インタビュー

【和光市長 松本武洋氏:第3話】コンサルで専門家を入れても、職員には身につかない

活動記録を残し、市民から全体を評価してもらうためにブログを始めた

加藤:常に生の状況を、ブログで発信されていらっしゃって、しかも、それが今でも遡れる状態になっています。この発信を議員さんの頃から続けられていますが、どういう思いで始められたのでしょうか。

松本市長:私の政治家としての活動や思いをアーカイブとして残し、それも見てもらえる状態の中で、市民の皆さんから私の全体を評価してもらえればと思っていました。

 あとになって考え方が変わったところは手を入れて、追記と注釈をつけているところも沢山あったと思いますし、今振り返るとけっこう恥ずかしいことも書いていますが、私の歴史ですから。

過去の自分も私

加藤:過去の歴史を残すと、そこを叩こうとする人もいませんでしたか?

松本市長:最近はないですが、市長就任当初に、過去のブログを全部プリントアウトして議会に持ってきて、一般質問に使う議員さんもいらっしゃいました。分厚い書類の束に付箋紙をつけているんですよね(笑)。

そして、「昔はブログでこういうことを言っているじゃないか。これはどういうつもりだ?」という話になるんですね。あるいは、私の書いた本にぎっしり付箋が貼られたものを議場に持ってこられたり(笑)。

 過去の発言が残ることでやりにくい面はありますけれど、「当時はこう考えたけれども、今はこう思いますよ」と答弁すればいい、と割り切っています。過去の自分も私なので、それも踏まえて見てもらおうということです。

加藤:時代と共に意見は変わっていくべきことなので、逆に一度判断したことに固執し、意見を変えられない人の方が問題ですよね。

 市長のブログでは内容を修正や追記した際にはその履歴まで残されていて、そこが市長の正々堂々とした向き合い方の一つの象徴だと感じました。せっかく、正面から向き合っているのに、こういうことが、何か揚げ足取りみたいに使われると損だなと思います。

松本市長:よくあんな拙いものを全てお読みいただいたなと思いました(笑)。

加藤:いえいえ、とんでもないです(笑)。

SNSでは若い方との接点が持てる

加藤:松本市長は情報発信、情報公開の先駆けとして行動されていたので、今そういうスタンスを取って活躍されている若い市長や議員の方も、参考にされている部分もあると思います。

松本市長:私が市議になった時は14年近く前ですが、当時はウェブで議員が発信するというのが『はしり』の頃ですよね。ホームページは候補者時代からありましたが、ブログを始めたのが確か11、2年前かな、確か議員になって3年目だったと思うんです。

 その後、市長に就任してからミクシィ、そして次にtwitterが注目され、ブログ自体がどちらかというと低調になってくると、発信手段としてブログだけだとやや不十分かと思いtwitterを始めました。今はフェイスブックも併用しています。

加藤:なるほど。それぞれのメディアで、アプローチできる層の違いのようなものを感じられますか。

松本市長:ありますね。当然、役所の広報紙に載っている情報を隅から隅まで読んでいる方にはもう常識的に分かっているようなことであっても、twitterの層の方が知らないというのは沢山ありました。
また、フェイスブックでは個別の案件について、市民の皆さんの意見や温度差なんかも知ることができ、重宝しています。

 千葉市の熊谷市長もインタビューで言っていましたけど、例えば、その発信を見て行事に来てもらえるとか、若い方に興味を持っていただき、声をかけていただくということもありますので、メディアごとに違う層が見ていると思います。

和光市松本市長 市民1

若者と大晦日に写真を取る松本市長

行政に興味がない方に損をさせてはならない

加藤:今はウェブを使う首長の方とか、もしくは職員の方が増えてきていて、地方自治体の『身近さ』を醸成するということでも、役に立っているように思えます。

松本市長:民間の人は忙しい上に、行政との接点自体もほとんどないですよね。それを前提で考えなければいけないし、私が大切だと思っていることは、『興味を持った時に調べられる体制にしておくこと』、そして、『興味がない方に損をさせないこと』。

