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後輩・部下の育て方

HOLG編集室

著者が語る「後輩・部下の育て方、関わり方  公務員の新・育成術  思考力・判断力を伸ばす7つの着眼点と実践 」(齋藤綾治)

(文=元・武蔵野市 齋藤綾治)

 このたび、育成をテーマとした本『後輩・部下の育て方、関わり方  公務員の新・育成術  思考力・判断力を伸ばす7つの着眼点と実践 』(公職研)を書かせていただきました。

 育成は、日々の仕事の中に身近なものとしてありますし、「OJT担当になった」、「職場でベテランと言われる立場になった」、「係長としてチームをリードする」、あるいは「課長となって職場をマネジメントする」、などという場合にも、強く意識するものです。

 でも、「育成って一体何を育てるものですか?」とか、「育成って、どんな関わり方が必要なんですか?」と改めて問われると、なかなか言葉が出てこないのではないでしょうか。

 育成力の有無は、先輩や上司としての力量にも、管理職のマネジメント力にも大きく影響します。

 本書をきっかけとして、軸と意図を持って育成に取り組むことのできる、育成力ある上司、先輩職員が増えてくれることを願っています。

 ここでは本の中からいくつかポイントをお伝えしますので、ぜひ日々の実践に活かしてみてください。

「何を育てるのか」〜思考力・判断力を伸ばす7つの着眼点

 自治体の仕事では、さまざまな人の意見を調整しながらまとめ、合意を得て、仕事を前に進ませていくことが日々繰り返されています。調整と合意形成の重要度の高さは、自治体仕事の特徴とも言えるものです。

 そしてこの過程をよく見てみると、職員が「どう考えるのか」「どう判断するのか」と問われる場面というものが、数多く出てくることに気がつきます。

 その例は、住民へ説明する場面や、他課や事業者などと連携する場面、庁内での予算査定の場面、議会での答弁の場面など、挙げだしたらキリがないほどです。

 これらの場面で、職員がしっかりと伝えることができるか、説明することができるか、そして受け答えすることができるかは、仕事の成果を大きく左右します。
 もし、対応する職員の思考力・判断力が弱ければ、うまく伝えられず、理解は得られず、合意を得ていくことも叶わなくなってしまうのです。

 大切な後輩や部下が、確かな軸を持って思考力・判断力を伸ばし、数多くの調整や合意形成の場面で力を発揮し、大事な仕事を前に進められる力をつけていくこと。これが「何を育てるのか」の答えです。

 本書では、日々の業務の中で思考力・判断力を育てていくためのポイントを、7つの着眼点としてまとめています。

(1) 主語を使い分ける~「私」「課(部門)」「自治体」、 3つの主語で捉える
(2) 時間軸を意識する~経緯を把握し未来へつなぐ
(3) 優先順位を決める~制約のなかで何を優先すべきか判断する
(4) 全体最適で考える~「自治体」を主語に、視野を広げて考える
(5) その先を考える~継続価値があるものを組み立てる
(6) バトンリレーする~前任から引き継ぎ、後任へ託す
(7) 言葉を磨く~理解と合意を生み出すために

 思考力・判断力は、職場における対話によってこそ、磨かれます。
 7つの着眼点を使って、ぜひ後輩(部下)との対話をしていってほしいと思います。

 ここでは、例として(1)「主語を使い分ける」を取り上げて説明しますので、参考にしてみてください。

「何を育てるのか」〜主語を意識するだけでも、効果的な育成ができる

 日本語は主語をあいまいにしたまま会話をすることが多いものですが、「私」「課(部門)」「自治体」の3つを意識することは、業務を俯瞰して捉える力、立場を使い分けながら判断する力を磨く、実践的なトレーニングになります。

・ 課長から課の成果を問われているのに、自分(私)の取り組みだけを報告してしまった。
・ 課の代表として住民に説明しているのに、私の個人意見だけを述べてしまった。
・ 自治体として優先すべきかを判断する場面で、課の都合ばかりを主張してしまった…

