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【長島町 井上貴至氏】総務省から過疎の町へ派遣、「地域のミツバチ」として革新を起こす(4/5)

自治体がお金を使わない仕組みを作るから、維持可能な仕組みができる

加藤:長島町ではどういう範囲のお仕事を見られているのでしょうか。
井上貴至氏:役割としては「ザクッと地方創生をやってくれ」って話です。副町長は2人体制なんです。副町長は2人体制で、もう一人の副町長がいらっしゃって、入札とか、決裁とか、所謂、通常の役所のルーティン業務はその方がやられているんですよ。僕は、地方創生で新しいものを作るというところでやっているので。
加藤:「地方創生人材支援制度」ではないですが、鹿児島県鹿屋市の福井逸人さんのケースと似ていますね。井上さんも「攻め」ですね。
井上貴至氏:この副町長2人体制というのが、とても機能しているんじゃないでしょうか。
僕ももう一人副町長がいてくださるから、いつでも外に行けるわけですね。
部長とかで入るケースだと、事務処理の1を1.1にするような改善のレベルに終わってしまうと思うんです。でも、イノベーションを起こそうと思うと、中と外を繋ぐ役割は大事だと思いますね。
加藤:赴任された時には、既にその年の予算が決まっていたと思います。それでも「ぶり奨学金」だけでなく、本当に様々なことができたのは、何故だと思いますか?

長島町の地方創生の主な取組み

井上氏が長島町に来て2年弱の間に、多くの取り組みが行われた

井上貴至氏:そもそも、長島町では沢山お金を使ってないんですよ。ただ、町長にお願いしたのは「旅費」と、「人を呼ぶお金」だけは今までの役場の常識に捉われず、沢山つけてもらったんです。
ミツバチとしての役割に徹しようと思うと、パッと東京とか他の地域に行けないと駄目なわけですよね。だから、次の6月の補正予算でそのお金だけ通してもらったんです。まさに、ぶり奨学金がそうですが、役場の予算は殆どかからないようにしました。
加藤:だからこそ、将来にわたって維持が可能になるわけですね。
井上貴至氏:はい。今年、町からだけでも700万円の寄付が集まっています。ふるさと納税の使途指定で入るものも考慮すると、多分あと10年ぐらい経っても行政のお金は要らないわけですよ。
だから、誰も反対する理由がないんですよね。給付型奨学金をやって、その分、高齢者福祉削りますとか、或いは公共事業削ります、或いは「増税します」となると、「それはちょっと待て」となると思うんですけど、行政がお金を使わない仕組みを作っています。
長島町の漁協の株式会社が走らせているキッチンカーとかもそうですよね。特産品を売ろうとアンテナショプを運営したら、敷金、補償金、改装費がかかって人も沢山雇う。軽く何千万円って話になりますよね。でも、所詮これは車ですから、収支も短黒が出る計画でやりましたし、実際に毎月出ています。

長島大陸キッチンカー

キッチンカー 採算も取れている上に、長島町の広告効果も存在する

加藤:採算が合って、しっかり継続できるということは良いことですね。
井上貴至氏:その上、ブリや長島町の宣伝ができる。よく来る人は今度ネットで買ってくれて、お歳暮にしたり、バーベキューにしたりする為に買ってくれる。これに反対する人は誰もいないですよね。

