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碇 邦生氏

HOLG編集室

地方公務員オンラインサロンセミナーレポート『イケてる人事は、人事部がいらない。』(大分大学経済学部講師 碇 邦生さん)

文=納 翔一郎(富田林市)
 地方公務員のみなさんは、地方自治体の人事の役割をどのように考えていますか?そして、そもそも人事の仕事が、どのようなものかご存じでしょうか?実は、一言で「人事」と言っても、大きく2つの仕事に分かれます。私たち地方公務員が人事の仕事をきちんと知ることで、所属する地方自治体の見え方も変わってくるかもしれません。今回の地方公務員オンラインサロンでは、リクルートワークス研究所などで人事に関する様々な研究と経験を重ねてきた碇邦生さんに、今までとこれからの人事について教えていただきました。

<セミナーの流れ>
・人事の8つの機能
・人事の歴史
・戦略人事と労務管理

 最初に、碇さんから参加者へ「人事の役割とは何でしょうか?」という問いがありました。その問いに対して、参加者からは以下のような回答がありました。

・職員の能力を最大限に引き出すこと
・組織を円滑に動かすこと
・組織のミッションに合わせて人材配置することで組織のパフォーマンスをあげることを下支えすること
・経営課題解決のための人的資源の管理
・人的リソースや組織的な観点を元に、組織の成果を最大化すること など

 この回答から見えた人事の性格として、①人事の個別施策をきちんと行う、②組織の課題やミッションを「人」で支える、そして、③職員個人のパフォーマンスをあげる、という3つのことが見えました。しかし、碇さんからは、「人事の役割に『これ!』という答えはない」とのコメントでした。組織のあり方は歴史的にもどんどんと変わる中で、人事の役割も同様に変わっていくというお話から、今回のセミナーが始まりました。
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 まずは、人事の8つの機能についてです。人事の機能について、具体的な定義はありませんが一般的には以下のように言われています。

・人事企画(採用、配置、給与・報酬、育成、評価、昇進・昇格)
・労務管理(給与・報酬、労務、福利厚生)

