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【長島町 井上貴至氏】総務省から過疎の町へ派遣、「地域のミツバチ」として革新を起こす(3/5)

「君ら東大生は何も知らない、とにかく現場に行きなさい」

加藤:過去を振り返ってみて、ご自身のターニングポイントのようなものはありましたか?
井上貴至氏:それは、大学の先生に「君ら東大生は何も知らない、とにかく現場に行きなさい」と言われて、当時のゼミのメンバーと一緒に現場に行くのが凄く楽しくて、それが原点になっているんでしょうね。
加藤:確かに。それが活きている感じがしますね。

東京大学 安田講堂

東京大学 安田講堂

地域の中で「コミュニティ」や「場」を作る

井上貴至氏:今やっていることも、地域の中で「色んなコミュニティ」や「場」を作るということなんですよね。最初に僕がやったのは、「長島大陸食べる通信」を作ったんですね。これは長島町についての雑誌を定期購読してもらうことができ、それのセットで食材を送るんですね。

食べる通信表紙

「食べる通信」の雑誌

井上貴至氏:何でこれを始めたかというと、長島町で漁師さんの船に乗せてもらったんですよね。5月のゴールデンウイークの時に。長島町は世界一のブリの町で、ブリの養殖をいっぱいやっているんですけど、東シナ海にブリの稚魚である「モジャコ」、藻に付いたジャコ獲りに行く訳ですよ。
その話を聞いて興味を持ったんですが、町の人から「井上君、モジャコ船はやめたらいいよ」と。そう言われると天邪鬼ですから、これは行きたいなと思って(笑)。
それで、漁協の組合長に「乗せてください」と頼んだら、「よか、よか」って乗せてもらったんですね。朝4時に起きて、4時半に港に着いて、パッとライフジャケットを渡されるんです。
そこで言われたのが、「東シナ海って波が強くて、船が浮くから、その時はワザと海に落ちてくれ」と。そうじゃないと、船にパーンと波が当たった時に、船の中で落ちて頭や肩、腰打って怪我すると。
そこまでは良いんですが、最後に「ワシらは気づかん時もあるけど、気づいたらちゃんと後で拾ってあげるよ」と(笑)。
加藤:(笑)。

モジャコ船

まだ暗い中、波の荒い海に出ていく漁船

井上貴至氏:そうやって乗らせてもらって、一番揺れる舳先でずっとモジャコを探すんですね。
漁というのは博打ですから、何十万なんて一回船に出たら直ぐ飛びますからね。油代が掛かって、船上員さんの手当を払ってやっていると、それは皆真剣ですよ。

もじゃこ漁

藻を網を素早く手繰り寄せる 海水を含んだ藻と網は重たい

もじゃこ漁3

藻の中からモジャコを掻き分ける

井上貴至氏:船上員さんもモジャコを見つけないと次は呼ばれないし、そういう真剣勝負をしているその姿が凄いカッコいいなと思って・・・。でも一方で、スーパーマーケットでその値段を見てみると「ワンパックでこれだけにしかならないのか」と感じるんですよね。
ただ、「食べる通信」をやろうとしても、僕は写真とかデザインはできないですから、仲間を作って行こうと思って、町の写真家やデザイナーに声を掛けたんですよね。これが今の長島町の地方創生の原点ですね。
食べる通信の編集委員には色んな人が入っているんですよ。漁協の職員の人もいれば、信金の人もいれば、絵が得意な人もいれば、陶芸やっている人もいれば、「地域起こし協力隊」の人もいれば、介護施設の人も。こういった様々な職種の、様々なメンバーでやっている訳ですよ。
つまり、「町の為に何かやりたいと思っている人達」がそこに集まって来ている。だから、僕は「食べる通信」を作ったんじゃなくて、コミュニティを作ったんですね。
加藤:なるほど。コミュニティが上位概念になるんですね。

一人で全部できるスーパー農家は一部しかいない

井上貴至氏:因みに、僕は田舎の農家さんをやることは、都会のサラリーマンよりよっぽど難しいと思うんです。だって、都会のサラリーマンって「部」、「課」、「係」でその仕事をしていれば、まあ何とかなる訳です。
だけど、農家さんって違いますよね。自分で農作物を作るだけではなくて、販路開拓して、器械も自分で買って、金融機関ともやり取りしないといけない訳ですよね。こういうことを一人で全部できるスーパー農家って一部しかいない訳ですよ。
でも、「良い農作物を作れるけど、販路開拓は下手な人」とかもいるんですね。そういう人達が活躍しきれてない訳ですよ。田舎には、全部できるようなスーパー農家しか残れなかったんです。
加藤:なるほど。
井上貴至氏:それって勿体ないと思って、こういう「コミュニティ」ができると、新しいことが生まれる。例えば、ネットのプロがここに入ると、彼がネット版の「道の駅」を作ると、そこで農作物を売れる訳ですよね。
多分そういう場を作っていく、そうすると何かやりたいなとか、何か頑張りたいなという人が定期的に集まって来て、それが大事なんですよ。一人でやっていると「孤独」じゃないですか。
加藤:確かにそうですね。

自ら発案した「地方創生人材支援制度」の第一号として長島町へ派遣

加藤:拉致問題の担当の後には長島町に来たわけですよね?
井上貴至氏:そうです。そうです。ちょうど拉致問題やっている時に、政府が地方創生を掲げていたんですが、少なくとも霞が関には当時僕より地方を回っていた人はいなかったんです。そういった活動がちょこちょこ新聞とかに出たりしていると、それを見た政務三役(大臣・副大臣・政務官のこと)に呼ばれて、視察先のアテンドをしていたんですね。
皆、神山町に視察に行きますけど、日帰りですぐ帰っちゃうんですよ。そういう時に「神山町はサテライトオフィスを作っているので、実際に1週間ここで働いてみましょう」とか伝えていたんですね。そうでないと、本当の良さって解らないわけですよ。
加藤:なるほど。
井上貴至氏:そんなことを言っていると、段々、具体的な施策みたいになってくるんですよね。「じゃあ今度、井上君考えてよ」と言われて考えたことの一つがまさに私が自分が第一号で派遣されることになった「地方創生人材支援制度」なんです。

※「地方創生人材支援制度」・・・地方創生に積極的に取り組む市町村(原則人口5万人以下)に対し、意欲と能力のある国家公務員・大学研究者・民間人材を市町村長の補佐役として派遣し、地域を支援する。

当時思ったのが、被災地には沿岸とかに官僚とか、民間企業の方とかが行っていて、活躍している訳ですよね。大きな成果を上げていますと。でも、中と外をつなぐ人が足りていないのは被災地だけの問題じゃなく、「過疎地も同じだから、そこに派遣しましょう」と提案したんです。
加藤:なるほど、官僚としての仕事はしっかりこなし、アテンドをする中で決裁権に近い方達にアイデアを伝えていったわけですね。
井上貴至氏:官僚は政治に対して色んな情報を提供したりとか、政策判断のデータや資料をお伝えするという立場という観点からすると、霞が関よりも今の方がよっぽど官僚の仕事をしていると思いますよ。
加藤:それは実体験から得た情報を、国に上げているということでしょうか?
井上貴至氏:はい。ぶり奨学金が、国の給付型奨学金を後押ししたわけですし、観光を小さな市町村でやるには旅行会社と組むのが一番良いとか。求人は、ビズリーチ(民間の求人サイト)で募集してやれば良いとか。
横展開できるような、分かりやすくて、誰でもできることをやっていると思います。

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