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【四條畷市 安田美有希 #2】働き方改革の具体的な施策とは

自走する組織を作る手法を学ぶ

加藤:四條畷市の働き方改革が興味深い点は、目標数値を掲げていない中で、残業が4割も減った部署があったことです。働き方改革を進める際に具体的に行ったことはどのようなことだったのでしょうか?

安田氏:2017年10月に、ワーク・ライフバランス社の小室淑恵代表をお招きしてセミナーを行いました。業務に支障のない範囲で管理職員だけでなく、全職員に参加してもらいました。セミナーでは働き方改革の全体像やその必要性を伝えてもらい、本質的な理解を促進する場となりました。その後、モデル課4課の職員にはキックオフミーティング、定例会をやりました。

加藤:会議はそれ以降も行っていたのでしょうか。

安田氏:はい。ほぼ1か月に1回のペースで計3回の定例会を設けました。各課が直面する課題に対して自分たちで考え、自走する組織を作っていく手法をコンサルから教わりました。

加藤:定例会はどのような手順で進みましたか?

安田氏:まずキックオフミーティングで、各課がそれぞれ自分たちのありたい姿を明確にし、そのゴールに至る手段を落とし込んでもらう。1、2回目の定例会では、実践した結果、浮かびあがった問題点を踏まえ、コンサルにアドバイスをもらう。3回目ではさらに検証して深化させていきました。

働き方改革のための具体策

加藤:各課で実践したものの中から代表的なものとして、「カエル会議」「付箋会議」「朝夜メール」「集中タイム」「忙しさ管理シート」というものがあります。それぞれどのようなものでしょうか?

安田氏:「カエル会議」は2週間に1回、定例的に各課の職員全員で課題について話し合うものです。例えば、「属人化をどうしたら少しでも解消できるか」などテーマを決めて、全員で意見を出し合い、現状を変えていくための具体的な取り組みを決める。その次には、実際に試した取り組みがどうだったのか、意見をまとめて軌道修正をしていく。この会議にコンサルは参加せず、あくまで各課の職員が納得できるまで話し合い、取り組みを実践しました。ひたむきにトライ&エラーを積み重ね、よりよい方向へ向かっていく。職員はカエル会議で意見を述べ、納得して取り組みを進めることができました。

 また、他にはカエル会議などにおいて「付箋会議」という手法を取り入れました。「付箋会議」とは、あるテーマに対して全員が付箋に意見を書いて発表し、グルーピングしていく手法です。全員が意見を発表するため、声の大きい人の意見に引きずられないメリットがあります。

 基本的に、課長が言っていることに対して、反対する意見ってなかなか言いにくいですよね。でも、付箋会議で反対意見も普通に議論のテーブルにのって活発に話し合いがされました。実際、管理職員からは、若年層の職員や普段あまり意見をいわない職員からも意見を吸い上げることができて良かったと声があがっています。こういった取り組みによって、意見を言って良いという健全な風土が作られ、相互理解が進み、組織に帰属する安心感につながります。その結果として、働きやすい環境が生まれていくわけです。

加藤:管理職も含めて、全員で率直に話し合う機会はこれまで少なかったかもしれませんね。付箋会議を通じて意見が出てくるのであれば、部下の意見も示されやすく、上司が考慮しやすくなる気もします。
付箋会議(

「朝夜メール」というのはどういうものでしょうか?

安田氏:職員が朝にその日のスケジュールを作成し、それに対して夜に実際どうだったかを入力します。課長からすると、課員がどのような業務に取り組んでいて、どのくらいの時間を費やしたか把握することで、必要に応じて助言や指示をすることもできます。
 これに関連して、「忙しさ管理シート」というシートもあります。職員それぞれが自分の状況を入力することで、各人の忙しさが可視化され、ある職員が大量の業務を抱え込んだ場合に、他の職員と分担してお互いにサポートできるようになるのです。

朝夜メール

忙しさ管理シート

加藤: 「集中タイム」はどういうものでしょうか?

安田氏:窓口で市民の方の応対をすると、それまで取り組んでいた事務作業がいったんストップします。窓口対応を終えて、そこから再び事務作業にもどって集中するには、どうしても一定時間かかってしまいます。そこで、事務作業に集中して取り組みたい職員には、一定のルールのもとで、窓口から離れた場所で事務作業に没頭してもらうというものです。

集中タイム

「行政の方って小綺麗に見えるようにまとめてますね」

加藤:4つのモデル課では、主なものだけでもこれだけのことを、半年間実践したのですね。1つの課はだいたい何人くらいでしたか?

安田氏:課の人数には非常に差があります。少ない課では5人、多い課では約20人とか。課員が多い課では、全員集まってのカエル会議を設けるのは難しかったという状況があります。カエル会議は定期的にきっちりやる課もあれば、均一なペースを保てず月1回の実施となった課もありました。

加藤:以前に東市長も、全ての部署がうまくいったわけではないとおっしゃっていました。

安田氏:「自分たちが目標に向かって改善すべきと考えた点に対して、取り組みを進めてみて、トライ&エラーを繰り返しできなかった課については、本質的な意味で働き方改革にはつながらなかった」とコンサルティングの方には指摘されました。それと、「行政の方って何となく小綺麗に見えるようにまとめてますね」とも言われました。ズキュンと胸を打たれたような感じです。

加藤:こなしているという、ニュアンスでしょうか。

安田氏:はい。そういう感じです(笑)。そこまで言われませんでしたけど、形だけやっているように見せるのがうまい、ということだと思います。

安田氏:それと、個人的にはコンサルの方を信頼しきれていなかった課は、成功事例にならなかったと感じています。働き方改革に成功した課は、コンサルと喧々諤々の話し合いをしていましたので。

4か月で変化を実感

加藤:納得できないことをやっても上手くいかないですよね。モデル課からしてみても、初めてのチャレンジなので実感も持てないし、途中で不安も生まれてくるでしょうね。

安田氏:実は、人事の立場から見ても、初めは全然手ごたえがありませんでした。正直言って、「大丈夫かな、これ・・・」と思うことが多かったです。ただ、そんな中にあって、コンサルにガンガン質問に行って、「改革につながるもっとレベルの高い手法を教えて下さい」と熱意をもって動いている課長も存在しました。

加藤:少しずつ変化が起きていたわけですね。モデル課が動き出して、どのくらいの時期から手ごたえを感じるようになりましたか?

安田氏:コンサルからマインドセットには4か月はかかると事前に言われていました。実際、4か月を過ぎたあたりから、何となく変わってきたように思います。そして半年後には、以前の状況が嘘のように前向きに取り組みが進んでいる手応えを感じましたね。
 ある課では、当初は絶対に無理だと思われていた属人化の解消などの課題が、モデル課のコンサル事業が終わる頃には、「いや結構できるよね」「難易度低いよね」と考えるようになりました。

加藤:何かを変えるハードル自体が低くなっているということでしょうか。

安田氏:小さい成功体験を積み重ねることによって、大きな自信につながります。お互いのことを理解しあうとか、時間を共有することによって、このメンバーでやっていけるという安心感と連帯感が生まれていったようですね。

(編集=文書編集チーム、加藤年紀)

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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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