 簡単に言えば、職場に入社してから退社するまでに関わる全てのことです。そして、給料の支払いや労務的な事務、福利厚生などの必ず行わなければならない「労務管理」が、人事の基礎となり、労働法などの法規制が主に対象としている仕事です。対して、「人事企画」は、採用や育成、評価などの組織作りや「人」作りを担う業務で、小さな会社であれば全て社長が担うことが多いです。この社長が行うような事務を人事が行っていることから、「人事企画」と言われています。
 つまり、人事の仕事は「労務管理」という法規制などで義務付けられている従業員管理の事務と、「人事企画」という組織作りなどの経営者の目線が求められる業務に分けられます。最近では、「労務管理」をアウトソーシングで行い、「人事企画」をメインにする人事も増えてきました。また、ダイバーシティ推進や海外人事、HRBPなどの8つに含まれない新たな機能も増えています。時代の流れに応じた最適な人事の役割が、日々変わっていることもわかります。
 一つの見分け方としては、組織の働き方が考えられます。働き方を組織が管理している場合は、人事の仕事は「労務管理」がメインとなります。そして、働き方を個人が管理している場合は、人事の仕事は「人事企画」がメインとなります。このように、働き方ひとつでも人事の役割は変わりますので、一概に言えないことがよくわかるでしょう。
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 次は、人事の歴史についてです。人事の歴史は、大きく3段階に分かれています。
 まずは、100年前に生まれた「経済人モデル」です。人間が金銭的動機から組織で動くというものであり、簡単に言えば、「お金を与えると良いパフォーマンスで働くのではないか?」という考え方です。とてもわかりやすいモデルではありますが、このモデルは50年も経たずに否定されました。
 次に出てきた「社会人モデル」は、一緒に働く仲間との関係性や仲間意識もパフォーマンスに影響を与えるというものです。つまり、金銭的報酬や職場環境よりも、仲の良い人と働くことや上司からの期待などの人間関係がパフォーマンスに影響を与えるのです。
 そして、更に時代は進み、「自己実現人モデル」が誕生します。「自己実現人モデル」とは、行動科学をベースにして、働く人のやる気や動機付けをマネジメントすることです。最近言われている2つの軸は、「外発的動機」と「内発的動機」です。「外発的動機」はお金や対価、「内発的動機」は楽しいやワクワクなどの自分の内面からふつふつとやる気を起こさせることです。この両方のバランスを上手くとることが、とても大切です。
 「外発的動機」は、やることが決まっていることに対して有効です。パフォーマンスが上がることで、仕事が捗るでしょう。スムーズになる。対して、イノベーションや新規事業を企画するなどの正解がないことを行う時は、「内発的動機」が有効です。
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 最後に、人事企画を発展させてより経営戦略との連携を強めた概念である「戦略人事」 と「労務管理」を切り分ける考え方のお話がありました。具体的には、給与計算や福利厚生管理などの「戦略人事」に含まれない人事業務を切り分けるというものです。「戦略人事」は、必ずしも人事部局で行う必要がありません。例えば、一昔前に流行したティール組織は戦略人事を現場レベルの事業ユニット毎に行います。また、リファレンス採用のように、全従業員が採用担当としての役割が与えられる組織も増えてきました。タイトルの「人事はいらない」は、この内容に繋がります。
 地方自治体の人事において欠かせない労働法や地方公務員法は、「労務管理」を重視しています。しかし、採用や人材育成などの性格が異なる「戦略人事」の仕事もしているのです。戦略人事では、経営戦略や組織変革をけん引する経営者の目線で動くだけではなく、現場の声を経営層に届ける従業員の代表となることも同じように重要となります。そして、そのためには人事が現場に足しげく通い、リアルな情報を集める必要があります。しかし、成果や重要度が問われる「労務管理」ばかりを行い、職員の現場の声を聞くなどの「戦略人事」がおろそかになりつつあります。
 このことから、碇さんは、やはり「戦略人事」と「労務管理」を切り分けることが大切だとお話されました。そして、切り分けることができる地方自治体こそが、次のステージにいく地方自治体になるのではないのかとのことでした。歴史から人事を紐解いた碇さんのお話はただただ説得力があり、これからも地方公務員として働く中で、強く心の中に残るものとなりそうです。
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 今回の碇さんのオンラインセミナーでは、人事に関する多くのことを学ばせていただきました。社会人として働く中で、人事は密接に関わることで、みんなが共通の興味関心ごとではないかと思います。そのため、改めて職員みんなで人事について考えることで、自治体が次のステージに繋がるのではないかと感じることができたオンラインセミナーでした。

▼今後開催予定のオンラインセミナー
【11月15日(月) 21:00〜22:30】
講演-筒井敬三さん(LIFULL 執行役員)「1分で伝える、論理的な考え方」
【11月24日(水) 19:30〜21:30】
第5回 電通×ホルグ共催セミナー
講演-取手市 岩崎弘宜さん 「議会改革度調査2020」総合ランキング一位!議会改革を進める手順とは
【12月8日(水) 21:00~22:30】
講演+個別相談可-海老澤功三さん(西東京市)
若手中堅向け「政策提案のコツと実現への近道」を考える
【12月16日(木) 21:00~22:30】
講演+個別相談可-箕浦 龍一さん(一般社団法人官民共創未来コンソーシアム理事、元総務省官僚)
若手中心の「総務省オフィス改革実行チーム」は、組織に何をもたらしたのか

 地方公務員オンラインサロンでは、月に3〜5回のペースで、魅力的なオンラインセミナーが開催されています。今回のような、地方公務員として働くだけでは学ぶことができない講義も、受けることができます。アーカイブで今までのオンラインセミナーを視聴することもできますので、ぜひご参加の上、ご覧ください。なお、アーカイブには、「多様な人材が活躍する職場作りのための人事の役割」という動画もありますので、合わせてご覧ください。

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