インタビュー

【元栃木県庁 西須紀昭氏:第6話】経済活動領域について、行政は「さよなら」すべき!?

西須紀昭18

本来、地域にある原体験をさせたい

西須氏:もう一つ言えば、地域の中で楽しむ経験を、18歳までにしてきた子供たちって、どんどん減っている可能性があるんです。いうなれば、小学校の体育祭は行ったかもしれない、子供会の行事は行ったかもしれない。けれども、そこで地域との関わりは終わっちゃった可能性があるんです。

「中学校入って、大学受験までずーっと、勉強以外知りません」みたいな。もちろん子供のうちは、生きるフィールド自体が小さいのはしょうがない。だけど俺たちの時代でいえば、小さいながらも、例えば小学校6年生とかで自転車漕いで、10キロくらい行っちゃったわけ、山の中とかね。それがもうなくなっているわけ。

西須紀昭 足利山

親御さんたちは「家に帰ったら危険だから外にでるな、交通事故に遭うから」とかね。まともな親御さんだと「習いごとに行け、塾に行け」。しいて言えば、土日休みの時に我々の時代と違って、遊園地連れていくだの、子育てに思い入れの強い親御さんだったらキャンプに連れていくだの、どんどんやっているかもしれない。だけど、これは限られた数に過ぎないわけ。

「勉強せえ、勉強せえ」ばっかりに追いまくられてきた子供の方が多いんじゃないかな。そうすると、とにかく、自分のふるさとの中で楽しい経験をしていない。それをさせるのが大学だとは本当は思わないんだけど(笑)、それをもっともっとさせるために、私が持っている情報を役立てられないかなって今思っています。

加藤:それは講義と実地の両方をしていくと。

西須氏:講義はもちろんすることになるだろうけど、実地まではほとんどいけないと思う。

加藤:そうですか、少しずつできると良いですね。

西須氏:だから、学内授業っていうのとは全然関係ないイベント情報を見つけて、学生にどうやって拾わせるかを考えている。今うちの職場のウェブサイトを立ち上げたばかりなんだけど、「そのサイトに行くと、なんか楽しいイベントの情報がいっぱい入っているね」っていうことになっていけば、学生もどんどん見るだろうし。そこから、「来週暇だから行きたい」という子たちも出てくるかもしれない。本当にこういうのが正しいのかどうかわからないけど、『なんたら学』で形だけ作ったよりも俺は良いと思う。

とちぎ仕事学
重い神輿の担ぎ手がいなくなっちゃったところに、地域の祭りに縁の下の力持ちとして入っていって、それで地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちから「本当に今日はありがとう」とか言われて酒を酌み交わしてとか。そういう、本来、地域にあった原体験を、色々させられればいいなという思いがあるよね。今は、まだ思いしかないんだけど(笑)。

加藤:先があるわけですよね、これから。

経済活動領域について、行政は「さよなら」すべき!?

加藤:以前に、西須さんが、「都道府県よりも基礎自治体に着目した方がいいんじゃないか」とおっしゃっていて、今日のお話でも、「基礎自治体(市区町村)の仕事が面白い」っておっしゃっていました。そういった中で、今後、都道府県が果たすべき役割はどういう部分だと思いますか。

西須氏:より一層コンサルティング性、特に人材育成コンサルティング性、この辺を今まったくやれてないので、そこに力を入れていって欲しいなと思います。ただ、人員が減っている中で、やらなくちゃならない仕事領域はむしろ増えちゃっている。

あと、都道府県の役割の中で、より一層強まっている領域も多い。特に、さっき言った農業なんかの規制産業、それから医療福祉領域、あとは教育領域も本当はそう。特に、教育領域ばっかりは固すぎて、規制産業の一番の権化で、市町村と県の間にもヒエラルキーをそのまま残している。まぁ、そこはどうしようもないんだけど(笑)。

少なくとも規制産業領域の経済活動については、もっともっとやらなくちゃならないことがある。だから、たぶん農業はやることが増えていく。規制が瓦解し始めているから。経済活動領域についていえば本来は、行政はもう関わっていないで「さよなら」すべきなんだよ。

実は、日本以外に経済活動領域で地方自治体が関わるなんていうのは、ほとんどないと思います。トランプじゃないけど、国家統制として、国家が前に進めていくためにやるのはあり。この国では「経産省が頑張る」、これももちろんありなんだけど、残念ながら、今、日本では地方産業領域に対して経産省一発でどうなるもんでもない。

なおかつ、もう一方でいうと、市町村自治体の領域で結果が出ているところは、頑張る人がいるから結果が出ているだけの話。そうじゃないところも含めて、経済活動領域を活性化させていく束ね役としての県という存在意義っていうのは、もっともっと増えていってもおかしくないと思いますよね。

西須紀昭さん 6日目

日本は国民の受益だけ上げて、負担は借金で賄った

加藤:他に自治体の仕事として危機感を持っている領域はありますか。

西須氏:医療福祉領域。これがもっと国民住民の幸せのために、国の制度としてちゃんと拡大していく。そういう道筋が立てられてさえいえば、そんなに地方が頑張る必要もなくなるはずなんだけどね。

むしろ、そこはサービスの受け手が増えて、その水準を落としていく方向感。そういう流れが続くんだろうな。

ヨーロッパの国で消費税が20パーセントとか、これは医療福祉水準を国民があげてほしいから、「そのためには消費税上げなくちゃならないよね」ということで、数年に一度ずつ2~3パーセントずつ上げてきた。それは景気後退期だろうが関係なくね。

当然に、国民ニーズが大きくなっていく限りにおいて、それに対する負担は当たり前に受け入れる。受益と負担は表裏一体のはずなんで。

日本は受益だけ上げて、負担はそのままにしてきちゃった。それは借金を積み重ねることによって来ちゃったという、そういう日本的環境の中、「消費税上げるのはまかりならん」と言われて、また止まっちゃっている。

私は、10パーセントが突破口になってくれるかなと思ったんですけどね。数年数年でまた上がっていく、最初のスタートラインになるかと思ったんですけどね。

※本インタビューは全7話です

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