インタビュー

【高野誠鮮氏 第2話】嫌われても良いから、本当に正しいことをやらなければいけない

地方創生のための自治体の関わり方とは ~リハビリをしなかったら痩せる~

加藤:少しトピックを変えさせていただきます。今、地方では過疎化、人口減少だとか様々な問題があるかと思うんですが、地方自治体としてどういった活動をすべきかお考えを教えてください。

高野氏:冒頭で申し上げたように、地域社会の一番小さな単位は人なんです。だったら自分の体に起こっていることだという風に考えると、何をしなければいけないのかというのはすぐわかりますよ。人口減少、過疎化というのは人の体で言うと高齢化してきて、どんどんどんどん痩せ細ってきたということ。これを維持するにはどうしたら良い? わかるじゃないですか。一つはリハビリをやります。

 それから運動を続けることが大事。人間の体というのはずっと動かさないと、5年放っておくとガリガリになりますよ。痛くても良いから一生懸命リハビリ運動やれば動脈経済と静脈経済が働くんですよ。そこに必ず痩せた細胞に栄養が落ちるようになって、消費されるようになってくるんです。つまりお金がないから痩せてきたんじゃなくて、動かないから痩せてきたんですよ。

 そう解釈するだけでですね、僕は十分に地方自治体や地域は復興できると思いますよ。今は、誰か助けてくれるだろうと思っている。国が補助金を出すのもお金の問題だと錯覚しているところがある。お金の問題じゃない。「補助金くれないから出来ない」と言うのは嘘ですよ。いくらお金をつぎ込んでも、できないやつはできないですから。

加藤:今も国からの予算はありますよね。

高野氏:そうなんですよ。一つ本当に思うのは、やる気はあるんですけど、本気じゃないんですよ。復興は本気にならないとできないことですよ。制度上のことにこだわってみたりとか。「お前が話したり、考えるべき立場の人間じゃないだろうが」とか言う(笑)。立場でものを考えさせたがる、「じゃあアンタが考えなさいよ」と思う(笑)。私は上司を上司とも思ってこなかった人間なので(笑)。直接、口に出して言うことはめったにありませんでしたけども(笑)。「仰る通りです」と言いますけど、腹の中では全然思っていませんでしたから(笑)。「アンタがやれるんなら、とっくに何かやっているだろう」っていう(笑)。でも、本気になればいくらでもできる。割と楽観視してるんですよ。

加藤:本気で取組むというところが大前提にあって、さらにどうやったら人が動くのかということを考えていくことが重要ということですね。

高野氏:もう一つやるべきは、国としてやるべきことがあるんですよ。地方においてやるべきこと。これはちょっと温度差ありますけど、明治維新の頃をもって考えていただきたいんですね。その時に国がやったのは富国強兵と殖産興業ですよ。今は高いところにいて、「さあやる気のあるところ、地方にはお金をあげますよ」ってそんな馬鹿な話はないですよ。昔は、下に降りてですね、四万十の山の中で紅茶を飲んだこともない爺ちゃん婆ちゃんに紅茶作らせたんです。

 日本人は非常に技術力が高い。それをロンドンに輸出したんです。物すごく良い値段で売れたんです。そして、外貨獲得をしました。これをやるべきなんですよ。豊かな日本という国に戻すために、輸出して売れるものを徹底的に売っていく。その目玉に据えたいのは一次産業です。これを最高のモデル事業にもっていきたい。オランダに肩を並べると40倍の市場がある、だから内閣府の関係者とこれを巨大産業にしていこうじゃないかって話をしています。農業は浮上しますよ。日本には遊休農地、遊休耕作奥地のとんでもない量の面積が北海道から沖縄・九州まである。最高の宝ですよ。農薬を3年4年と使ってないんだったら、自然栽培をやればいい。

