、大手自動車関連企業が多数所在する産業の盛んな街です。この地域は、快適な環境と活気あふれる産業が特徴です。また、管内に三次医療機関である藤田保健衛生大学病院と愛知医科大学病院が所在するなど、高度な医療体制に恵まれています。
 当組合管内は、都市基盤整備の進捗などにより、全国的にも稀な人口増加が進む地域で、消防需要も増加傾向にあります。

愛知県地図

愛知県地図

管内図

管内図

広域化に至る経緯

 当組合は、昭和48年から一部事務組合として常備消防事務を広域的に行ってきました。一方、豊明市と長久手市は、単独で消防本部を設置し、常備、非常備消防の事務及び消防水利事務を行ってきました。
 こうした中、平成18年6月の消防組織法の一部改正を受け、平成20年3月に策定された「愛知県消防広域化推進計画」に基づき、当組合を含む尾張東部ブロックにおいて広域化の調査研究が開始されましたが、各自治体の機運の高まりや足並みが揃わず、広域化に関する調査研究は一旦終息してしまいました。
 しかしながら、当組合、豊明市及び長久手市は、通信指令施設の更新時期が重なっていたことから、消防の広域化の調査研究と並行して「消防指令業務の共同運用」を検討協議し、消防救急デジタル無線と指令機器を共同整備のうえ、平成25年4月から消防指令業務の共同運用を開始しました。
 その後、「市町村の消防の広域化に関する基本指針」の一部改正を受け、平成27年10月に豊明市、翌年2月に長久手市が、当組合に対して、指令業務の共同運用の実績等から、消防の広域化に関する調査研究の申入れを行い、5市町による調査研究を開始しました。

 平成28年3月、愛知県知事から消防広域化の機運が高い地域として、「消防広域化重点地域」の指定を受け、平成28年4月12日に「尾三消防組合・豊明市・長久手市消防広域化協議会」を設置し「広域消防運計画」の策定に向けた協議を開始しました。
 「広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する事項」として、基本項目40項目、全体128項目の協議を整え、平成29年12月の各市町議会において、地方自治法の規定による尾三消防組合規約の変更などの議決を経て、愛知県知事の規約変更許可に至っています。
 その後、広域化開始に向け具体的事務を進め、平成30年4月1日から運用を開始しました。

4市1町の首長による広域化合意の調印

4市1町の首長による広域化合意の調印

広域化の効果

(1)住民サービスの向上
 ●現場到着時間の短縮
 これまでのそれぞれの管轄を無くし、直近署所からの出動により、現場到着時間を短縮しました。また、救急同時多発時の到着時間も短縮することが可能になりました。
 ●出動部隊の増強
 第1次出動台数の増加と第2次、第3次出動への迅速な対応が可能になりました。
(2)人員配備の効率化と充実
 総務部門の統合により、現場要員の増強ができました。(救急隊1隊増)
(3)消防体制の基盤の強化
 財政規模の拡大により安定した運営が可能になりました。また、車両や資機材の重複投資を避けることで、財政の効率化が可能になりました。

広域化にあたって

 広域化の協議は、住民にとってのデメリットは「ない」ことを大前提としました。特に、署所・部隊・車両の配置については、消防力適正配置等調査(一般財団法人消防防災科学センター)を実施し、その結果を踏まえ、広域化前の配置により運用することを基本としました。
 広域消防の経費については、これまでの各市町の常備消防費(負担金)から著しく増額することがないよう配慮しました。
 職員の処遇については、不利益・不平等が生じることがないように、広域化前の階級・役職・給料を保障することを基本に調整しています。
 また、豊明市及び長久手市は、これまで消防団、消防水利に関する事務を消防本部が所管しておりましたが、広域化に合わせて市役所に事務を移管することから、消防団等との関係継続に十分な配慮を必要としました。
 さらに、消防組合に事務局(総務課)を新たに設置し、消防職員に加え、構成市町の行政職員を配置するなど、組合運営に係るガバナンス強化を図っています。
 これらの協議調整には、各構成市町の消防・防災、人事、財政の担当職員が主体となって協議を行うなど、行政の視点から新たな広域消防組織の姿を描くことを重要視しています。

おわりに

 近年の社会環境の変化などにより、災害はますます複雑多様化しており、消防需要は更に増大します。これらの負託に応えるためにも、消防力の強化は不可欠です。このたびの消防の広域化により、消防力を強化するとともに、全職員が一丸となって住民サービス向上に取組んでまいります。

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