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コラム

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地方で働くということ

地方公務員職は引き続き若者から人気。理由は、安定と地元に貢献したい。

与信審査でおなじみのリスクモンスター社が実施した、大学生に対する「就職したいと思う企業・業種ランキング」によれば、就職活動を控えた大学生がなりたい職業は1位が地方公務員で2位が国家公務員だったという。
3位~5位はメガバンクだったことや、自由回答の内容を見ると「安定」や「大手」という文言が散見されるので、若者が「安定志向」なのはある程度真実と言えそうだ。ここまではよく報じられるところだが、実は「安定」以外の理由については、「地元に貢献したい」という文言が多い。
世の中の株式会社はコーポレートガバナンスにのっとり「収益」にコミットしているが、公共機関は性格が違う。もちろん公共機関が収益を求めていないわけではないし、むしろビジネス感覚があるべきだと思うが、事実として公共機関はあくまでも「収益」ではなく「公」のために存在しているというのがベースだ。
公務員という職業に魅力を感じる若者が多いというのは、自らの存在意義を「公に貢献すること」に見出している人が多いということだとすれば、その価値観は歓迎すべきことだと思う。これはこじつけかも知れないが、多感な時期にあの東日本大震災を経験しているわけだから、そうなるのも頷ける。
余談だが、震災と言えば朝ドラの「あまちゃん」で70~80年代の回想シーンがよく流れていた。三陸鉄道の運転手こと大吉が「これからは地方の時代だべ」と熱っぽく訴えていた。そして現代も、「地方の時代」という言葉が生まれては消えていく。毎年のように「これからは地方だ」と言う。インターネット業界で言うところの「電子書籍元年」「動画元年」のようなものだ。
 

IターンやUターンの障壁は、地方で仕事をすることに対する不安

話を戻す。冒頭で触れた通り大学生の新卒市場では地方公務員が人気とのことだが、一方で転職市場では、Iターン転職やUターン転職という言葉が売り文句の一つになっている。内閣府による「農山漁村に関する世論調査」によれば、地方で定住したい人の割合は増加している。ただし、もともと地方で働いている人でなければ、地方で生活することにおける最大のボトルネックは職探しである。同調査によれば、地方移住における問題点として63%の人が「仕事がない」ことをあげている。
私は2015年に、九州のベンチャー企業が集まるIターン・Uターン転職を促進するイベントに参加したことがある。そのときは、九州のベンチャー企業からは地方在住のメリットとして「豊かな暮らし」があげられていた。その反面、「田舎だから楽が出来るとは思うな」という釘を刺すメッセージも多かったように思う。地方は都会よりも仕事をしなくて良いと思っている人が多いため、「思っていたのと違った」というミスマッチが起きるのだという。
自らのキャリアを切り開くということについては、私自身も転職を二回経験していることもあり、多くの社会人と同じく頭を悩ませることがある。どんな人生を歩みたいのか、その中でキャリアはどういう位置づけなのか、自問自答の日々である。夢や目標、家族、仲間、経験、スキル、性格的な適正、社会情勢や時流、経済条件、現在の職場環境に対する感情など、様々なことが複雑に絡み合う。
地方の自治体や企業が、外から人材を確保するには、そんな悩める社会人に対してメッセージを届けることが必要だ。その地域の人々の暮らしはどんなものか、どんな仕事があり、どんな人を求めているのか教えて欲しい。地方こそ、良くも悪くも排他的な環境であるから、誰でも良いから来て欲しいということではないはずである。あと細かいが、面接が複数回必要ならリモートでお願いしたい。
 

仕事そのものを地方に創りだす動き

地方にそもそもの仕事が本当になければ、「東京からいちばん遠いまち」こと島根県江津市のビジネスプランコンテスト「江津市ビジネスプランコンテスト」や、徳島県が地元メディアや大学と連携して行う「徳島創生アワード」のように、仕事を創る人に来てもらうという発想の転換をしても面白い。そんなことをしている自治体がある地域は、フットワークが軽く革新的であり、きっと素敵なところだろういうブランディングになるし、モチベーションの高い人材を獲得できるのではないか。
テクノロジーの進化や人々の考え方の変化に後押しされ、近い将来、地方にいながら業界の第一線で活躍したい、都会にいながら地方自治体に関わる仕事をしたい、そういった希望を持つ人が増えていくだろう。普通の会社員だけでなく、育児や介護に忙しい人もそういった思いと共に行動を起こすかも知れない。それはまさに1億総活躍社会の一端を担うことになるだろうし、今まで活躍の場を見つけられなかった新しいタイプの人々が活躍する姿は、今後日本や世界を担う若者にも生き方のヒントを与えてくれるはずだ。
ヨソモノを排除する地方と言われることもあるように、仕事だけでなく移住を阻む原因は複数あるし、これらも解決されていく必要がある。ただし、まず初めに地方で最も懸念される仕事の問題を乗り越えることができれば、これまでの常識とは違った形で人々が交わることにより、新たな価値が生み出されるような社会が創出されるのではないか。

小野寺将人。湘南在住。不動産情報ウェブサイト運営会社、お出かけ情報ウェブサイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイト運営会社にて企画職に従事。

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