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【キングコング西野亮廣氏 #5】グルメ番組に出たら嘘をつかなきゃいけない

西野亮廣5

――2017年11月12日に渋谷ヒカリエで開催された国家公務員、地方公務員が600人集まった「第10回よんなな会」。お笑い芸人キングコングの西野亮廣氏が、お金と広告、そして公務員についてお話された。第5話。

お金ではなく信用を稼ぐ

西野亮廣氏:僕たちの感覚で言ったら「8000円とか1万円とかくれよ」って感じじゃないですか。もし、小谷が値段設定を1万円にしていたら「1万円あげたんだから、そこで終わり」ってなってると思うんです。

 でも、小谷は50円しか取らないもんだから、ご飯いっぱい食べさせて、しまいには「本当にありがとうございます」って、そっちが頭下げてるんです。つまり小谷は、その瞬間にお金は稼いでいないんだけれど、信用を稼いでいるんです。すげえ恩を売って信用を稼いじゃってるっていうこと。

 小谷はこの感じで毎日、毎日、毎日、毎日、お金を稼がずに信用を稼ぎまくってるんです。で、50円でとにかく働いて、毎日、毎日、毎日、毎日、半年ぐらいやって。結果、半年後に結婚しちゃったんですよ。結婚相手は誰かって言うとですね、名古屋で鬼ごっこの人数合わせで来てくれっていう50円の依頼が女の子からあって…。

会場:(笑)。

 小谷は東京うろうろしているホームレスなんですけど、ヒッチハイクで名古屋まで行ったんですよ。そこで「はじめまして」ですよ、その女の子とは。で、鬼ごっこをして、名古屋で散々走り回って東京戻ってきて、鬼ごっこした翌日に籍入れちゃったんです。結婚しちゃったんです。

 お察しの通り、この物語の中で一番頭おかしいのは小谷の嫁のほうですよね。

会場:(笑)。

信用をお金に両替するための装置

 とにかく結婚しちゃったんですよ。で、小谷に相談されたんですよ。「西野さん、結婚しちゃいましたよ。それはいいんだけれど、奥さんに結婚式、披露宴をプレゼントしてあげたいんです」。そうですよね、自分と結婚してくれたら奥さんにプレゼントしたいですよね。

 でも、小谷は「僕お金ないです」って。結婚式しようと思ったら、高いんですよ結婚式。100万円とか200万円とか、もっとするんですよ。小谷って1日働いて50円だから、1カ月MAXで働いても1500円なんですね。

会場:(笑)。

 で、どうしたかって言うと、クラウドファンディングで結婚式の費用を集めようじゃないかと。で、浅草の花屋敷を貸し切って、ホームレス小谷が結婚式をするっていうことで、1口4000円支援してくださったら、その結婚式に参加できるっていうリターンを用意したところ、2週間で250万円集まったんですよ。5年前の誰も知らないホームレス小谷ですよ。

 問題はこれ誰が支援したんだと。誰の積み重ねで250万円っていう大きいお金になったかって言うと、これまで小谷のことを50円で買った人たちが、「あの小谷君が結婚するんだったら、そりゃ支援するよ」っていうことで、みんなが一気に4000円をバーって入れだして、結果250万円になっちゃった。

 つまり小谷っていうのは、お金持ちではないけれど信用持ちだった。信用の面積がすごく馬鹿でかいから、クラウドファンディングっていう「信用をお金に両替するための装置」ができたときに、お金を作りやすかったんだと思うんです。

 もう1回言いますよ。お金っていうのは信用を数値化したもんで、クラウドファンディングっていうのは信用をお金にするための両替機です。小谷はそれ以降もクラウドファンディングを20回、30回ぐらいやってるんですけど全部成功してるんですよ。

 だから、あいつが作ったお金っていうのはこの5年間で何千万円になるんですよ。でも、あいつは相変わらず、今日も一文無しです。でも、小谷が今日、今この瞬間に「クラウドファンディングやりますよ」って言ったら、50万円、100万円がパって集まるんですよ。

