インタビュー

【日南市長 﨑田恭平氏:第5話】ちょっとやそっとのヒットやホームランを打っても変わらない

﨑田市長5

どこに生まれようがチャレンジができる社会を作りたい

加藤:ご自身の人生において、成し遂げたいということはありますか?

﨑田市長:僕は学生時代に児童養護施設でボランティアをしていて、親と一緒に暮らすことのできない、虐待を受けたり、借金を負うような家庭で育った子と触れ合っていたんですね。それで、みんなが同じスタートに立てる社会づくりがしたいということが原点です。

 どこに生まれようがチャレンジができる、頑張れる社会づくりというのを最終的にしたいので、「そっちの方向に集約するのではないか」と思っています。

加藤:ポジションを気にして何かをするのではなく、あくまでもご自身がやりたいことができる場所に、常に身を置かれていくということですね。

﨑田市長:もちろんそうです。その福祉の連携を作るためには、地域というか自治体が大事だと思ったので、今、市長をやっているわけですね。これからも政治だけをやるかはもちろん分らないですし、ずっと政治家はしない気がしますけど、まだ、そのタイミングというのは分らないですね。

一定の期間やり切ってやれなかったことは、ダラダラやってもできない

加藤:本当に活躍する市長の方ほど激務であったり、改革をしていこうとすると、いろいろな軋轢があったりして、2期3期で辞めていったりするところはある気もします。

﨑田市長:軋轢が生まれるから辞めることはないと思いますけど、一定の期間やり切って、それでもやれなかったことは、長年やっても、私の能力ではできないことだと思います。

加藤:それこそ、飯干前町長がお話されたように、次の世代に任せていくという・・・。

﨑田市長:そうですね。冒頭に言いましたけど、人づくり一本に絞ってそれをしていきたい。そういった意味では、日南で私がいなくても全く支障がないような、そういう状況を作りたいですね。

5万人規模の町だからできること

加藤:今、人口5万人規模の市町村で、日南市は圧倒的に目立っているのかなと思います。市区町村の中でも規模だとか場所の違いによって、自治体運営のやり方が変わるのだと思いますが、5万人の日南だからできるということはありますか。

﨑田市長:政令市とか県庁は大き過ぎて、目が届かなくなってしまいそうで、僕なんかに首長はやりきれないと思うんですけど、今は「中小企業の社長」みたいな感覚で仕事をしていますね。

 もちろん、通常の業務の中では、市長室に職員を呼んで会議をしますけど、気になったことがあると、ふらっと各課に行って、「○○さん居ますか、これ教えてください」とか、「あれどうなっていますかね?」ということもやります。そうやっていると、普段の課の雰囲気も分かったりするんですよね。

 全然、大企業のような大きな組織のマネージメントをやっていないんですね。だから、私自身が細かい政策や目標もかなりコミットしていきます。それが日南市のスピード感や柔軟性にも繋がっている。それは、この規模だからできる強みかもしれないですね。

 かつ、強みとして小さ過ぎないということもあります。何千人の町、村だと、もちろん頑張れると思いますけど、そこだと逆に職員数が少な過ぎて、何かを新しいことをやるにしても、なかなか大変だと思います。うちの市の規模ですら、いくつもの仕事を1人でやっている職員もいますから。

ちょっとやそっとのヒットやホームランを打っても変わらない

加藤:ただ、日南市のように5万人規模の市となると、その分小さな町よりも変化するのに時間がかかりそうですね。

﨑田市長:地方行政に関する専門家の方はこう言っていました。「何千人の村とか町だと、1個のホームランのような政策で人口動態の増減が変わったりすることがある」

 「5~10万人くらいの市が一番、ちょっとやそっとのヒットやホームラン打っても変わらない。打ち続けないと町は変わらないし、変わったという印象も持たれない」

 確かに、地方で話題に出る海士町、神山町、少し前は『葉っぱビジネス』で有名な上勝町とかは実際、全部何千人規模ですよね。

加藤:それでも日南がここまで目立ってきているのは、打ち続けているということだと思います。

﨑田市長:そういう意味では、日南市民の人たちや職員は、一番難しいところを攻めているのだなと思います。ただ、日南の実際は、大ホームランは一本も打ってないですよ(笑)。

例えば、隣の都城市は『ふるさと納税』が日本一ですし、小林市さんはあのフランス語に聞こえる動画を作った市ですよ。結構大ホームランを打っている自治体は県内、全国にもある中で、うちは分かりやすい大ホームランはないんです。

 クルーズ船だって、商店街の再生だって、IT企業の誘致も他の地域での成功事例もあるし、うちが初めてやったわけではないですからね。ただ、それでも注目してもらっているのは本当にありがたいと思っています。

加藤:少なくとも、企業誘致も商店街再生もホームランのように見えます(笑)。ただ、何かそういういろいろなものを引きつける日南の魅力を﨑田さんが引き出したり、作っているんだと思います。

ビジネスコンテスト優勝者が、その2週間後に大学を休学して日南に移住

﨑田市長:魅力ということでひとつ言われたことがあって、最近、『日南市の地域課題を解決する』というテーマで、大学生が対象のビジネスコンテストをやりました。そこで、名古屋大学の学生らが優勝して、2週間後に大学を休学して日南に移住してきてくれたんですよ。

 日南には広島カープと西武ライオンズがキャンプに来てくださるのですが、全国からそのファンの方が来てくださるので、宿泊場所が足りないという問題がありました。

 そこで、その学生たちが日南にゲストハウスをつくり、加えて、ファンと地域の方が触れ合える空間を作りたいというコンセプトで起業し、クラウドファンディングで資金調達に成功し2月1日にオープンするんです。

加藤:すごい行動力と、面白い切り口ですね。

﨑田市長:そういう、わざわざ日南に来てくれる若者がいるんですけれど、日南はカッコいい『兄ちゃん』世代というか、魅力的な30代・40代が多いと言ってくれるんですね。つまり、地域で頑張っている住民や、木藤さんたちのように外から来て頑張っている若い世代、それに引き寄せられて20代が来てくれるみたいなんです。

 一方、日南には大学がないので、若い子たちが外に出て行ってしまうこともあるのですが、それでも良いと思うんですよ。ただ、いつか能力を高めて帰って来て欲しいんです。子供たちが外に出た時に、「日南には汗かいて、歯を食いしばって頑張っていた先輩たちがおったな、力がついたら俺たちもいつか帰りたい」と思ってくれたら嬉しいです。

※本インタビューは全7話です

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