自治体と国の関わり方について

加藤:少し話が変わります。これは少し守り寄りの話になるかもしれないですけど、自治体の使う基幹システムはそれぞれの自治体がそれぞれ個別に契約しているものも多いと聞いています。これを、総務省や国が主導して一括にまとめてコストカットを進められないんでしょうか。
井上貴至氏:今は紙の切符と、パスネットとSuicaが混在している状況ですね。小さな自治体はひょっとすると、紙の切符だけの方が短期的には良いかもしれないですけどね。
今は、それを無理矢理進めようとしているから紙の切符のメンテナンスも、パスネットもメンテナンスも、Suicaのメンテナンスも全部やっている状況で、そこはもっとうまく集約したらいいと思いますけどね。
加藤:その集約されていない理由は、何故なのでしょうか?
井上貴至氏:それぞれの既存のシステムがあったりするとか、それがまたバラバラであったりするので簡単に移行できないとは思うんですよね。
加藤:例えば今、総務省が「公会計を推進して下さい」という話をしているじゃないですか。そういうものと合わせて、色々な分野において、一括でシステムを発注・構築して、その費用を地方自治体に按分するということはできないんでしょうか?
井上貴至氏:その方が良いと思いますよ。ただ、そうなると、そこをどこか1社にお願いすると思うので、その調整は凄く大変ですよね。そこで漏れた会社から銃弾が飛んでくるって話もあるかもしれないですよね(笑)。
加藤:なるほど(笑)。あと、これも率直に総務省の中の人にお聞きしたかったのですが、臨時財政対策債のスキームに関しては否定的な意見もあります。実際に自治体に入っている視点から、こう変えた方がいいとか思うところはありますか。
井上貴至氏:それは当然、地方の自主財源を増やすべきですよ。交付税の形でやるに越したことはないです。財源移譲をするとかね。コストカットのところで思うんですけど、国より地方の方がよっぽどコストカットが進んでいますよ。
あんなにカラーコピーでじゃんじゃん刷っているのは国だけですよ(笑)。国だけだし、無駄な資料をいっぱい作っているのも国だけ。刷っていることが無駄だと思ってないですもん。そして、人の数も、国より自治体の方がよっぽど減っています。
加藤:自治体の人の数は減っていますよね。
井上貴至氏:本当に、自治体職員は厳しい中でやっていますよ。そこは、各省の毎年の人員数の要求を見ていると、全然減っていないですからね。よっぽど自治体の方が苦労していますよ。
そういうとよく、言われがちなのは、地方に移譲するとコストがかかり過ぎるというんですが、僕は逆だと思いますね。国がやっているから、わけのわからない道路を作ったり、あまり必要とされない橋を作ったりするじゃないですか(笑)。
それを国が補助するから、自治体負担が殆どなくなってくるわけですよね。そんなことをしているから、地方自治体も作らざるを得ないんじゃないですかね。
それに、自治体が予算を割く場合には住民のチェックもあるわけで、住民の身近なところに移した方が厳しくなる場合もあるでしょう。
勿論、広域でやった方がいいものもありますよ。
例えば、消防とかゴミ処理とかは、一市町村でやると大変なところも有ると思うんですが、一回全部、市町村に移譲して、その上で市町村単独でできないものは、周りの市町村と組んでやる、それでも難しいものは県や国にやってもらうという発想が大事だと思うんですね。
教育委員会とかも、さっさと無くせばいいですよね。あれほど市長村を馬鹿にしている制度ないですもん。
加藤:それは、何故そう思われるのでしょうか?
井上貴至氏:さっき言った通り、基本は全部市町村に分権すべきなんですよ。それでいうと、教育委員会って極めて責任と権限が曖昧な構造になっているんです。市町村立学校の教職員の人事権は校長にあるわけでもなくて、教育長でもなくて、市長でもない。県教育委員会なんですよね。
その理由の一つが、「市町村単位で募集すると優秀な人材が集まらない」って言うんですが、それは、市町村の職員を馬鹿にしているって思うんですよ(笑)。じゃあ、今の市町村が採用している職員をなんだと思っているんだって話じゃないですか。
市町村長に人事権を任せると政治色が強くなるという人もいますが、国の文部科学大臣だって政党に所属した政治家でしょ。国はよくて市町村長はだめだという理由が分からない。
それに、福祉委員会とかってないでしょ。教育だけ特別という考えが縦割りを助長しています。ほんとうは教育と地元の産業等をもっと結び付けたらいい。
今でも都会で採用された教職員の中には「一生懸命勉強してこんな田舎は早く出ましょう」と考えている人は少なくないんですが、インターネットが普及して田舎でもクリエイティブな仕事ができる時代になったわけですから、これからはいかに地元で新しいことにチャレンジできるか、そういう人材を育てていくことが重要じゃないですか。
そう考えた時に、今の教育委員会制度はゼロベースで見直した方がいいと思います。
加藤:なるほど。確かに、一度権限移譲してみるというのは有効な施策になるかもしれません。

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

最終ページ:行政だけで全てを抱え込もうとしない

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