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小泉進次郎と脇雅昭が語る今後の日本と公務員の役割(下巻)

小泉進次郎 脇雅昭5

プーチン、トランプ、金正恩、習近平を見下ろせるように

脇氏:ここからは質疑応答にさせていただきます。会場からも質問をさせていただければと思いますが、質問のある方はいますか?

 ではそこの方。

経済産業省勤務:2つ程あります。1つ目は、小泉さんはいつ総理大臣になりたいのか。2つ目は、誰が地方創生をやるべきだと思うか。国なのか、自治体なのか、民間なのか、住民なのか。

小泉氏:ありがとうございます。さすが、経産省らしく絞られていますね。

脇氏:そして、1点目は仕込みじゃ絶対に聞けないやつですよね(笑)。

小泉氏:仕込みじゃないってことが皆さんにもわかりますね(笑)。

 いつというのは、政治家には決められないと思います。ただ、「天の時」「地の利」「人の和」という『天地人』っていう言葉がある通り、その立場になって自分が耐えうるのかっていうことは考えています。

 例えば、いつもイメージするのは目の前にプーチンがいて、隣にトランプが座り、その隣に金正恩、さらに隣に習近平。この4人と面と向かって座った時に、自分が見下ろせていないといけないなと。それだけの自分に鍛え上げられるか。自分はどういうところまでいけるかなと。

 今回、自分が農林部会長になることは全く想定していなかったんですけど、この世界に来て本当に良かったと思うのは、自分の幅が広がったし、この中で目まぐるしく動く権力闘争もそうだし、そういったところの経験は本当に大きいですね。

うちの大将はああ言っているけど、ふざけるなよ

小泉氏:今日もしかしたら外務省の人がいるかもしれない。僕は外務省の皆さんには日本のプライドをずっと持ってもらいたいなと。去年プーチン来たじゃないですか。3時間遅刻ですよ。怒って欲しいですよね。ローマ法王とか、エリザベス女王はプーチンが遅刻しても待つかもしれないけど、日本はそんな国じゃないよと。3時間も待って、「ようこそ」と言う国じゃないよと。

 もちろん、総理はそんなこと言えません。だから、あのとき僕が見ていて想像したのは、「自分が外務省員で山口にいたら何をやっていたか」。僕が思ったのはね・・・「部屋の風呂の水を抜くな」と。

小泉進次郎 脇雅昭6

会場:(笑)。

小泉氏:いや、ホントに、ホントに。あと、水しか出なくするとか(笑)。なんらかの抗議の意思を外務省員として伝えるのが仕事で、その魂を持ってもらいたいよね。総理が「ようこそ」って言うのはいいと思うんです。だけど、その裏でカウンターパートになる職員同士の話では「うちの大将はああ言っているけど、ふざけるなよ」っていうことを誰か言ったのかなと思ってですね。胆力・・・それをひとりひとりの国家公務員には持ってもらいたい。日本を背負っているんだと。

自分が強烈に圧倒されるような人を、役所には支援して欲しい

小泉氏:2つ目の質問が地方創生ですよね。僕がすごく思うことは、日本はもっと個人に対して投資した方が良い。これは自分が内閣府政務官のときにも思ったんですけど、国家戦略特区を使って自動走行車の後押しをやっていたんですよ。とにかくガンガンやろうと。

 だけど、どうしてもね、「自動車業界がみんな合意のもとに動くなら」って発想なんですよ。そうじゃなくて、「やれるところに突っ走らせよう」、「やれる人にやらせよう」っていう発想が大事だと。もちろん、これは行政の中での公平性の観点もあるから、難しい部分もあると思うんだけど。

 僕の中で確信めいたものがある。日本は個人の力をもっと高めなければいけない。地方創生の人材も素晴らしい人が沢山います。いろんな人に会う立場ですけど、いつも僕が期待しているのは、僕のことを圧倒してくれる人と会いたいんです。有名人の中には、ほとんどいないです。だけども、地方にはいる。強烈に圧倒される人。そういう人たちを役所はしっかり支援をしてあげて欲しい。

 「なんでアイツにヒトやカネを突っ込むんだ」っていうのは地方の声でもあると思う。いわゆる町づくりは、「よそ者」「若者」「馬鹿者」じゃないとできないという言葉もありますけど、僕は本当にそう思う。そういった人たちに対する集中的な投資が、これからどこまでできるかが鍵だと思います。

日本は経営者の質を上げないといけない

小泉氏:経済の部分でも、日本は経営者の質を上げないといけないんだと思うんです。僕が最終的に、なんでこれだけ民間企業がお金を使わないのか。なんで、さっき名前を出した企業が、ああいった負債案件みたいなものを掴まされたのか。それによって会社が立ちいかなくなるのか。