 このように、主語がずれたままの会話は議論が噛み合わず、すれ違いを生み、残念な結果を招いてしまいます。

 「私」の意見を言うところ、「課(部門)」としてのスタンスを述べるところ、「自治体」としての方向性を伝えるところなど、適切な主語を使い分けながら考える力を身につけることは、正しく伝える場面でも、相手の理解を得る場面でも必要とされる、最も重要な育成ポイントです。

 主語を意識した対話を取り入れることは、育成の効果をぐっと高めてくれますので、ぜひ実践してみてください。

「どのように関わるのか」〜育成は聴き、理解する関わりから

 育成においてもう1つ重要なこと、「関わり方」についても触れておきます。
 育成の場面では、つい「伝えること」に意識が向いてしまうものです。

 しかし、「あれを伝えなくちゃ」「これも伝える必要がある」なんて、自分が伝えることで頭の中をいっぱいにしてしまうと、相手のことを理解する余力がなくなってしまいます。

 伝えることは準備不足でもかまいませんので、まずは後輩(部下)を理解することを大切にしてください。理解から始める関わり方が、育成の重要なポイントです。

 理解しないままでは伝え方も一方的になり、効果が見えず、負担感ばかりが増してしまいますが、理解できれば、相手が必要としているものが見えますので、効果的な関わりができるようになります。

 そして、理解するためには、「聴く力」が必要になってきます。

 育成者は、「聴く力」を伸ばしていきましょう。

 本書では、コーチングのスキルから、ペーシングやオープンクエスチョン、承認、フィードバックなどについて紹介しているほか、「仕事」を聞くのではなく「人」を聴く、「意図」「意味」「想い」を聴いて後輩(部下)の強みを発見する、といった聴く力をつけるための実践スキルを紹介しています。

 育成はまず聴くこと、そして理解することから。

 このことは、ぜひ頭に入れておいてください。
 聴く力は強力です。その効果をぜひ実感してほしいと思います。

育成の最大の喜びは、ずっと相談し合える仲間を得ること

 育成というと、育成者があらかじめ用意したものを教える。というイメージを持ってしまう人も多いのですが、そのイメージは取り払ってしまいましょう。

 後輩や部下の声を聴き、問いかけて、思考力・判断力を伸ばしていく関わりを続けていく。これこそが育成です。育成者にもわからないこと、判断の難しい課題も話題にしながら、後輩(部下)と一緒に考えていきましょう。

 後輩(部下)に考える力、判断する力がついくると、それまでの育成する者・される者という関係から、相談し合える仲間へと、お互いの立ち位置が変わっていきます。この関係の変化はとても嬉しいものです。やがて別々の部署で働くことになってもずっと相談し合える仲間が得られること。これが育成者にとっての最高の喜びなのです。

 多くの職員が、育成という関わりを通して、ずっと相談し合える仲間、互いを磨きあえる仲間を増やしていってほしいと願っています。

著者紹介

後輩・部下の育て方HPプロフィール写真

齋藤綾治氏

株式会社といろ代表取締役。1994年東京都武蔵野市役所に入庁。総合政策部門での全体プランニング・総合調整や、スポーツ部門でのイベント企画・実施、福祉部門での困窮世帯ケースワークをはじめとして、コミュニティ、文化、教育、保育、地域福祉など、自治体業務を通じて多様な人の生と生活に関わり、俯瞰と対話によるまちづくりに従事する。「武蔵野市第五期長期計画(平成24年4月)」の策定をはじめ、数多くの計画策定業務にも従事。仕事を続けながらコーチングを学び、国際コーチング連盟認定 Associate Certified Coach(ACC)、Gallup認定ストレングスコーチ取得。人の強みに着目したマネジメントやコーチングの実践を重ねる。2012年より生活福祉課長、地域支援課長、生涯学習スポーツ課長、オリンピック・パラリンピック担当課長、市民活動推進課長を経て、2020年4月、武蔵野市役所を離れ独立。現在はコーチング、ストレングスコーチングをベースとして一人ひとりの能力開発を支援している。

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