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石破茂3

HOLG編集室

高度経済成長期と同じことはできない-石破茂#3

石破氏:なんにしても、戦争でコテンパンに負けたと。それから、ソ連がバリバリに強くなって、このまま放っておくと日本も共産主義の国になるかもしれない、アメリカはものすごくそれを恐れた。日本が貧しくて人口がどんどん増えたらば、共産主義の国になるかもしれない、と。
 そうあってはならないということで、GHQがもう1回選択したのが、東京一極集中という施策でした。政治も、行政も、立法も、司法も、経済も、文化も、メディアも、全部東京一極集中。わざわざそのように作ったのですよ。

 私は大学を出てから三井銀行ってところにいましたが、当時、全国銀行協会の会長に住友銀行や三和銀行はなれなかったんです。東京に本店がなければ、全国銀行協会の会長にはなれなかった。
 PHPっていう雑誌は京都で作っていた。エコノミストも大阪で作っていた。だけどもそれも全部東京に集められ、すべてのものが東京一極集中で、もう1回日本は人口が増え、経済が伸びると。
 それは、短期的には効果を上げるのです。けれど、決してサステイナブルではない。新幹線が走り、高速道路が開通し、飛行機が日本国中に飛び、情報の伝達が極めて容易になっていった。なればなるほど、なんで東京一極集中なんですか。なんでいろんなものが発達すればするほど、東京一極集中なんですか。これは、国の仕組みそのものがどこかおかしい、ということに我々は気づいていかなければならない時代なのだ、というふうに思っているところであります。

 これをどう変えていくか。我々自民党は、常に地方の発展ということを考えてきた。私が高校生のころ、田中角栄先生が内閣総理大臣で、「列島改造」、日本国中に新幹線と高速道路を張り巡らせた。私が大学生のころ、大平正芳先生が総理大臣になられて、「田園都市構想」、都市に田園の潤いを、田園に都市の賑わいを、という構想があった。

 私が議員になった30年ぐらい前、竹下登先生が総理大臣になられて、「ふるさと創生」。どんなちっちゃな村にもどんなおっきな町にも1億円。夢みたいな話だった。ばらまきばらまきって、その当時もそんな言葉があって、国会では無茶苦茶言われた。
 竹下総理答えていわく、「それは違うんだわな。これでその地方の知恵と力がわかるんだわね」。「自ら考え、自ら行う」とおっしゃったことを。私は今でもよく覚えております。
 合併してなくなっちゃったが、秋田県にちっちゃな村がありまして、なにしようかこの1億円、あたりまえのことをやってもつまらない。そういえば、我が村にはキャバレーというものがない。この1億円でキャバレーだって、本当にぽつんとキャバレー作って、すぐに潰れたという有名な話がありますね。

会場:(笑)。

石破氏:でも、それでもよかった、みんな一生懸命考えたんだから。経済が伸びて人口が伸びてる時代は当たり外れがあってもよかった。ふるさと創生も、田園都市構想も列島改造も、素晴らしい発想だったと私は思うが、これが失敗したら日本の終わりだとは誰も思わなかった。
 だけど今度の地方創生ってのは、失敗したらこの国がもたないんです。GDPってのは付加価値の総和なので、「この金出してもあそこに行きたい、この金出してもこれが食べたい、この金出してもあそこへ泊まりたい、この金出してもあの人に会いたい、この金出してもこの商品がほしい」、これがGDPの本質のはずです。それが霞が関で考えてわかると思ったら大きな間違いで、その地域の価値ってのは、そこの人でなければわかるはずがない。
 地方創生ってのはそういうものであって、国のメニューから選ぶだけじゃない、国のメニューにはないけど、わが町はこれをやりたい、わが町はこういう事業をやりたい。それは官民連携であり、広域連携であり、いろんなのがあるんだけど、そのまちをどうしたらよくなるかってことはそこでなきゃわかんないでしょ。

 そうであれば何にお使いになっても結構です。これが地方創生交付金の原点であったはずであります。これがなんか最近補助金化しつつあって、これはまずいねって思っていて、来年もう1回見直しをすることになるはずなんだけれども、要するに地方の産業の付加価値を上げなければならない。農業でも、土地改良をやり機械化が進んで、農作業にかける時間はものすごい短くなったんですよね。
 だけど農業の付加価値、生産性は上がったのか。土地改良の負担金も、機械化のお金も、農外収入で払う人が多かった。ということは、農業自体の生産性は上がらなかったっていうことですね。基本的な構造は林業でも水産業でも一緒です。だけど、そうだとすると、そこにものすごく伸びしろがあるんでしょうね、というお話になるはずであります。

 昭和40年代、50年代、地方は元気だった。私は鳥取市で育ったんだけど、駅は立派になり、駅前はにぎやかでシャッター通りなんかなくて、農山漁村もそれなりに活気があって、お休みになったらもうわんさか、姫路ナンバーとか神戸ナンバーとか大阪ナンバーの車が来たものだ。
 あの頃よかったなあ。もう1回おんなじことができないかな・・・。
できません・・・。同じことはできません。何故ならば、その頃地方の雇用と所得は何によって支えられたかというと、公共事業と誘致企業だよね。道路がよくなり下水道が整備され、空港ができ、港湾ができ、多くの雇用と所得がそこにあった。そして、おんなじものを安くたくさん大勢の人に作るっていうビジネスモデルが日本国中に展開した。

 今みんな同じものは欲しくない。ハロウィーンが終わって、そろそろクリスマスだ。お子さんや恋人に欲しい物なに?って聞いて、「別に」って言われて、がっかりしたこと最近ないですか。昭和30年代は、みんな白黒テレビと、電気冷蔵庫、洗濯機が欲しかった。昭和40年代は、カラーテレビと、クーラーと、自動車が欲しかった。でも今、みんな同じものは欲しくない。価値観がものすごく多様化したから。
(写真 = 荒井勇紀)

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