 申し訳ないけども、突き詰めれば経営者の質ですよね。その経営者の質という部分で、日本は世界に伍していけるのか。共助っていう部分はすごく大切だと思いますよ、すごく大切で強化しなきゃいけないけれども、同時に、個の力を高めるということを意識して、教育や施策も考え直すべきじゃないかなと思います。

誰よりもリスクをとらなかったら、責任を果たせない

環境省勤務:小泉先生は今の世代だけでなく、将来の世代のことについても考えていらっしゃるように見えます。そういうことを意識されているのでしょうか。

小泉氏:ありがとうございます。うちの親父も、お爺ちゃんも、ひいお爺ちゃんも、政治家として生きてきた。それが世襲議員として、僕の初めての選挙ではものすごく批判された。

 でも、ありがたいことに当選させてもらって今があって、ありがたいことに日本で一番票をいただいている立場がある。そのお蔭で今の自分があると考えた時に、「誰よりもリスクをとらなかったら、責任を果たせない」と思っています。

 だから、TPPも野党時代からずっと賛成をしていて、神奈川県の農協の中央会から推薦ももらえない。そして、世襲批判もあるから、自分が選挙で負けた時は政治の世界から退出すべきだという思いがある。だから、僕は比例で立候補はしません。単独立候補という形で、小選挙区からしか立候補しない。負けたら終わり。

 そういう覚悟を持たないと、世襲批判もその通りだと。それは常に意識しています。この道を切り拓いてくれたひいお爺ちゃんは、トビ職の親方で、全身入れ墨が入っていたんです。大臣になったときに、入れ墨大臣って新聞に書かれてね。トビ職の親方が政治家になった。そのことに比べればね、自分はひいお爺ちゃん以上にリスクとらなきゃいけないですよね。だから、元はなにもないんだと、常にそう思っています。

地方公務員の人たちには、自分たちのことを過小評価しないでもらいたい

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農林水産省勤務:過去の対談の中で、国と地方の人材交流をこれまでの枠以上に積極的に行なっていく『現代版参勤交代』のような制度を作りたいとおっしゃっていました。その上で、地方公務員に求めるものは何でしょうか。

小泉氏:『現代版の参勤交代』を制度化したいという思いは今でも変わりません。もしも、この『よんなな会』がその母体になりうるとしたら、これからネットワークをどう形成して、それを毎年毎年どう高みにもっていくのか。

 皆さんご存知の通り、役所の中にはOB会ってあるじゃないですか。そういったものの比じゃない規模でできるわけです。もしあれだったら、次回が第10回ということで、現代版の参勤交代の一つの事務局的なハブとして、この『よんなな会』がどういう機能を果たせるのか、という議論をやってみても面白いんじゃないのかなと。

 僕は内閣府とか復興庁にいたから、霞ヶ関の役所の中にはかなり多くの地方公務員がいることがよくわかっています。中には本当は2年で戻らないといけないのに、ものすごく優秀で、頼られている人もいる。ある地方公務員の出向元の市長に、僕が電話をかけて、「大変申し訳ないけども、あと一年彼を貸してくれ」というお願いをしたことがあるんです。

 市長からは、「本当は戻したい」と言われたんですけど、「わかりました」と呑んでもらった。その彼はようやく地方へ戻り、この前、僕はそこに視察に行って、彼に会ってきましたよ。そういった形でね、地方公務員の方が霞ヶ関に来て、思いを持って仕事をしていたら、必ず地方へ戻っても、つながる縁ができると思うんです。

 地方公務員の人たちには、自分たちのことを過小評価しないでもらいたいと思います。特に人口規模が小さくなればなるほど、役所の存在って大きいんですよ。

 もう役所がなければ、町づくりから日々の生活から、いろんなことが成り立たない。そういった中で、「地方公務員はこうだ」っていう、世間で叩かれたりするイメージを『よんなな会』で一回ぶっ壊して欲しい。

 今までやらなかったことも含めて、地方公務員ができることっていっぱいあるはずなんです。そういう人材が出てくることが、僕は地方創生の中でも行政の皆さんの力はすごく大きいなと。自信を持ってください。

挨拶しませんか

脇氏:さっきから出続けていた、「残り1分」というカンペが出なくなりましたね(笑)。

小泉氏:残り何分なんだろう(笑)。ただ、最後に僕からひとつお願いがあります。どうか皆さんね、役所の中で、警備員さんとトイレ掃除の方に挨拶しましょうよ。僕はね、復興庁と内閣府にいた時に、それがすごく残念だったんです。まるで存在しないかのように、ほとんどみんな挨拶しないでしょ。小泉進次郎2

 だけど、僕はそれがすごくイヤで、一度会議の中でもあえて言ったことがあるんです。「皆さん、挨拶しませんか」って。僕にはそんな思いが子どもの頃からすごくあるんですよ。だから、中学校の時も学校の用務員さんとすごく仲が良くて、卒業式の日に式が終わったら、外に用務員さんがみんな並んで待っていて、「小泉、本当に卒業おめでとう!」って皆が涙を流してくれた。

