記事タイトル:図書館員が選ぶ文学賞「本の甲子園」開始へ 発案の作家が抱く危機感
https://news.yahoo.co.jp/articles/d4720b4add8cb919bc30eceef970533c9f394862
(文=西村 飛俊)
さて、作家の今村翔吾氏が発案した「本の甲子園」が始動します。全国の図書館員が選考委員を務めるこの新しい文学賞は、一見すると出版業界のニュースですが、よく見ると大変興味深い仕組みが隠されています。この取り組みが持つ意味を見ていきたいと思います。
「甲子園」が示す地域ブロック制――ご当地作家にスポットライトが当たる仕組み
この文学賞が「甲子園」を名乗る最大のポイントは、全国をブロックに分けて予選を行う構造にあります。本屋大賞が「全国区のベストセラーを決める賞」だとすれば、「本の甲子園」は「地域ごとに埋もれた書き手を発掘する装置」として設計されています。
これは地方にとって大きなチャンスです。従来の中央集権的な文学賞では、東京の大手出版社から出た話題作が中心になりがちでした。しかし地域には、その土地に根ざした出版社や、地元で熱狂的に愛されている「ご当地作家」も存在します。
もし皆さんのまちの作家がこの賞で脚光を浴びたら、それは最高のシティプロモーションになります。物語の舞台となった場所への「聖地巡礼」効果や、「うちのまちから、こんな素晴らしい作品が生まれている」という住民の誇りにも直結するでしょう。地方創生で「コンテンツの力」が注目される中、文学という形での地域発信は、予算をかけずにできる持続可能な文化政策の一つかもしれません。
TRC×日販という「現実解」の巧妙さ
この企画の実現可能性を支えているのが、図書館流通センター(TRC)と日本出版販売(日販)という業界の二大プレイヤーの連携です。ここに実務を知る人ならではの「なるほど」があります。
本来であれば、全国の自治体に個別に依頼をかけ、教育委員会の承認を得て、公務員である司書を選考委員として動員するのは、事務手続きのコストを考えると至難の業です。そこで、全国約700館で運営受託や指定管理を行っているTRCのネットワークが生きてきます。
おそらく選考委員の多くは、TRCが運営に関わる図書館のスタッフが担うことになるでしょう。これを「民間主導」と捉える必要はありません。むしろ、複数の自治体で経験を積んだプロのスタッフが、組織の壁を越えて機動的に動けるこの仕組みこそが、全国規模のプロジェクトを実現させる「現実解」なのです。
日販が担う役割も重要です。選ばれた作品を確実に全国の書店に届ける流通ルートがあってこそ、「図書館員が選んだ本」が地元書店に並び、図書館でその本を知った利用者が購入するという好循環が生まれます。TRCと日販の連携は、「選ぶ」と「届ける」という二つの専門性を組み合わせた、実に現実的な設計だと言えます。
司書の「目利き」が生む独自の価値
では、なぜ「図書館員」が選ぶことに意味があるのでしょうか。
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