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【和光市 山本享兵氏】公認会計士が自治体職員として成果を上げるということ(4/5)

気軽に声をかけられる人が50人できれば、公会計制度の導入は成功する

加藤:お仕事をされる中で大切にされていること、意識されていることはありますか?
山本享兵氏:人との繋がりを意識的に作るようにしています。というのは、先ほど、人の気持ちが変わった時に物事が変わるという話をしましたけど、実際に組織の中で何かを実現していくというのは、結局、気軽に話ができる人がどのくらいいるのかに尽きると思うんですね。
 入庁当初は、和光市役所内の知り合いはほとんどいなかったんですけど、とりあえず50人ぐらい気軽に話せる人を作るというのを、最初の3ヶ月のKPIとしていました(笑)。

和光市役所庁舎

和光市役所庁舎

 とにかく50人ぐらい、気軽に声をかけられる人ができれば、公会計制度の導入は成功するに違いないと思っていたんです。ですので、例えば市民祭りや市民ロードレース大会のスタッフであるとか、職員有志と市民とで取り組んでいる市民活動に参加してみたりとか、色々やってみました。
 それと、色々な課が市民向けに説明会をしているんですが、それにふらっと参加してみたりしています。それで市の政策についても凄い理解も深まるし、関心を持っているということを明確に伝えることができると思うんですね。
 地域防災計画であるとか、公園整備であるとか、国民健康保険の条例改正だとかの説明会に行くことで「この人は本当に関心を持っている人だ」と思ってもらえるし、もちろん、実際に関心を持っている。そういう中で信頼関係ができてくると思うんです。
 若手中堅ぐらいの人とコミュニケーションが取れると、実務の細かいことで困った時も相談しやすいですし、管理職の方と信頼関係が築けると、自分が実現したい起案を通してくれやすくなります。また、年次が上の方の中には、まちの歴史の本当に深いところまで教えてくれたりします。和光市の生き字引みたいな方が何人もいるので、その方にお話しを聞きに行くと、「一見こうなんじゃないの?」って思ったことに違う背景があることがわかったりして、より良い実務を作っていくことにつながったりします。
 こんなことを言うと、ちょっとあざとい感じがするので、人に言ったのは初めてですけど(笑)。もちろん、仕事だからってことだけではなくて、そういう風に知り合いになっていくのが好きだし楽しいわけなんですけど、そこを敢えて意識して作っていっています。
加藤:いえ(笑)、山本さんが構築している人間関係は本質的にとても大切なものだと思います。

自治体職員は仕事において優秀だと思う人の割合が極めて高い

加藤:民間から入ってこられて、感じる違いは何でしょうか。
山本享兵氏:一番は先ほどお話した、物事を変えやすい組織であるということ。もう一つは、仕事上で優秀だと思う人の割合が極めて高いということです。
 民間の場合は、自分もそうでしたが、入社数年の人がマネージャーとかをやっていたり、スタッフとして作業しているのは1・2年目の新人ばかりなんてことも稀ではないと思うんですね。
 役所はなかなか辞めないというのもあるかもしれませんが、10年目ぐらいの人がスタッフとして作業するわけです。そうすると、何かお願いをする時でも基本的な仕事の作法で心配することがないんですよね。
 例えば前の職場で仕事をしていた時は、若いスタッフにそのプロジェクトの内容以前に、社会人の基本から叩き込まないといけないというのがよくあったんですけど、和光市においてそういうことは殆どない。
 だから、すぐに具体的な仕事の話からしていけるんです。そういう意味ではこんなに仕事の進めやすい環境というのは、非常に贅沢だと思いますね。
加藤:ポジティブなギャップの方が割合としては大きかったのでしょうか?
山本享兵氏:はい。自分はポジティブな方が大きかったですね。逆にネガティブな方で何かあったかな・・・あまり思い浮かばないですね。うーん・・・。
加藤:そう考え込んでいる時点であまりないんでしょうね(笑)。それは素晴らしいことだと思います。
山本享兵氏:もちろん、経営課題は沢山あります。私は『和光市課題ノート』という秘密のノートを日々課題に気がつくたびに付けているんですけど、大体250個ぐらいの課題がそこには記されています。
 それについて常日頃から、何か解決の糸口がないかと考えて、できるものはその都度解決していきます。40~50個は既に解決されています。ただ、これらは、特に役所だからダメだというものではなく、どんな組織でも経営課題はあるので、民間との違いというわけではありませんね。

プロセスを無視する人は物事を実現させることはできない

加藤:凄いですね。よくある民間出身の方が入った時にぶち当たる壁みたいなものは難なくクリアしているということですね。
山本享兵氏:そうですね(笑)。私はどちらかというと、「ぶち当たる人の側に問題があるんじゃないの?」って思っていますね。結局、「役所はやっぱり駄目だよね」って辞めていく人がどういう人かと考えると、プロセスを無視する人ですよね。
 その挙句に「プロセス」の文句を言っているパターンも多いですよね。そんなのはルールの中でちゃんとやれば良いことで、スポーツでいえば「トラベリング」を知らないでバスケをやっていて、審判に反則ばかり取られている人が、「バスケなんか腐ったスポーツ」だって言っているのとあまり違いがないと思いますけどね(笑)。
 あと、もう一つは、アプローチの仕方が浅い場合も多いと思います。それは職員として民間から入る方に限らず市議会議員の方とかもそうかもしれないです。自分の主張を議会の一般質問で行い、役所側が「検討します」と返答すると、「あいつら検討するしか言わねーよ」、「結局、俺らが何を言っても役所は堅いから変わらないんだ」みたいなことを思うかもしれません。
 でも、そんなのは当たり前じゃないですか。それだけのことで変わると思う方がおかしいと思うんですよ。本当に変えたいのであれば、その役所の担当者に、「進める上での課題は何か」を聞いて、その課題をきちんと潰す。
 議員さんなら、誰でも職員は会ってくれるんだから、一人一人からヒアリングした課題を潰していって、その上で市長と話を進めていったら、役所側も無視できないと思うんですよね。それを一般質問でちょっと何か言ったからといって実現しないのは当たり前です。
 民間から役所に入る他の方がどう動いているかはわからないですけど、市長だけに色々言っているのかもしれないですし、直属の担当者や上司の人にメール一本打っているだけかもしれない。でも、それでは人の気持ちが変わらなくて当たり前ですよね。
 そんなことで文句を言う人って民間で通用していたのかなって思いますし、自分の感覚では、民間の方が利害調整するのはもっと難しいと思います。
加藤:なるほど。なぜ、山本さんは役所をポジティブに捉えられているのでしょうか?
山本享兵氏:元々、自分が自治体について深く理解していたというのはあると思うんです。高過ぎる期待も低過ぎる見下しもなくて、どっちのバイアスも持たずにごくごく普通の一つの組織だということで入ったというのが大きいですね。一般企業に転職なんかする場合でも、『超良い会社』だと思って入るのも、『超ダメな会社』だと思って入るのも絶対どっちも失敗しますよね(笑)。

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最終ページ:ニュースに流れることで自治体に関係ないことは殆どない

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