インタビュー

【元三重県知事 北川正恭氏:第3話】首長と一緒に写真に映っている議会議員は不要

蝶がきれいに飛ぶのを見たら、周りの蝶も一緒に飛んでいく

加藤:ポジティブに光が当たれば、志を高く仕事に向き合えますよね。提言のない批判のための批判は、今の時代で物事を動かす力はあまりないと思います。

北川氏:善政競争は「気づきの連鎖を起こすこと」なんですよ。「北京の蝶々」の理論、それを『バタフライエフェクト』と言うんですけれど、気づきの連鎖によって、内発的動機が生まれます。

 蝶がきれいに飛ぶのを見たら、周りの蝶も「私も飛ぼう」と飛んでいく、さらに今度はそれについて行くために飛ぶ者が出てくる。つまり足し算じゃないんです。1が2になり、2が4になり、4が8になっていく。こういう流れを目指して働きかけているわけですね。

北川正恭3-1マニフェスト大賞2

第11回マニフェスト大賞授賞式での表彰

『詐欺フェスト』と批判も受けることもあった

加藤:北川さんが提唱した『マニフェスト』を広める上で、何が有効だったのでしょうか。

北川氏:試行錯誤の連続で、『詐欺フェスト』と批判も受けることもありましたが(笑)、流行語大賞を獲れて一般普遍化したと思います。

 流行語に選ばれた要因は『マニフェスト』という英語を使ったこと。「英語を使うな、わからないじゃないか!」と叱られている中で、浸透していったんじゃないかというのがひとつあります。この言葉は「政権公約」と日本語で訳されているのですが、その言葉ではこれだけ広がらなかったと思っています。

「あれもこれも」から「あれかこれか」を選択する時代

北川氏:それと、成長社会が成熟社会に変わって、社会が政治に期待することが変わってきたんです。昔は財源があったから「あれもこれも」ができたんです。ところが、低成長の社会になって「あれもこれも」から「あれかこれか」の選択にならざるを得ないんですよ。だから、「年金が欲しいですか? それなら消費税ください」という選択になって、両方を実現することはできない。

 そういう時だからこそ、政治家が誠実に努力しているのかを、住民が見ていく流れが少しずつ出てきて、マニフェストが広まっていった。

ネット時代が市民と政治家の関わり方を変えてきている

北川氏:ネット時代に入ってきたことも大きいですね。紙では一方通行でしたが、ネットは双方向にインタラクティブに意見を届けることができますから、選挙過程の中でも、市民が自分たちで立案した政策を、政党や候補者に届けることができるんですね。

 いま、「マニフェストスイッチプロジェクト」というのを始めたんです。

北川正恭3-2マニフェストスイッチ

 そこで、選挙の各候補者が共通テーマで政策を論じ合って、さらに進化していく材料を提供して、より高いレベルに持っていきたいと思っています。

 市民が立案した内容を政治家が加工し、また市民へフィードバックする。こういうことができるようになってきたので、マニフェスト選挙はさらに進化し、さらに発展することは確実だと思っていますね。それがなければ代議制の民主主義は成り立ちませんよ。

 だから、政治家も「家族を養わないといけない」という気持ちがあるのもわかりますが、単なる利益誘導ではなく、地域人として、日本人として、国際人としての感覚を、だんだん染み込ませていかないといけない。そうでないと、デモクラシーの社会は構築されませんよ。

北川正恭3-3 「政策のチカラが選挙を変える~マニフェストスイッチプロジェクト~」1

新しい時代における政治・選挙の在り方を突き詰めていく

マニフェストは国政選挙よりも地方選挙の方が有効に働く

加藤:マニフェストを掲げても、議会の少数派がそれを実現できるとは限らないと思います。その中で、少数派はどうマニフェストを生かしていけば良いと思いますか。

北川氏:実は国政選挙より地方選挙の方が良いんです。なぜなら、テーマが市民にとってわかりやすいから、興味をもつ話題をローカル・マニフェストに掲げることができるんです。だから、そういうことをやる人が勝つ確率というのが、これから上がっていくと思います。

選挙を「情実」の世界とできるだけ切り離す努力が必要

加藤:議員を選んでいる住民も、その感覚も変えるべきだと思いますか。

北川氏:まことに精神的な、あるいは人情論的なところで政治はなりたっているんです。つまり「情実」の世界で成り立っているのはわかります。

 でも、選挙を情実の世界とできるだけ切り離す努力は必要なんですね。それが「政策による選択」なんです。「票を下さい。お願いします」って選挙していたら、貸し借りの関係が始まるから、利益誘導が発生するんですよ。

首長と一緒に写真に映っている議会議員なんて全くいらない

北川氏:「私はこういう政策を目指しますから、私に賛成の方は入れなさい。反対の方はどうぞ他の方に入れて下さい」ということで契約が成立しないと、代議制の民主主義は成立しないですよ。

 そこで堂々たる言論の府である議会があるわけですから、そこでやらなければいけないけど、いま全くやれていないということが問題で、東京都庁の問題もそういうことでしょ?  全国もそうです。だから『首長与党』とか、『知事与党』という言葉が出てくる。首長と一緒に写真に映っている議会議員なんて全くいらない。私はそう思いますね。

※本インタビューは全6話です

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