加藤:そのポリシーや考え方は、『大規模事業検証会議』にも当てはまりますね。

松本市長:そうですね。行政に詳しい人や利害関係者だけの会議にしないということですね。関心がないのが悪いのではなく、関心がないのが普通なんです。で、最悪なのは関心を持った時に調べられない状況だと思います。

公認会計士の採用を嫌がる雰囲気はあったと思う

加藤:和光市では先進的な公会計の取り組みを進められていらっしゃると思いますが、その実現にあたり、公認会計士である山本さんを登用されたことも大きかったと思います。

 そもそも、会計の専門家を採用するという時に、庁内の調整が必要なのかと思うのですが、それは難しいものだったのでしょうか?

松本市長:表立っては誰も言いませんでしたけど、やはり庁内では嫌がるような雰囲気はあったと思いますよ。「民間の方が来て混乱があるんじゃないか」とかですね。

加藤:その雰囲気をどう払拭されたのでしょうか?

松本市長:多分に山本さんの個人的な資質によるところが大きいです。彼は民間のやり方を大上段に構えて、「あれやれ、これやれ」というタイプではなかったんです。むしろ行政側の言い分を踏まえて、「それを上手く機能させるのに、こういう民間の知恵がありますよ」というスタンスで仕事を進めました。それと併せて、自分から役所の中の人と接点を広げ、馴染む努力を随分やっておられます。

和光市 松本市長7

コンサルで専門家を入れても、職員には身につかない

加藤:専門家の力を活用したい時の選択肢として、コンサルとして契約するか、直接、採用するかというパターンがあると思います。どういう経緯で後者になったのでしょうか。

松本市長:コンサルで進めている自治体の話を聞くと、「結果として職員の身にはつかない」という話が多くあったので、中に入ってくれて一緒に仲間として仕事をしてくれて、職員もそれに感化されるようなことができないかと思っていました。

 その中で、役所の中の仕事に興味を持っていて、能力や資質のある山本さんに、和光市の用意できる待遇で働いていただけるんだったら、役所にとって大きなメリットがあると思ったんですね。

今の公会計の流れに不満がある

加藤:自治体において会計士を雇うモチベーションはまだあまりないと聞いていますが、松本市長には何か強い思いがあったのでしょうか。

松本市長:今の公会計の流れに不満があるんです。これは、今までの『官庁会計』に利益計算を目的とした『商業会計』を、無理やりくっつけている訳ですよね。

 歴史の話で申し訳ないのですが、商業の会計のベースというのは、『いくらで仕入れていくらで売った』という会計で、それを昔は地中海貿易なんかでやっていたわけです。これが複式簿記による会計ですよね。

 やがてオランダ辺りでは会社単位で商売を行い、常設の大きな店ができて組織が存続するということが前提になると、いわゆる、期間損益計算を行い、毎期配当を出す必要が出てきたんです。

 その後、今度はイギリスの産業革命があって、産業革命における大規模な設備投資を行う中で収支を管理して行くために、今度は減価償却が出てきたわけです。

 『商業会計』に関する3つの段階をお話ししましたけれど、どの時期にも利益の計算、分配をするために使われてきたわけです。その背景を持った会計の仕組みを使って、公共団体の会計の状況を記録しようというのが、今の公会計の流れになっているんですね。

加藤:なるほど。

松本市長:だから、「それで本当に良いのかな」と思っているんですよ。そんな中、山本さんが進めてくれた『予算仕訳』の良い点は、今までの官庁会計の流れに合わせられる上、将来新しい会計方式が出てきた時にも、対応できる素晴らしい仕組みであることなんですよね。

加藤:なるほど。先も含めて考えていらっしゃるのですね。

※本インタビューは全6話です

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