【八幡浜市役所 高倉万記子氏】システムのスペシャリストが創出した役所の外に広がる輪(4/5)

仕事の強みと意識していること

加藤:因みに、ご自身の仕事における強みは何だと思いますか。

高倉氏:色んな人と仲良くなれると言われます。保険料の督促をしていても、仲良さそうに話していると先輩に言われます(笑)。だからか、SNSを使ってどんな立場の人とも繋がりを作ることは得意みたいです。

加藤:色々な立場の人とうまくコミュニケーションを取るということは、とても大事ですよね。

高倉氏:田舎の役所って結構、「国が・・」とかって愚痴を言う人もいるんですけど、実際「国」と言っても、国の中には内閣官房もあれば厚労省もあるし、その中でも真剣に地域や国民の事を考えている人は沢山いるんです。私としては、同じような想いというか、目的を持った人同士で仲良くなって世の中を良い方に動かしていきたいと感じますね。

加藤:素晴らしいお考えですね。因みにお仕事をされている中で意識されていることは何でしょうか。

高倉氏:1つは、やはりコミュニケーションのところで、電話上でも柔らかい雰囲気を出すとか、話を楽しくするようなネタを仕込んでおくとかも気を遣っていますね。元々、コミュニケーションが苦手なのもあって、そういうことはかなり悩んで会得した技でもあります。

 もう1つは物事をなるべく想像力を働かせ、広い視野で、かつ多面的に見ることです。国が地方自治体に対して何か通知を出したとします。その時に、「何故、そうやろうとするか」と意味や背景を考えたりですね。

自治体の職員が活躍するには

加藤:今、地方自治体の注目度が高まっていると思います。もっと、職員の方が活躍する上で、どうしたら良いと思いますか。

高倉氏:自治体の中だけでなく、外の世界を知っておいて欲しいです。国への愚痴を言うだけで終わらせるのではなく、じゃあどうしたらよいのか、現場をよく知る自分達が意見を国に届けて、良い制度、良い仕組みを作っていく。これからはそんな時代が来るべきだと思います。

 ただ、難しいことは、外に出ていく人が認められるのは、中で仕事している人がいるお蔭だと思うので、その人だけ褒められるのもちょっとおかしいと思いますし、かと言って、外に出ていく人に対して批判を浴びせるというのも、また違うかなと思いますね。

加藤:外と中でそれぞれ活躍されている方がいて、ここは温度差があると聞きますよね。そこが、お互い尊重し合えるといいですよね。

 因みに、役所の中でコストカットを実現される人は、大きな活躍をされていると思うんですけど、そういう事例について、表に出てきていない人も沢山いると思うんですよね。そういう人ってもっと評価されるべきだと思うんです。

 財政問題は今、地方自治体の至上命題みたいなものだと思うんですが、財政難は歳入増やすか、歳出減らすかの2択でしか実現ができなくて、歳入を増やすことは簡単にできることではないと思うんです。

 だから、民間の企業再生なんかもそうですが、確実なものは、まずコストカットだと思っているんですけど、この価値があまり見出されていない気がします。

 そういうことを成し遂げている人が本当は沢山いる筈なので、もっと称賛されて、その人が良いことをしているんだと認められて欲しいですね。そして、その事例を他の自治体にナレッジとして伝えられると良いと思うんですよね。コストカットは再現性が高いので。

高倉氏:職員の風土としては、コストカットをすると、お金が欲しい役所内の事業部からも、住民からも恨まれると感じているんですよね(笑)。だから、組織内部も楽になるコストカットができると一番良いと思っています。例えば、人に代わってシステムがやることになるというのが、まさにそれですね。

 マイナンバーの利用についても、担当部署と協力するときに、システムが勝手にやってくれるようになるからという話で、メリットを伝えた上で理解してもらって、庁内でも気持ちよく動いてもらおうとしていました。

高倉万記子2

全国の自治体で同じシステムを利用することはできないのか

加藤:システムでいうと、各自治体が似たようなものを開発しているじゃないですか。それは一元化できないんでしょうか。

高倉氏:そう、それもそうなんですよ。法改正に対応する時にそれぞれの仕組みをそれぞれで改修するのではなくて、1か所にする方が圧倒的にコストは抑えられるんですが、それは国も悩んでいる問題ですね。

加藤:例えば、総務省等が取りまとめて契約をして、それぞれの自治体の利用量や財政規模等のルールに応じて費用分担することはできないんでしょうか?

