(記事提供=総務省消防庁 広報誌『消防の動き』 )
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1 取組の背景
横浜市では、平成30年中に702件の火災が発生しており、建物火災の件数が全体の60%の421件で、そのうち住宅火災件数が65%の275件を占めています。
火災による死者23人のうち、17人が住宅火災による死者(放火自殺を除く。)となっており、住宅火災の死者(放火自殺を除く。)の12人(70.6%)が、65歳以上の高齢者となっています。
住宅火災の出火原因の上位は、「こんろ」63件(23.0%)、「たばこ」46件(16.8%)、「放火(疑いを含む。)」34件(12.4%)、「ストーブ」16件(5.8%)、「配線器具」15件(5.5%)の順となっており、原因に特化した住宅防火対策の普及啓発が必要だと考えています。
また、少子化が加速する中、将来の地域の担い手となる子供たちの防火・防災教育は、ライフステージに応じて「自助」から「共助」への継続した啓発が必要であり、特に幼児に対しては、楽しみながら防火・防災を学び、興味を持ってもらう取組ができないか検討してきたところです。
こうした背景の中、横浜市戸塚消防署では住宅防火対策の普及啓発にあたり、署内に消防音楽隊経験のある職員がいることから、子供たちに歌や踊りを覚えてもらい、子供を通じて、子育て世代をはじめ様々な世代の方々に対して防火・防災意識を持ってもらおうと火災予防ソング「それゆけ!キッズ消防隊」を制作することにしました。
2 火災予防ソング「それゆけ!キッズ消防隊」の誕生
この「それゆけ!キッズ消防隊」は、住宅火災の原因の上位である「たばこ」「こんろ」に加え「火遊び」を歌詞に取り入れた火災予防ソングです。
この曲の作詞・作曲・歌唱は消防職員が担当しました。作詞は、入庁2年の消防職員が担当し、住宅火災について、わかりやすく、かつ楽しんでもらえる歌詞になるようにと、同期の職員や友人の知恵を借りて作成しました。作曲・編曲は、消防音楽隊経験のある職員が担当し、ラテン系と戦隊系の2つの楽曲を作成し、その両方を保育園の園児たちに聴いてもらい、園児たちの意見で戦隊系の楽曲に決まりました。
ダンスについては、「せっかくよい曲ができたので、踊りも付けてはどうか。」と、横浜市立川上保育園の保育士が園児たちとともに作りあげました。
そして、イメージイラスト(図1)も、同保育園の絵の得意な保育士が担当し、子供たちが親しみやすいイラストのポスターやのぼり旗、イラストをモチーフとしたペーパークラフト、ハンドタオル、缶バッチ、コースター、撮影用顔出しパネル等を活用して広報を行っています。また、防災訓練や各種イベントに参加した子供たちには、火災予防の三つの約束事を記載した「キッズ消防隊隊員証」を交付しています。
3 普及に向けた取組
普及に向けた取組としては、広報用のDVD映像を、横浜市消防局予防部予防課の協力で作成し、各消防署に配布しています。
また、横浜市戸塚消防署では、市内の市立保育園(77対象)をはじめ、区内の私立幼稚園や保育園、小学校の放課後教室(100対象)に配付するとともに、動画共有サイトYouTubeに投稿し、9か月で視聴回数が100万回を超え、他都市の幼稚園や保育園等からも問合せをいただくなど、広がりをみせています。
火災予防ソング「それゆけ!キッズ消防隊」の動画をご覧になるには、YouTubeで「キッズ消防隊」と検索するか、二次元コードを読み取ってください。
さらに、消防職員が幼稚園や保育園に訪問し、カリキュラムに取り入れていただくよう依頼したことで、この曲を一緒に歌い踊り、多くの方々に知っていただけるようになりました。
横浜市立川上保育園でのイベントでは、歌唱を担当している横浜市消防音楽隊の職員が歌を披露し、園児たちも楽しそうに歌い踊っていました。
夏祭りや区民まつり等の各種イベントでこの曲をかけると、子供たちが一緒に踊りたいと駆け寄ってきてくれて、イベントに来場した市民の方々も一緒になって楽しんでくれました。
そのほか、「それゆけ!キッズ消防隊」の歌詞とイラストをモチーフにした紙芝居も作成し、保育園等の防災訓練で実施しています。 取組に参加している消防団員は、「子供たちと一緒に「それゆけ!キッズ消防隊」を通じて、これまで関わりの少なかった子供たちとの交流を持つことができて本当に楽しいです。」と話してくれました。
4 「火災予防ソング」から「オリジナルストーリー」へ
幼児向けの取組が更に進化し、「それゆけ!キッズ消防隊」をモチーフとした、火災予防オリジナルストーリー「みんな森の仲間とオオカミのサイレン」を現職の消防署長(当時)が書き下ろしました。
物語では、「それゆけ!キッズ消防隊」のキャラクターやはしご消防隊や航空隊、水上消防隊などの様々な部隊や隊員が登場し、幼児から小学校低学年までの子供たちに興味を持ってもらえるものとしています。また、物語を通して、コンロや火遊びによる火災への注意喚起や住宅用火災警報器の設置促進のほか、災害時は、みんな(地域)で協力することの大切さ(共助) や日頃からの訓練の重要性を伝える内容としています。
このオリジナルストーリーの朗読会も行っており、子供たちの創造力を育み、防火・防災についての動機付けができればと考えています。 物語のイメージイラスト(図2)は、「それゆけ!キッズ消防隊」のイラストを担当してくれた保育士が、原作者である消防署長の想いを聞き、描いてくれたもので、イベントなどでポスターとして活用しています。
横浜市立汲沢保育園で行われた朗読会では、園児たちが、登場人物に扮した消防職員や消防団員の迫真の演技?に笑ったり、ビックリしながら目を輝かせて話に聞 き入ってくれました。
この朗読会は、幼稚園や保育園のほか、各種イベントでも実施し、子供たちだけでなく幅広い世代の皆さんにも聞いていただいています。
5 おわりに
この取組を通して、保護者等からは、「子供は、キッズ消防隊のことが大好きで毎日のように動画を見ています。」「朗読会は楽しかった。また、参加したいです。」「子供からコンロを点けっ放しにしたらダメだと言われます。」などの感想をいただき、火災予防に対する注意喚起につながっていると感じています。
すべて職員の手づくりによるこの取組は、職員の個々の能力を十分に引き出しただけでなく、消防署という部署を超え、区役所や保育園、地域などとともに創りあげたことに特徴があります。
また、消防団員が新たな領域で地域に貢献することにより、モチベーションの向上や、消防職員と消防団員が連携して取り組むことで、これまで以上に顔の見える関係の構築ができたものと考えています。
現在も動画共有サイトYouTubeの視聴回数は伸びており、100万回突破を記念して、ダンスの踊り付けを担当してくれた横浜市立川上保育園の園児たちに、横浜市戸塚消防署長から感謝カード(図3)を贈呈しました。
贈呈式では、はじめは緊張していた園児たちも、キッズ消防隊の曲がかかると、満面の笑みを浮かべながら元気に踊ってくれました。
現在、オリジナルストーリーみんな森シリーズの第2弾として、台風や豪雨など、風水害への注意喚起をテーマとした「みんな森の子供たちとアウル爺さん」を書き下ろしていますので、今後の展開にもご期待ください。
これからも、「それゆけ!キッズ消防隊」の取組を通して、将来の地域の担い手の育成や、様々な世代の方々の防火・防災意識が高まることを願い、安全で安心な街づくり・人づくりを進めていきたいと思います。
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