財政健全化のために初めて行ったことは無駄のカット
加藤:市長は就任からかなり早い段階で財政を健全化させました。どのようなことを進めたのでしょうか?
倉田市長:基本的にはまず無駄のカットです。一度、徹底的にケチケチしないといけない。その見直しのときに、切るときは全部分け隔てなく切る。何故かというと、同じような属性の予算にもかかわらず、判断が違うものが出て来ると、「あれは市長が好きだから」とかそういう話になっていくからです。市長に就任して最初にそれをやったので、後から楽になりました。
市立病院への年間10億円の歳出が現在はゼロ
加藤:最も大きく削れたところはどこでしたか?
倉田市長:金額ベースで一番貢献したのは、市立病院への繰出金ですね。箕面市役所でもだいたい900個くらいの事業がありますが、30万円くらいの小さいイベント的な事業から、それこそ病院の繰出金みたいに、年間10億円みたいなものもありました。
当時、市立病院は毎年約12億円の赤字を出していて、それを税金から補填していました。今、繰出金はゼロです。病院は苦しんでいますが、よく頑張ってくれています。
「公立病院は赤字で仕方がない」という神話
加藤:現在、病院は運営できているのでしょうか?
倉田市長:独立採算を目指してもらっていて、一度達成できかけたんですけど、今は少し悪化していて2~3億の赤字を出していると思います。
「公立病院は赤字で仕方がない」という神話があるんですよ。議会にもそう言われました。でも、赤字でしょうがない理由が「全国の公立病院の7割が赤字だからだ」と言うんですよ。つまり、3割は黒字ですよね? しかも、うちは大阪という立地。人がいない田舎で、民間病院が成り立たないから公立病院を作ったというわけではない。民間病院も周りにいっぱいあります。
「人口密集地のうちが黒字じゃなくてどうするんだよ!」と半年くらい議会とも、病院事務局とも、院長先生達とも大喧嘩しました。だってお医者さん達が、「給料上げないと大学から良い人をまわしてくれないから給料をあげてくれ。そうでないと、医療崩壊が起こります」みたいなこと言うから、そんな病院は潰れてしまえと思いました。
誰も病院を経営していなかった
倉田市長:長いこと何度も病院と議論していて、全く嚙み合わない日が続きました。ある日、「経営は市役所がやっているじゃないですか」と言われたことがあったんです。で、「いえいえ、経営責任は院長でしょ?」という話になって、はたと気付いたのが「誰も病院を経営していなかった」ということ。
そこが解明されたので、うちからの繰出しは申し訳ないけど、年々減らさせてもらい、最終的にはゼロにさせてもらいますと伝えました。その代わり、「病院は何やってもいい、儲けるために必要だったら美容整形外科でもやってください、僕が全部議会とも調整しますから」と伝えて、院長には自分達で経営をしてもらうと約束してもらいました。
そこから病院の稼働率が上がっていき、ザーっと右肩で赤字が減りました。今は大喧嘩した故に院長とは仲良しなんです。
病院と交通は自治体がコスト改善できるポイント
加藤:何が経営改善のポイントだったのでしょうか?
倉田市長:公立病院は民間がやれない不採算部門があると言われていたんですけど、それはどこかと聞くと、「ER(救急患者の対応)」と言われるんです。民間でもERをやっているところはないのか聞くと、「あります」と答えるんです。結局、それ以外の部門がしっかりと黒字を出して、トータルでも黒字になっているんです。
だから、課題は「もっと黒字を出せる部門で、十分に稼ぐ努力をしていないこと」だという話をしました。これは一般的に言われることですけど、病院、あとは交通、この2つが自治体で大きなコストを垂れ流しがちな分野ですね。
加藤:福祉領域だとどうしても赤字を許容させてしまう傾向はありますよね。選挙にも影響する領域というのも、コストが出て行くまま改善が進まない理由かもしれません。
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 頑張った人が報われる 自治体の給与制度改革
第2話 7割の職員は「人事・給与制度改革」に賛成
第3話 飲み会での『人への評価』を制度に落とし込む
第4話 平社員の給与が部長を上回るケースが存在する
第5話 「公立病院は赤字で仕方がない」という神話
第6話 脳内に地域住民という上司が存在する