 それで、内閣府の退任の日ね、当時、役所の8号館の警備員さんたちとすごく仲良かったんですけど、警備員さんから僕の秘書官に、「今日、私たち考えていることがあります」って耳打ちがあったんです。

 まず、役所の皆さんがお見送りをしてくれるじゃないですか。そうしたら最後ですよ、出口のところで、警備員さんたちがズラっと並んで待ってくれていて、「小泉政務官!お疲れ様でした。敬礼!」ってバッとやってくれて、それは涙が出そうになりましたね。

 ちょうどこの前バレンタインデーがありましたけども・・・

脇氏:ちょっと気になりますね、その話(笑)・・・。

会場:(笑)。

小泉氏:議員会館の、衆議院の第一議員会館の担当のトイレ掃除のおばちゃんがいるんですよ。もういつも仲良しで、その方がくれたのは明治のダークチョコレートだったんです。僕の中で一番心に残っているものの一つなんです。

 もし、自分の家族が用務員さんだったら、自分の家族が警備員さんだったら。ほとんどの役所の皆さんが無視をして、エレベーターに乗って来るんですよ。無視してトイレするんですよ。

 僕ね、本当に基本的なことだけど、その役所の文化は変えてもらいたい。『よんなな会』の皆さんは、やっていると思いますよ。やっていると思いますけど、あえて言います。これから警備員さんと用務員さんには、気持ちの良い挨拶をしてもらいたいなと思います。

脇氏:みんなぜひ。「じゃ!やります!」って方は拍手をお願いします。

会場:(拍手)

脇氏:ありがとうございます。みんな、これでやってくれますね。

小泉氏:良かったです。期待しています。本日の皆さんとのご縁、本当にありがとうございました。

脇氏:長い時間でしたけど、本当にありがとうございました。
※対談終了

 

-振り返ると、小泉進次郎氏から公務員へのメッセージとして多くの示唆があった。小泉氏から放たれる圧倒的な言葉の重みが会場を包み込み、良質の興奮を生み出していく。多くの公務員にとって刺激的な一日になったことは間違いない。

 『ミスターレク』『ミスター畜産』『ミスター土地改良』『ミスター国際認証』『ミセス国際規格』。この言葉の響きだけで、お目にかかりたいと思う面々である。その道のプロである『ミスター○○』として、志を持って働いて欲しいというメッセージは、公務員に対するエールでもあり、一方でプレッシャーにもなるのではないだろうか。

 公務員の志や、あるべき姿。これに対して、直接、政治家が提言することはあまりない。国会議員と官僚の関係は常に良好なわけではないし、それは官僚と都道府県の関係、そして、都道府県と市区町村の関係においても言えることだ。しかしながら、今回の『よんなな会』では政治家である小泉進次郎氏と、国家公務員、地方公務員が一堂に会して、国のあるべき方向を模索し、かつ、共有しているように思えた。

 ときに、『公務員叩きビジネス』という言葉があるほど、公務員は厳しい批判の対象となる。確かに、公務員は清廉潔白であるべきとは思うが、公務員も顔のある人間なのである。1700を越える自治体組織のどこかが不祥事を起こした時に、まるで鬼の首でもとったような行き過ぎた批判は、悪戯に士気の低下を招くばかりか、国益をも損ねているのではないだろうか。

 そんな中、間違いなく公務員にも新しい風が吹き始めている。この日、休日にもかかわらず、渋谷ヒカリエの巨大なホールで550人という、志の高い公務員が時空間を共有した。そして、この同じ日、私の知る限りでも、多くの公務員が全国各地で等しく研鑽に励んでいた。これらを勘案するに、現在の日本における公務員への評価は果たして適切なものであるのかと、今一度問うてみたい。

 戦前には西欧諸国に伍していくため、戦後には敗戦からの復興を主導するため、公務員は日本という国に大きく貢献してきた。いつの時代であっても、公務員には常に世の中を幸せにする力があり、そして、一方ではその責務がある。そんな、やりがいのある仕事を担うことのできる公務員が、この会を通じてさらなる一歩を踏み出せるのだとすれば、それは疑いもなく、国民の幸福に寄与することになるのではないだろうか。

脇雅昭

※本記事は全3話です

記=加藤年紀
株式会社ホルグ代表取締役社長。株式会社ネクスト(東証一部:2120)に2007年4月に新卒入社し、営業グループマネージャー、WEBプロモーションにおけるグループマネージャーなどを経て、2012年5月に同社インドネシア子会社『PT.Lifull Media Indonesia』の最高執行責任者(COO)/取締役として出向。子会社の立ち上げを行い、以降4年半ジャカルタに駐在。2016年9月に同社退社。
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