加藤:そうすると人員的には、当然、農業していない人もそういうところに入り込んでいくことが必要ということですね。

高野氏:当然そうですよ。プータローやってる場合じゃないですよ。働けっていう(笑)。農業して、農作物作りなさいよって(笑)。米もそうですね。制限かけるべきじゃないですね。「全面作付けを30%制限しなさい」って減反政策やっていますけど、ダメですよ。フルに作付けした方が良い、ただし、肥料農薬は使うなと。そうすると自然に7割しかとれないので、10俵取れると換算していたものが、最初から7俵しか取れない。7俵しかとれないって何かというと、もう減反政策取らなくていいってことですよ。でも、それを米価が下がったからって、無理やり化成肥料撒いて沢山作ろうとしたんです。その行為が悪いとは言わないけど、腐る米が出来ちゃうだけなんですね。自然栽培、これはニーズが世界中にありますよ。お米だってフランスの三ツ星レストランに売れました。

 普通、マイナス思考に陥った人間はできない理由から考えて、「失敗した時にどうするんだ」とこれしか言わないです。だから、成功の絵を描いて自分ができることはやってみたい。それだけなんですよ。

加藤:素晴らしいですね。僕は農業は全然素人なんですけど・・・

高野氏:僕もど素人です(笑)。農業なんて全く知らなかったですよ。

役所で働く前に民間で4~5年働いて公務員になりなさい

加藤:ちなみに、今は民間企業で働いているような人も、地方創生とかそういったキーワードに関して、以前よりも精力的に動いているように見えますが、そういう人たちが地方自治体で働くというのは良いことだと思いますか?

高野氏:僕はね、役所で働く前に民間で4~5年働いた人が公務員になりなさいって言ってきた人間なんですよ。最初から公務員になると駄目ですよ。

加藤:それはビジネス感覚とかそういうものが理由ですか?

高野氏:そう、(ビジネス感覚が)全くない。日本の道の駅全部調べてみて下さい、赤字の道の駅の駅長は98%が元公務員だから。儲ける気なんてない。ビジネスやったことないやつがプランニングしたり、商業ビルとかをデザインしたりする。なんでこんなバカなことするのか、なんでこんなところにこんなもの創るのかということが多過ぎる。

 お役所仕事なんですよ。要するにプロとしての、ビジネスマンとしての最低のところを押さえてないんですよ。許認可与えるのも、やったことない連中が認めちゃうんですよ。そして、ど素人の市会議員がいっぱい集まって賛成反対と決めちゃう。ろくでもない。つまり、決裁までの方法がおかしいんですよ。経験則の無い人間が決裁しちゃいけないっていう風にしてくれないかと。経験則の無い人間がものごとを判断するのは失敗を起こすんですよ。結論が無難なところで止まっちゃうんですよ。やったことがないし、怖いんで。それ以上のトラブルはないだろうかと抑えちゃうんですよね。そうしたら、あってもなくてもどちらでも良いようなものしかできませんよ。つまりそれは何かというと、無用なものです。公共事業をやることについて住民からも反対運動も出ない。役所や議会からも反対が出ないってのは、あってもなくても良いようなものばっかりです。

加藤:リスクも取れないので、リターンも当然ないということですね。

高野氏:ないですよ。

加藤:無難なものというか・・・

高野氏:いや、なくても良いもの。

加藤:なるほど、なくても良いものが出来る(笑)。

いなくてはならない職員は10分の1もいない

高野氏:職員も3種類しかいないんですよ。

 「①いてもいなくても良い職員」「②いちゃ困る職員」「③いなくてはならない職員。」この3種類しかいない。

 そもそも自治体が物事を判断するまでのプロセスがおかしいんですよ。評価能力もない。そして、民間会社もそうかもしれないけど、自分にとって目障りな人間がいたら評価を悪くしますから(笑)。「あいつの方が目立つ」って(笑)。そのくせに、『あれおれ詐欺』が多いんですよ(笑)。部下が何かの仕事がうまくいくと「あれは私が指導してやりました」なんて言うんです(笑)。「ちょっと待ってくれ、あんた反対してただろう」と(笑)。『あれおれ詐欺』かと(笑)。自分に光が当たるようにしかしない。滑稽ですよ。そんな根性の小さい連中ばっかりなんですよ。だから、ものも考え方も変わっていかないと駄目ですよね。