 話戻します。クラウドファンディングで勝とうと思ったら、まずやらなきゃいけないのは信用を稼ぐっていうこと。とにかく信用を稼がないとお金は作れない。

まずい料理が出てきて「まずい」と言えない

 テレビタレントとクラウドファンディングの相性がすこぶる悪いって、さっき言いました。最近だったら、ロンドンブーツの田村淳さんがクラウドファンディングやってるんですけど、むちゃくちゃ失敗したんです。

 たぶん目標金額1000万円で、100万円ちょっとしか集まってないんですよ。支援者数がたぶん100人ぐらいです。でも田村淳さんってツイッターのフォロワー250万人ですよ。フォロワー250万人で100人の支援しかないって、なんか変じゃないですか?

 これはいったい何なんだって。なんでテレビタレントとクラウドファンディングっていうのは、そんなに相性悪いのか? 理由はもう単純明快で、テレビタレントの給料の出どころってスポンサーさんですよ。スポンサーさんが番組の製作費払って、番組の制作費の一部からタレントの給料が出てるんで、お金の出どころは基本的にスポンサーなんです。スポンサーさんがお金の出どころだから、僕たちは好感度を取って、ようやく仕事が成立するっていうモデルになっちゃってるんです。

 でも、好感度を取ろうと思ったら、グルメ番組でまずい料理が出てきたとき、「うまい」って言わなきゃいけないんです。まずい料理が出てきて「まずい」って言っちゃうと好感度が下がっちゃうから。ここで1回嘘をつかなきゃいけないんですよ。

 でも、まずい料理ってまずいっすよね。僕、グルメ番組を昔やっていたんだけれども、漁師さんが船の上でさばいてくださるような釣りたての魚あるじゃないですか。バって釣ってすぐにもう船の甲板でこうやってさばいてる、あの釣りたての魚。あれ、まあまあ臭せえっすね(笑)。

会場:(笑)。

 まあまあ臭せえっす。少なくとも、俺が食ったのは臭かったです。臭せえなと思ったんですけど、隣でタレントが「美味しい、新鮮でコリコリしてて」みたいに言うんですよ。でも、あんまり聞いたことないんですよね。テレビタレントがグルメ番組で食って「くっせえ!」って言ったやつ。なんでかっていうと、言えねえんです。

グルメ番組に出たら嘘をつかなきゃいけない

 昔はまずいもん「美味しい」って言ってよかったんですよ。でも今、まずいもんを「美味しい」って言ったときに、その料理の味っていうのは、ぐるなびだとかツイッターのタイムラインとかで、本当の味がつぶやかれてるわけですよね。つまり、今は嘘が嘘としてカウントされるようになった。ここでつぶやいてる人は、場合によってはフォロワー10万人とか100万人とかいる場合がある。

 でも、テレビに出ようと思ったら、嘘をつかなきゃいけない場合があるんです。テレビタレントさんっていうのは別に嫌な人じゃないんすよ。淳さんいい人なんですよ。ベッキーもいい人なんです。みんないい人なんです。でも、みんな嘘をつくわけですよね。みんな普段嘘なんて絶対つかないんですよ。でも、あの瞬間嘘つくわけですね。

 何が言いたいかっていうと、嘘っていうのは環境によってつかされてるんです。であれば、嘘をつかざる環境に足を踏み入れちゃだめなんです。

 『えんとつ町のプペル』を作るためにはお金が必要であると。お金を作るためにはクラウドファンディングをする必要があった。クラウドファンディングで勝つためには信用を勝ち取る必要があった。信用を勝ち取るためには嘘をついちゃだめなんだ。嘘をついちゃだめっていうことは、嘘をつかざるを得ない状況に身を投じちゃだめだ。嘘をつかざるを得ない状況ってどこなんだ? グルメ番組なんです。つまり『えんとつ町のプペル』を作ろうと思ったらグルメ番組に出ちゃだめなんです。

会場:(笑)。

※本記事は全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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