主張・意見

熊本の女性市議の件 ー樋渡啓祐の地方創生ここだけの話【Vol.69 】 巻頭言

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 樋渡啓祐前武雄市長の有料メルマガ「樋渡啓祐の地方創生ここだけの話 Vol.69(12月4日発行)」に寄稿をさせていただきました。地方自治体における会計の先駆者、砥部町役場 田中弘樹氏のお話を書かせて頂いております。

 本記事では、「樋渡啓祐の地方創生ここだけの話 Vol.69」の巻頭言のみご覧いただけます。

【樋渡啓祐の地方創生ここだけの話 Vol.69の目次】

1.巻頭言
2.樋渡啓祐のPick Up
3.樋渡啓祐のお気に入り ~ THEORYの新作スーツ ~
4.Heroes of Local Government ~ 作業員ではなく真の公務員として ~
5.Q&Aコーナー<スペシャル版>
6.購読者さまからの感想
7.編集後記

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【1】 巻頭言
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今回は、熊本の女性市議が生後7か月の長男を連れて市議会の議場入りした件について書きたい。

事実関係は、11月22日に開会した熊本市議会の定例会で、女性市議が生後7カ月の長男を連れて議場入りしたため、開会ができずに他の市議らと押し問答となるなど混乱。最終的に長男を友人に預け、市議会は定刻より約40分遅れて開会というものだ。

(賛成意見)
まず、市議のこの行動に対し賛成意見として、街の声は、
・何か事が起きないと社会の不自由性は打破できない。勇気ある行動だ。パフォーマンスとしても意味があるし、メディアが取り上げたことは大きい。
・議会の閉鎖性を打ち破ることにつながるし、社会に一石を投じたのは間違いない。
・海外の地方議会でも赤ちゃん連れを報道で見かけた。良いではないか。

一方で議員の反応はというと、西日本新聞(11月23日熊本県版)によると、荒尾市の50代の女性市議は「子育て中の女性ならではの目線や意見は議会でも重要で、男性主体の議会を変えていってほしい」と評価。過去につえの持ち込み禁止規則を改正した南阿蘇村議会。男性村議は「女性の社会進出を考えれば、こうしたケースを想定した規則の改正も必要。子どもが議会活動の足かせになってはいけない」と語ったとのこと。

SNSでは、認定NPO法人「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さんなどを中心に、「不安ベース社会から、希望ベース社会へ。『とりあえずやってみる』が社会にアップデートをもたらす。」とし、「願うのは子育てしづらい社会が少しでも変わることだ。」との意見が。Twitter上では、「#子育て会議OK」が出現し拡散している。

(反対意見)
反対意見として、街の声は、
・ルールを守るのが議員の仕事のはず。単なるパフォーマンスではないか。
・熊本市議は政令指定都市なので議員の給料も高いはず。ベビーシッターを雇うなり他に方法があるのではないか。庶民感覚とずれている。
・問題提起になったとは思うが、議会を混乱させたり、議論を妨げてしまって、かえって逆効果ではないだろうか。
などである。

議員はどうかというと、前述の西日本新聞によると、自民党熊本市議団の原亨市議(66)は「議員が規則を無視するなんて言語道断だ」と批判。共産党熊本市議団の上野美恵子市議(58)も「各会派に事前に理解を求めるなど丁寧に進めていかなければいけない」と苦言を呈した、とのこと。

SNSでの代表格は、つるの剛士だろう。つるのは今回の問題に対し自身のツイッターにこう書き込みをしている。
「『保育園おちた日本○ね』の時もそうでしたが、働く女性や育児、待機児童問題。。などを正義の盾にして正論の剣を振りかざす社会にボクは発展はないと思うし、こういう問題提起の仕方は本当に悩んでいる働くママ達や子供が結局一番可哀想な思いをしてしまうんじゃないかなあ、と思いました。」
とのこと。

テレビのコメンテーターなど有識者も「パフォーマンスだ。」「子どもを預ける環境を充実させるように働き掛けるのが議員の役割」だとの
意見が多数を占める。

(世論はどちらか?)
ちなみに各種世論調査によると、この女性市議の行動について、賛成2割、反対6割、どちらとも言えないが2割だ。私のまわりは、賛成ゼロなんだが(笑)。ただ、見方を変えると数字も異なる。「会議に赤ちゃんを連れてくるのはOKか?」など設問を変えるとどうだろう。いろいろ調べてみたが、こんな世論調査は無かったけれども、皆さんお感じの通り、他のメンバーに迷惑がかからないことなどを前提とすれば、賛成の数字は跳ね上がると思われる。

(私の意見は)
以上見てきたように、賛否両論渦巻いているが、論点が噛み合っていなし、「子どもは家で育てるべき」といった個々人のイデオロギーまで出てくる始末。そのような中、私の意見は、議員の政治家としての行動に関しては絶対にダメだが、問題提起としては良かったのではないかというもの。まず議員の行動に関しては、政治家である以上、「ルールを守り、ルールを変える」ことが仕事。いかなる理由があろうと、政治家がルールを破るというのはあってはならない。そういう意味では、この議員はルールを破ったことに関して一定の処分を受けなくてはいけない。一方で、この論点は誰も言わないのが不思議だが、議長には議事進行権という絶大な権限がある。ということは、赤ちゃんを議場から出したり、一部議員が詰め寄ったり、「絵的にまずい」映像が世の中に流れると、女性議員に対するイジメと捉えられる危険性がある。この危険性を回避するために、議長は、暫時休憩を宣告し、一旦議事から離れ、女性議員を交えオープンな場で議論ができたはず(ただまあ、現実的にこれをできる議長は全国でもいないかもしれないが。)。なぜ、そんなことを言うかというと、武雄市長時代、議場で数々の過激な問題提起を自分自身繰り広げてきたので(笑)、議長がすかさず、「暫時休憩」。議会の休憩は言葉通りではなく、議事録をとらない意見交換の場にもなる。そこでは議員、市長、執行部を交えて激論も度々。しかも、この場面はメディアや傍聴人も当然見ることができる。私が考えていたのは結論はともかく武雄市議会にとどまらず問題提起をしたいということ。そういう意味で、議会の場で、この子連れOKか否かを堂々賛否交えて議論していれば、議会に向ける目も変わっていたと思う。何て熊本市議会はオープンなのかと。あと、細かい話だが、この女性市議は以前から市議会議会事務局に相談していたらしいけど、議会事務局はあくまでも市議会の運営を円滑ならしめるためにあるものであり、議員個人の相談相手では無い。そういう意味では、議院運営委員会や全員協議会に諮らなければならない。それが議会や議員の常識であり、これをはき違えるともう何でもあり、となってしまう。

そして、今後であるが、起きたことは起きたこと。私自身、多くの皆さんと同じように、一定の制約はあると思うが、「仕事や会議に子連れOK」の立場。それは企業内保育所とかあった方が良いに決まっているけど、時間もお金もかかる。だから、子育てしやすい環境を今ある資源で現実的にみんなで考えてみる、という立場をとりたい。「女性議員の単なるパフォーマンスだ」と言って切り捨てるのは簡単だが、それはあまりにももったいない。これからの全国的な前向きな議論を期待したい(なお、本件に関して、連載中の「日経グローカル」にさらに詳細を記すことにしたい。そちらもぜひご覧頂きたい。)。
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