コラム

たたら鉄の積出港・安来の挑戦(島根県安来市)「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(191)」

写真①「和鋼博物館」にある原寸大のたたら炉

「和鋼博物館」にある原寸大のたたら炉

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[記事提供=旬刊旅行新聞]

 11月末、島根県安来市の観光モニターツアーに参加させていただいた。テーマは、日本遺産「出雲國たたら風土記」を安来から感じる旅である。

 物語の核になるのは、日本古来の製鉄「たたら製鉄」である。日本遺産エリアの安来市・雲南市・奥出雲町では、約1400年前から近世に至るまで、たたら製鉄が盛んに行われ、最盛期には全国の約8割の鉄がこの地を中心とした中国山地の麓でつくられていた。今でも奥出雲の地では、たたら製鉄の炎が脈々と燃え続けている。

 しかし、たたら製鉄は優れた鉄をつくるだけではない。原料の砂鉄を採取した跡地は広大な棚田状の田畑に再生し、良質の蕎麦や米の生産地に変えてきた。全国的に有名となった「出雲そば」や「仁多米」は、たたら製鉄による新たな産業創出の成果でもある。

 また、大量消費される木炭を供給する森林は、成木になる30年という期間を考慮し、年間に使用する木材の30倍以上の山林を確保して自然を破壊せず、永続的に循環利用できるような配慮が徹底していた。今でいうSDGsの考えを古くから実践してきたのである。

 2市1町(当時は6市町村)は、既に30年も前から「鉄の道文化圏」をテーマとする広域連携を進めてきた。今でいう広域観光圏や地域連携DMOのような機能を早くから実践してきたのである。

 今回のツアーは、中海に面した鉄の積出港として栄えた安来市単独の試みであった。だから、果たして全体ストーリーを完結できるのかという危惧もあった。

 しかし、安来市にはたたら製鉄の技術を継承し、ヤスキハガネのブランドで世界マーケットを掌握する日立金属の拠点がある。この会社が創設した和鋼記念館(現和鋼博物館)は、たたら製鉄の技術や産業社会システム、民俗などを研究・展示する総合博物館である。まさに鉄の道文化圏のゲートウェイともいうべき施設である。

写真②刀鍛冶の伝統を受け継ぐ鍛冶工房弘光

刀鍛冶の伝統を受け継ぐ鍛冶工房弘光

 もう1つ、安来市広瀬町西比田には、製鉄・鍛冶・鋳物などの守護神、金屋子神社がある。金屋子神の伝説は各地に残るが、白鷺に乗って安来市広瀬の地にある桂の木にとまり、この地に神社を創建したという言い伝えがある。

 安来は、鉄の積出港として大いににぎわい、海を介して全国の金物産地とつながっていた。港に直行する通りには、鉄問屋や回漕会社、銀行、料亭など多くの建物が立ち並び、往時のにぎわいを彷彿とさせる。

 今回、ツアーで回った中世山城・月山富田城は、奥出雲の鉄資源を掌中に収めようとした尼子氏の戦いの舞台となった城である。富田城のある広瀬町には、かつての刀鍛冶の技術を踏襲する鍛冶工房弘光や広瀬絣の藍染を行う天野紺屋など、たたら由来の生業も元気である。

 改めて、安来の観光のポテンシャルの高さと可能性を感じたツアーであった。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

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