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ナイトタイムエコノミーの終焉【トラベルスクエア】

松坂氏コラム素材

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[記事提供=旬刊旅行新聞]

 尾道から老夫婦が上京する。娘や息子たち、それに孫に会いに来るのが目的だが、歓迎されると思いきや戦後景気でみんな忙しく、邪険に扱われる。「お金出してあげるから、熱海にでも静養に行ったら」などと放り出される。仕方なく出掛けてはみたものの、宿の隣の部屋では社員旅行か、夜通しの乱痴気騒ぎ。

 夜も眠れず、朝まだき、港の突堤で笠智衆と東山千栄子の夫婦が人生を語り合うシーンは、日本映画の中でも屈指の名場面と言われる。名作「東京物語」からの引用だ。

 何を言いたいかというと、この映画公開の1953(昭和28)年から、旅館では大宴会の喧噪と個人保養客の葛藤があったということだ。

 ありがちだった温泉地での大団体旅行。飲めや歌えの一気爆発型の消費は、普段の働きが大変でそのストレス発散の意味もあったのだと思う。

 このころから、1990年代半ば、バブル崩壊、官官接待自粛まで、旅館業も含めアルコールを扱う業態は、ことごとくナイトタイムエコノミーの恩恵に浴してきたのは間違いない。

 しかし、このコロナ禍がそれを破壊してしまった。既に大都市ではアルコール提供を伴う業態の営業時間制限が始まっているが、それでなくとも、年末の書入れ、忘・新年会はほぼ壊滅状態だ。居酒屋業態に詳しいベテラン外食ジャーナリストは、これで居酒屋全体の4割近くが消滅するのでないかと予測する。もちろん、我われリゾート旅館にとっても、由々しい事態だ。

 それでは、ワクチンが配布され、コロナ騒ぎが一段落したら、前と同じく「どんちゃん騒ぎ型」の需要は出るかというとそうはならない。

 これは単なる「風俗」の問題ではなく、夜にお金を使う習慣が消えていくということだと思う。もっとも、もしかしたら回復が早いかもしれないインバウンドのナイトタイム消費促進はあるかもしれないが、僕は社会全体が、もう「夜は地元やお家で過ごそうよ」となるのではないか。

 あれだけ「24時間戦えますか?」で頑張った世代も、今や「24時間立っていられますか?」だものね。働き方改革も一方にあるし、基本、夜、稼ごうというのは難しくなる一方だろう。

 コンビニも居酒屋もカラオケも同様だが、夜の享楽、便利さの価値の代わりにどの業態がどんな提案をしてくるのか、それが僕のこれからの研究テーマだ。ナイトタイムエコノミーからデイタイムエコノミーへのシフト。

 我われ業界は、他の産業では持ちえない「美しく、快適な夜」という価値を創造できると、僕は信じている。「東京物語」の老夫妻の悲劇はもう2度と繰り返されることはないだろう。

松坂健
オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

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