高倉氏:実は、後期高齢者広域連合のシステムは国でシステムを開発して、全国で使われています。それは凄く画期的なことで、その後に国民健康保険のシステムも同様に作る予定で利用はこれからですが、あまり進む方向に行っていないとか。

 理由としては、他のシステムとの連携ができなかったり、一部の機能が足りないと聞いてます。これらの課題を解決しないと他の業務もなかなか進まないでしょうね。

 個人的には、かなり重い課題だと思うのが、発注者である国は実際の利用者ではないので、システムの仕様を決めるのも、細部でうまくいかない部分があるんですよね。

加藤:そういうところに、高倉さんみたいな現場でのシステムの使われ方がわかっている方が入って、細部を一緒に詰めたら実現できないんでしょうか?

高倉氏:できると思います。実は、最近、大きな政党のある人達が「クラウドでのシステム導入を進める為にはどうしたらよいのか」と考えていて、それを知人経由で相談を受けた時に、まさに、「自治体の現場の人達がボトムアップで要件定義をしたらいいんじゃないか」という提案をしました。

 ただ、情報関係のベンダーさんからの抵抗はあるとは思うんですけどね(笑)。

加藤:今まで使っているベンダーさんがいるから、そことの契約を切ることになってしまうので、波風が立ってしまうということでしょうか。

高倉氏:はい。なので、クラウドでのシステム構築を反対するベンダーさんも結構多かったんじゃないでしょうか。

加藤:ベンダーさんから見たらそれが恐いからということが大きい理由なんでしょうか?

高倉氏:はい、まとめて発注されたら食い扶持が減ってしまいますからね。ただ、今は人手も足りないでしょうし、制度対応も複雑化していますし、反対の声も小さくなっているんじゃないかと思います。

加藤:千葉市では「ちばレポ」という住民参加型の町づくりを促す仕組みを作っています。

 ただ、以前に千葉市の熊谷市長とお話させて頂いた時にお聞きしたのですが、あれはクラウドで作っているので、千葉市以外の町もアカウント単位でお金を払えば使えるということだったんですが、そういうのを他の市から使いたいという話はないらしいんですね。

高倉氏:はい。各地が似たようなものを、自分達の名前をつけてやっているんですよね。

加藤:ここも、実際に全てのシステムの統合が出来たら、もの凄く大きなコストカットができると思うんです。

高倉氏:はい、凄い金額です。だからこそ、変えづらいのかもしれないんですけどね。土木関係って地場にあるじゃないですか、でもITのシステム関係って中央にあって、そこにお金が流れちゃうので、少なくとも、その地域で自治体のシステム開発ができるような会社がなかったり、中央の会社やその支社等で働いてる住民もいないような自治体にとっては、システムのコストカットはやらざるをえないと思うんですけど。

加藤:発注してお金払う立場にいるのは自治体ですよね。地場のITベンダーさんって建設業界等に比べて、政治的な力や色合も強くない分、今までのしがらみも弱い気がします。それでも仮に契約を継続しない場合に、何か問題は起きるのでしょうか?

高倉氏:地場の会社だとあまりないかもです。国レベルの提案をする会社の場合は、全国一括の仕組みを公募したとしても、そこに乗って来なかったりとか、値段を高止まりした内容を提示して来ることはあるかも知れません。

 あとは、自治体がシステムを作ると、大体5年ぐらいでリプレイスしていくことも多いんですけど、その時に受注している会社以外が手を上げなくなったりとかですね。

加藤:リプレイス時に手を上げないというのは、1つの会社だけが選ばれて、そこだけがノウハウを持っているので、他の会社から見て参入障壁が上がるということですか?

高倉氏:そうですね。そういうことを考えると、国が3社ぐらいから、それぞれ1つのシステム、つまり合計で3つのシステムを開発してもらって、自治体がその中から好きなものを選ぶことができると良いのかもしれないですね、電気会社を選ぶみたいに。「今年はこれ」とか「来年これにしたいな」とかって、簡単に乗換ができるようなイメージです。

加藤:なるほど、仮に3社分のシステムと、その3つが連携するための仕組みを開発した場合の総額でも、約1,700ある地方自治体がそれぞれ開発をするコストに比べたら相当安そうですよね。

高倉氏:はい。その流れの場合、沢山のユーザーを抱えたシステムはそれなりに良いものになっていくと期待できそうです。期待させてください。

 セキュリティに関する人材は地方に1割しかいないと言われていて、一方で国内外の脅威が増す中、今以上に対応していかないとはいけないと思うんですよね。そういった視点はどうしても地方は弱いものですから、その点は中央が主体的に進めていくことで、地方で使うシステムにも設計から運用まで、よりセキュリティを確保した取り組みが進むことも考えられます。

 大手ベンダーさんが有利になりそうな話ですけど、といって地場ベンダーを切り捨てるわけでなく、地場ベンダーも運用等で自治体と一緒に生きていければと思いますし、セキュリティはじめスキルの向上も進んでいけばと思っています。

最終ページ:ほとんど全部の住民サービスが電子化できる

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2017/03/04

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