地方公務員の給料は安い。必要以上に節約すると人間の心は貧しくなる
樋渡氏:そういう時に大事なのがやっぱりね、一流のものに触れておかなければダメなんですよ、絶対に。人から奢ってもらってとかじゃなくて、良いものをちゃんと着て。そんでね、安くて良いものって世の中にありませんから、高くて悪いものはいくらでもあるけど。やっぱり高くないとさ、良いものじゃないもんね。つくづくそれは思うもんね。
だから何を言いたいかというと、そういうのに触れる人じゃないと、行政ってのはできないと思うよ。そういう意味で言うと、地方公務員の給料は安いもんね。あんな給料で良いものなんて買えないよ。
加藤:私も責任に対して安いと感じます。公務員の給料が高いという話とかよく、出るじゃないですか。
樋渡氏:馬鹿じゃないのって思うよね。だからやろうと思って道半ばだったんだけど、税収と給料を連動させようと思ったんですよ。税収が減ったらさ、給料を落として、増えたらさ、給料を増やしたって良い。そしたらもう自分のこととして頑張る。それをやろうと思ったんだけど、余りにも公務員の給料が安すぎて、さっき言ったように良いものが買えないわけですよ、節約すればするほどね。必要な節約ってのはあると思うんだよね。だけど、必要以上に節約すると人間の心って貧しくなるよ。『無駄』がないと、『無駄』が。僕は『無駄』なもんいっぱい買ってるもん、良く怒られるんだけどね。それと、公務員の数を減らせば、給料を上げても、「『総人件費』イコール『市民の負担』」は減る。また、議員も多すぎる。武雄市は人口たった5万人のところに400人前後の職員がいて、かつ、議員も24人もいる。給料を増やして、職員は200人、議員は10人くらいで十分。
そうそう、このサイフ、これは僕が買ったわけじゃなくて、僕がとっても尊敬している方からプレゼントしてもらったんですが、これねベルルッティの財布なんですよ。もう、持った瞬間さ、官能的だもんやっぱ。別に僕の趣味じゃないんだよこれ。ここに字が書いてあるのがヤダなとか思ったりして(笑)。でもさ、元々革製品好きということもあるんだけど、持った瞬間に一発で虜になった。もう官能的だもんやっぱこれ。嫌だった文字ですら、愛しくなった(笑)。これ30万近くするのよ。ヴィトンよりはるかに高いのね。だから、こういうのを身につけておくと、やっぱ肌感覚として、良いものを提供したいってなるもんね。うん。さらに言うとね、僕は貧乏性だから、この財布を少なくとも20年は使おうと思っている。そうなると、年間1万5千円だし。
やるかやらないか、見えるか見えないか
加藤:TSUTAYAももともと、カンブリア宮殿を見ていてピンときたと仰っていましたもんね。そういう肌感覚というか、アンテナみたいなものがあって・・
樋渡氏:そうね。だから後はもう、やるかやらないかだけだもんね。たまたま、路上で増田さん(TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社代表取締役社長)に会って、「やりませんか」って言ったら「承りました」って言うからさ。あのテレビを見ている人って、仮に視聴率10%と仮定すると1,000万人ぐらいいるんですよ。で、あの番組を見て代官山を訪れている人がその10分の1だとしても100万人はいると思うんです。まぁ、増田さんに挨拶したのは何人かいると思うんです。20~30人か、30~40人かは知らんけどいて、そんな中、僕一人だけが「やりませんか」って声をかけた。だから機会って実は均等にあるんですよね。それを掴むか掴まないかってのは、もう本人次第ですよ。
加藤:そのアクションの部分の差が出ているという事ですよね。
樋渡氏:そうです。あと、『見えるか見えないか』。それが本当に良い札かどうかっていうのが『見えるか見えないか』というのはすごく大きくて、『見える見えない』ってのは訓練なんですよ。『見えるか見えないか』ってのも訓練だし、『掴むか掴まないか』も訓練なんですよ。で、よく言われるんですね、「先天的なものですか」って。違います。全部後天的なものですね。
加藤:そこの訓練というのは、遡ると、かつて総務省で働いているときからずっと積み上げてきている中に・・
樋渡氏:あーもう、(その時から)訓練だなと思いますね。
加藤:なるほど。
