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総務省消防庁コラム1

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地域防災力の中核となる地域防災訓練指導員の養成講習会を消防団員対象に実施[八女消防本部広川消防署]

(記事提供=総務省消防庁 広報誌『消防の動き』

1 はじめに

 広川消防署が管轄する八女郡広川町は、福岡県南部の内陸部に位置し、面積37.94k㎡、人口19,626人(令和元年10月1日現在)と県内では比較的小さい町である。町の中心部を国道3号線と九州自動車道が南北に貫き、広川インターチェンジに近接するように工業団地や産業団地が整備され、その周辺には市街地を形成している。町の西部は農地が広がり、東部は中山間地が占めており、農業が豊かで町の産業を支えている。
 また、町を横断するように筑後川水系の一級河川である広川が東から西に流れており、その上流にはおよそ100万tの貯水能力を持つ広川防災ダムがある。
 広川町の災害については、過去に台風の襲来や集中豪雨による被害が発生しており、ひとたびダムの貯水能力を超える雨が降れば、下流域では、洪水、山間部である上流域では土砂災害が起こる危険度が非常に高い。
 広川町の消防団員は、200人で構成されており、平均年齢は33歳と比較的若く、約36%の消防団員が町外で勤務している。

図2

2 広川町の地域防災における現状

 広川町は、平成24年7月の九州北部豪雨を経験し、隣接する八女市において大規模な被害が発生したことを契機に防災意識が高まり、自主防災組織の設立に向けて町が行政区に働きかけ、平成26年度には33全ての行政区で自主防災組織が結成された。
 組織率100%を達成した広川町は、自主防災組織の訓練実績に応じて補助金を交付するなど、組織の活性化を後押ししてきたが、結成から5年が経過し設立当初から組織の活性化のため尽力してきた自主防災リーダーの入れ替わりや組織役員の高齢化に伴い、訓練意欲の地域格差などがみられるようになり、全ての自主防災組織がいざという災害時に機能するとは言い難い現状にある。また、下のグラフが示すように、消火栓を使用した消火訓練や応急手当訓練は繰り返し行われ、身近な工具を使用した救助訓練や安否確認訓練、避難所運営訓練、119番通報訓練、災害図上訓練などは全く行われていない。このようにマンネリ化した様子が伺われ、参加率の低迷に繋がっていると考えられる。

図3

3  「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」の制定を受けて

 近年頻発する災害から住民の生命、身体及び財産を保護するためには、消防団を中核とした地域防災力の充実強化を図る必要があり、平成25年12月に「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が制定された。この法律の第18条には、「自主防災組織等の教育訓練における消防団の役割」について規定されており、自主防災組織をはじめとする地域の防災組織が行う教育訓練では、消防団が指導的な役割を担うよう市町村は必要な措置を講ずるよう努めると定められている。常備消防機関としては、防災の専門機関として消防団が指導的役割を果たせるよう防災教育等を行う機会を設け、支援していかなければならない。そこで広川消防署では、広川町消防団員を対象に「地域防災訓練指導員養成講習会」を実施した。

4 地域防災訓練指導員養成講習会

 広川町消防団員を対象に実施した地域防災訓練指導員養成講習会では、部長職以上の37人を指導員として養成した。講習会は、全8時間の講習を4日間に分け、下表のカリキュラムに従い、それぞれの目的に応じて実施した。

図4

5 講習会を終えて

 今回の講習会を受講した消防団員は、自主防災組織の現状を再認識し、地域住民の防災に対する意識を変えたい、災害に強いまちづくりの推進に貢献したいという思いが芽生え、地域全体が参加する自主防災訓練のあり方について議論が深まるなど意識の変化がみられた。

図5

 今回の講習会を終えて、受講した消防団員にアンケート調査を実施したところ、以下のように今後の活動に積極的な意見が聞かれた。

・法律制定の背景を学び、消防団に求められる広範な活動内容を知り、責任の重さを実感した。
・これまで発生した大規模災害時の消防団の活動内容をはじめて知った。
・地域コミュニティの重要性を知り、今後の自主防災活動の活性化に生かしたい。
・自主防災活動にいろいろな訓練を取り入れてみたい。
・もっと災害について学び、指導的立場として地域で活躍したい。

 今回の講習会において、各地域特性に応じた訓練の種類と手法を学び、今後、効果のある訓練の考案と推進が消防団に期待される。

6 地域での取り組み

 今回の講習会を受講した消防団員により、新たに習得した防災知識を地域に還元する最初の取り組みとして住民参加型の災害図上訓練が行われた。地図を囲み住民と消防団員が地域の防災について意見交換することによって、住民の防災への関心を高める第一歩を踏み出すことができた。住民を指導する消防団員自身にも、地域防災の一躍を担いたいという意欲が垣間見られたことは今回の講習会の成果でもあり、今後更なる地域防災力の発展が期待される。

図6

7 おわりに

 気候変動の影響などにより、激甚化する災害が毎年のように発生する昨今、これまでの災害対応では限界があることは明らかである。常備消防力が不足するような災害において、住民は自助、共助の重要性を理解しているものの、自主防災訓練への参加率は低下傾向にあり、災害への関心や知識があっても、実際の行動には結びついていないのが現状である。住民が、身近で起こりうる災害を“自分事”としてとらえ、意識・行動する必要があり、これからは、住民の「意識啓発」から「いかに行動の変化につなげていくか」が重要であると考える。
 こうした社会づくりが求められる中、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が制定され、この法律が目指す「住民の積極的な参加の下に消防団を中核とした地域防災力の充実強化を図り住民の安全確保に資する」という目的を達成するため、私たち常備消防がこの重要な役割を担う消防団員をこの法律の目的に向かって確実に育成していかなければならない。地域に密着した消防団員の指導・育成が、住民の防災に関する意識を高め自発的な防災活動への参加を促進するとともに、今後は地域の防災活動の担い手となる、少年消防クラブや女性防火クラブ等の人材育成・教育訓練においても指導的な役割を担えるよう導いていかなければならないと考えている。
 今回の講習会は、地域防災の充実強化を図るため消防団員を指導・育成する使命を再認識するものとなった。これからも、新たな地域防災の仕組みづくりのため、実効性のある方法を練りながら、取り組みを継続し将来にわたり消防団員を支援していく。

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