インタビュー

【日南市長 﨑田恭平氏:第4話】国会議員になる気はない

地域の人たちが共感してくれたことが一番の成果

加藤:ちなみに市長は、企業の誘致、クルーズ寄港、油津商店街の再生など、様々な成果を出されていると思うんですが、ご自身の中で一番高い成果を上げられたと思うことは、何でしょうか。

﨑田市長:成果は『まだまだ』だと思っています。現在も地域の実体経済も不安ですし、人口減少が止まっているわけではないので。ただ、その中であえて言うなら、『市民が動き出そうとしてくれた』ことだと思います。

 もちろん、市民53,000人の全員が全員動いているわけじゃないですけど、前と比較すると、真剣に動こうとする方の割合が確実に増えたと思うんですね。

 政治、特に市長をやるなんて、一番若者が活躍しにくい閉鎖的な世界じゃないですか。それでも、「﨑田があの厳しい世界で、あそこまでやっているのだから、俺たちもできるんじゃないか」と思ってくれる機運が、市内のあらゆる分野で生まれるといいなと思っています。

加藤:民間登用の方が地域を盛り上げているというのもそのひとつですよね。

﨑田市長:そうですね。ただ、「他所から引っ張ってきた人で成功している」、それも一面としては正しいのです。ただし、彼らはある意味触媒であって、その裏には必ず地域の中でちゃんと活躍する人がいて、その方たちこそが中心となるプレーヤーなんですね。

 それは、住民だけではなくて、市の職員ももちろんそうです。民間から来ている人たちと一緒に動いている地域の人たちや市の職員が、必ずどの取り組みにも存在しているんですね。その人たちが主役だと思っているので、ここを履き違えてはいけないという想いが僕にはあります。

 世の中的に、分かりやすいのは「民間から来た『とある人』が活躍しています」ってことなので、そういう情報が多くなりがちですけど、それがずっと前面に出ちゃうと、もともと、地元にいる人たちも頑張りたくなくなるじゃないですか。そうならないように腐心していて、市民の一人一人が現場で活躍しているということを必ず伝えるようにしています。

 「田鹿がすごい」「木藤がすごい」と言ったら、それで市民の心は離れますし、それは正確ではないですから。実際には、地域の人が現場で前に出ているので、登用した民間人は「名黒子としてメディアに取り上げられているだけ」だと捉えるべきだと思っています。もっとも、本人たちもそう思っていますよ(笑)。

助けられる力(リョク)

加藤:ご自身で強みと感じる部分はどういったところにあると思われますか。

﨑田市長:私の強み? 何だろう・・・明るさ(笑)

﨑田市長明るさ

﨑田市長:へこたれない明るさというか、「ここに行きたいんです」という方向性に共感をしてもらう、人を巻き込む力みたいなものはあるのかも知れないですね。もちろん、仕事なので厳しく言うことはありますけど。

加藤:それは伝わってきます。

﨑田市長:だから、「助けられる力(リョク)」ってたまに言うんですよ。ちょっと足りないぐらいが助けてもらえると思っていて、ホントに優秀すぎると、「アイツ1人で、できるだろう」とか「かわいくない」とか思われて、助けてもらえないと思うので。私みたいに、真剣にやっているのにちょっと足りないのが良いのかなと思いますね。(笑)

加藤:「能ある鷹は・・・」じゃないですけど、あえて、ちょっと足りないように見せている、みたいなところがあるんじゃないでしょうか?(笑)

﨑田市長:いやいや、そんなことないです(笑)。演技とかはできないし、もし演技をしたら必ず鼻につくので、大きなマイナスになります(笑)。僕は選挙の時に1回も泣かなかったのですけど、政治家って泣く方がいるじゃないですか。

 もちろん、ホントに感極まって泣くということもあると思いますし、それについては他人のことだから僕がとやかく言うことじゃないんですけど(笑)、自分自身に関しては絶対泣くのは嫌だと思っています。少しでも嘘とか演技が混ざった瞬間に一瞬で全てがうさん臭くなると思うんです。

 ただ、僕の場合は全力で頑張ってもちょっぴり足りないので、それが逆に丁度良いくらいの能力なんですよ(笑)。

加藤:なるほど(笑)。多分、読者の方はそれを真に受けない気もします(笑)。

判断における『勘どころ』はどうやって得られたのか

加藤:﨑田さんには、監督として周りを動かしたり、プロデュースができる強みがあったりする一方で、プロジェクトを進める時の本質、『勘どころ』みたいなものを押さえていらっしゃるのではないかと思っています。そこは、どうやって得たスキルだと思われますか?

﨑田市長:監督として上手くいっているかどうかは分からないですけど(笑)、判断については当事者側の意識を大切にし、県庁時代も「自分が課長だったら、この時どう判断したかな」とかを考えるようにしていました。

 担当の仕事をしていると、どうしても自分の仕事だけの狭い視点に囚われがちなので、一段上の立場に立った時にどうするか、例えば、「自分が知事だったらどうするべきか」と考えるようにしていました。

 県庁の中にいると、県内市町村の情報も沢山入ってくるので、県内市町村さんの動きを見ている時に、「自分がそこの首長だったとしたら、こうするな」と常に考えていました。

 当時書き残していた『﨑田恭平秘密ノート』というものがあるんですよ(笑)。「僕が市長になったらこれをやりたい」なんてことを、ずっと書き溜めていたんです。

加藤:なるほど、それを日々やっていらしたことが大きな蓄積になりますね。

国会議員になる気はない

加藤:ちなみに、この人のようになりたいという政治家はいますか?

﨑田市長:政治家としては、宮崎県五ヶ瀬町の飯干前町長を尊敬しています。もともと、町役場職員出身の方で、企画課長さんとして働いていたところから、40代の時に選挙に出られました。

 僕が県庁に入って間もない頃、地域振興課にいたのですが、勉強のため、五ヶ瀬町で合宿を行いました。

 その時、飯干町長の講演を聞いたんですが、もう稲妻が落ちるくらいの衝撃を受けました。

加藤:具体的には、どういうところに衝撃を受けたのでしょうか。

﨑田市長:地域に対する愛情や先を見通す力、そして、地域にしっかり入っていって、地域の方としっかり対話をする。その中でもご自身が「こうあるべきだ」と考える信念はぶれない。町の人たちと信頼感を持って、でもケンカをする時はしっかりケンカをする。もう一発で惚れちゃいました。

 当時、私はまだペーペーの20代だったんですけど、飯干町長はものすごくかわいがってくださいました。出張で五ヶ瀬に行き、役場に寄らせていただく機会があるときは、私が来ている事を知ると、町長室に招いてくださり、2人で30分・・・1時間と話をしてくださったんです。

 ただ、その方は僅か3期、50代後半に入ったくらいで退職されました。丁度、私が市長になりたての頃で、お手紙をいただきました。そこには、「﨑田さんのような人が出て来たから、自分の役目は終わった。後は君に託す」というような趣旨のことが書いてありました。思い出すと胸がいっぱいになります(笑)。本当に、尊敬する政治家です。

 僕は首長志向が強いというか、首長以外のために政治をやる気がないので、そういう尊敬できる首長がモデルになるんです。よく、「国会議員になりたいのか?」なんて詮索されるんですけど、本当になる気はないです(笑)。

加藤:そのお話のされ方だと、本当だと思います(笑)。

※本インタビューは全7話です

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