樋渡氏:なんかね、もっと例えて言うとね、結構総務省の時に忙しかったからさ、ハードなところにいたからさ、4~5年経った時に自動的に通帳に1億円ぐらい貯まってた感覚ってのと一緒。そういうイメージ。同僚が突発性難聴とか日常時だったし、あの頃。
貯めようとかじゃなくてさ、もうなんか気が付いてみたらさ、苦しかったけど、こんなに貯まってるよねって。自信という貯金がずっと貯まってた。だから今も、何かをできないって思うことないもんね。
公務員は遊びに行った方が良い。その中の10人に1人ぐらいは行動するようになる
加藤:今のお話にも地方公務員の方が出てきましたが、公務員の方に対してアドバイスや提言みたいなものをいただけますか。
樋渡氏:遊びに行けばいいよ。日帰りで帰ってくるなって、出張行ったときは。だから、「2泊3泊泊まって来い」って言ってたもんね。それで酒飲んで色んな人と接してさ、それを持ち帰ってくれって。あとはやっぱし、僕はそうだったんだけど、よく公私混同って言われたんですよ。舛添さんも言われていると思うけど、僕は『公私一体』だと言ってたんですね。
『公』と『私』を分けるのは不可能だって。同じ人間だから。だから、公務員にも職員にもやっぱそうなって欲しんだよね。僕、今でもさ、これ仕事だか遊びだかわからないよね。境目を作るなって思う。よく公務員ってね、『オン』と『オフ』とかっていうんだよね。ずっと『オン』にしとけって。寝てる時だって『オン』だもんね。如何に疲れを取るかってのもさ。寝具もとても重要視するし。
加藤:それは、次の本当の『オン』のためにっていうことですよね。
樋渡氏:そう。だから、僕の場合はいつも『オン&オン』なんですよ。あとね、『ギブ&ギブ』。『ギブ&テイク』ってもう古い。とにかく自分の価値を与え続けるっていうのが前提です。与えれば与えるほど、情報とか人脈は入ってくるから。
加藤:そうするとまあ、実際に公務員の方には実際に色々と遊んで、色々と見なさいと。
樋渡氏:遊べや遊べと。
加藤:かつ、最終的にはそこからアクションを取ることが重要ということ・・
樋渡氏:アクションって言ったってなかなか無理で、やっぱり遊びに遊ぶとね、その中の10人に1人ぐらいは行動するようになるんだわ。
だから全員がなるってのは不可能。投資と一緒なんだよね。10個の案件が全部成功するのは絶対になくて、前にも言ったけど、プロジェクトでもさ、10のうち1個が大当たりすれば良い。やっぱりそういう風に国民は考えるべきだと思う。
加藤:全部が全部上手くいくなんてことは民間企業でもありませんね。
樋渡氏:絶対あり得ない。うまくいっても3割だもんね。うまくいくように頑張ってもさ、7割ぐらいを失敗しているもんね、やっぱり。だから、公務員に多くを求めるなって。
加藤:そこは許容して。
樋渡氏:許容って大事。僕なんてすごく許容されていたもんだから(笑)。こんなに言いたい放題言ってもさ。後は結果で済ますからって言ったらさ。
加藤:全部がうまくいくわけではなくても、病院の改革や図書館の成功でしっかりと結果を出しているというのが大きいですよね。
樋渡氏:大きいよね。人は見えるものでしか判断できないから、アクションをいっぱい起こさないと結果も残せないってことですよ。
加藤:そうですよね、1個やって1個うまくいくなんてそんな簡単にあり得ないですよね。
樋渡氏:あり得ない、あり得ない。僕がよく言われるのは、「お前1,000ぐらいやって、うまくいったのは2~3個じゃないか。」って。「いや、もう少し多いですけど」って(笑)。それでいいと思いますよね。でも武雄の場合は、おかげさまでそれが許容されたからね。僕みたいなのができたから。それは市民にやっぱ感謝しているよね、職員にも感謝しているそこは。
加藤:そうですよね。職員の方もどんどん図書館の仕事を進める中で、仕事を楽しくやれてきて、かつCCC社(TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)さん側からの信頼もどんどん厚くなっていくというお話をされてたと思うんですけど、やっぱりその中で得られるものってのは大きいですよね。
第1話 元キャリア官僚、政治家、経営者。いくつもの顔を持つ奇才
第2話 自治体はコストを投下しても良いが、うまくいかなければ責任を取るべき
第3話 地方公務員の給料は安い。必要以上に節約すると人間の心は貧しくなる
第4話 抜擢人事はエースではなく、人柄(ガラケー)
第5話 あなたは、結婚を公募でしましたか?