7月30日(日)、特定非営利活動法人自治体改善マネジメント研究会が、スコラ・コンサルタント東京オフィスにて、第1回自治体改善ステップアップセミナーを開催した。
コンテンツとしては、元東淀川区長の金谷一郎氏が「行政として地方創生を進める上での背景や課題」について講演、各自治体の具体的な改善事例に関するパネルディスカッション、参加者同士のワーク、さらには参加者の交流を深める懇親会などを行った。
それぞれの立場を理解できているのか?
元東淀川区長の金谷一郎氏は、「自治体を取り巻く課題は複合化しており、縦割り組織の考え方ではなく、全庁的な取り組みが必要」「効率性・効果性が重視され、安易な指定管理委託や丸投げ委託が行われている」などの背景に言及するとともに、改善を進める上での重要な観点として、「『首長』『幹部』『管理職』『一般職員』それぞれの立場を理解できているのか?」「政治と行政の関係が理解できているのか?」などと問題提起をした。総合計画から個人の目標までに一貫性があるか?
また、パネルディスカッションでは、金谷氏に加えて三重県地域連携部地域支援課長の後田和也氏、須坂市産業振興部商業観光課課長補佐の寺沢隆宏氏、横浜市資源循環局政策調整部長の鈴木一博氏、そして、本企画の主催者である特定非営利活動法人である「自治体改善マネジメント研究会」代表の元吉由紀子氏がコーディネーターとして、各自治体の置かれている状況や具体的な事例を踏まえて深堀した。
具体的なものとして、「総合計画が過去のもののままであったり、そもそも読まれていない」、「課や係の目標が存在しない」、「課や係の目標と同じものが、そのまま個人の目標となっている」など、この会のテーマである『改善』の余地が浮き彫りとなった。また、「忙しいから改善ができない」ではなく、「忙しいからこそ改善が必要だ」という意識についての言及も、重要なメッセージであったと感じた。
これからは発想が全く違う『改革』も必要だ
その後のワークでは参加者同士で3~4人のチームを組み、それぞれが所属している組織が改善を進められているかどうかを可視化、共有していった。ここでは、自分たちができていたと感じていたものに対して、実はまだまだ改善が可能だという気付きを与えられたり、「改善を進めるため、具体的なアクションとして何ができるのか」というものが深堀された。それぞれの自治体は、同じような領域の仕事をしていることが多い中、他自治体の成功事例や失敗事例、課題感を共有する価値が多分にあるのではないかと感じた。
午前10時から午後5時までの研修の最後に、元東淀川区長の金谷氏が、「過去よりもルーティンワークが質、量ともに大変になっている。だからこそ、改善が必要だが、これだけでは持たない。これからは発想が全く違う改革も必要だ」と締めくくり、参加者同士の交流を深める懇親会へと続いた。
アクションを念頭に追いた制度設計
プログラム全体を通して、実際のアクションに繋がることを目的としたイベントの設計が目立った。やはり、人は受け手として他人の話を聴くだけではなかなか行動に発展できない。自治体組織が前例踏襲型で動きが重い、などと聞くことは非常に多いが、その置かれている状況の中で、何ができるかということを実務レベルで語られたことは、非常に有意義であったのではないだろうか。
この日、開催地の東京近郊だけではなく、岩手県、長野県、静岡県などからも参加者が集まった。何かを変えるということは、一朝一夕にはいかない。休日の時間を割いた志の高い自治体職員が、それぞれの組織の中で実行、アクションすることで、少しずつ『改善の輪』が全国各地の自治体に広がればと願う。
記=加藤年紀