加藤:肌感覚的に行政で働く方には3種類の方がいると仰っていたと思うんですけど、それぞれ割合としてはどのくらいいると思われますか。

高野氏:いなくてはならない職員というのは本当に10分の1もいないですよ。少ないです。

 まあ普通の、まじめなというか日常のルーチンをこなせる人間、これは割といますね。こういう職員というのは3割ぐらい。それは、まあ大手の会社と同じですよ、ほとんど。

地方自治体職員がさらにいい仕事をする上で必要なこと~意識改革と評価制度~

加藤:組織としては皆がなくてはならない人になるのが、究極の理想だと思うんですが、そうなる上では何が必要ですか。

高野氏:意識改革ですね。それをやって、うまくやりぬけているところは結構ありますよ。それが首長の力なんですね。首長の考え方一つでいくらでも変えているところはありますよ。武雄(佐賀県武雄市)に行ってびっくりしたのは、樋渡啓祐さん、彼が市長やってたんですが、考えて企画を打つところは、普通の地方の市役所の職員じゃないなと思ったら、「総務省辞めて、試験受け直してここに来ました」って言ってました(笑)。国の仕事を全部辞めて、地方公務員になって、そしてそういう仕事してた。要するに人なんですよね、そういう樋渡啓祐の下で働きたいという職員がいる。自分たちが作るんだっていう主役根性を持っているです。誰かに仕事をやらされてるんじゃなくて、自分たちが作り上げる。本当にその地域をリメイクしている。本当に自分が思った通り描いてその通りできるんですから。これはやりがいありますよね。

 モチベーションの上げ方がうまいなーと思って。ある種の『変態的な天才』なんですよ、首長がね。図書館の中にスタバ作るとか、そういうことやってあえて過激な発言してますが、わざわざ故意にやってるんですよ、ブログが炎上するように。変革にはどうしても波風が立ってしまうんですが、これは避けて通れないと思うんです。地方が変わろうとすると、もっと波風が立つと思うんですよ。

 もう一つは評価制度ですね。これは、全国で共通しても良い気がしています。今の減点主義じゃなくて、失敗した数だけ褒めてあげて欲しい。何もしていない職員は絶対に失敗しないんですね。

加藤:例えば、それこそ地域に住んでいる方にアンケートなんかで評価をしてもらったものが、そのまま職員の方の評価に反映されるだけでも、結構変わったりするんじゃないかと思うんですけどね。

高野氏:そうですね。内部評価なんで、外部評価のウェイトなんて全然持ってないですから。事業のKPIとかその決め方なんかも、内々ですよ。「馬鹿じゃないの?」っていう(笑)。「なんで自分で点数つけんだよ」って(笑)。「よそ様の、住民から見ての基準じゃないの?」っていう。

嫌われても良いから、本当に正しいことをやらなければいけない

高野氏:上司が部下に「こいつら良い職員だ」と言っても、それは自分にとって良い職員でしょ。その職員が、町にとって本当に良い職員かどうかが重要なんですよね。

 最初に物事を始める時、最初は地域住民から嫌われるんだけど、「本当にあいつは私心ではなく、俺らの村のために動いてくれてるな」ってわかると後で評価される。評価は先に来ないですから。錯覚しているやつは、組織の中でも良い顔したい、地方でも良い顔したい、口だけの奴がいるんですよ。そうすると、住民から好かれたいから、嫌なことは絶対言わない。好かれよう好かれようとするんですよ。好かれようとする仕事なんて、ろくなことできないですから。

 嫌われても良いから、本当に正しいことやらなければならない。本当に抜本的に改革するときには、嫌われまくりますよ(笑)。

加藤:活躍されている首長の方の本を読むと、誰かに嫌われている話は多いですよね。

高野氏:嫌われますよ。めちゃくちゃ嫌われますよ。

加藤:ただ、それがある種活躍している証になっているというか、逆に何も波風が立たないなら何もしていないということになるわけですね。

高野氏:良い顔だけしてる(笑)。「良い顔しよう。町の人から評価されよう」というのは根性が小さいんですよ。これじゃ何もできないですよ。そういう人たちってのは本当に抜本的なことはできないですね。

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