【砥部町 田中弘樹氏】会計の先駆的な事例を進め、総務省や大学からも声がかかる会計実務のスペシャリスト(4/5)

「しんどい・辛い」=「充実・楽しい」

加藤:砥部町での経験を外へ発信して、砥部町だけでなく、他の自治体や国全体の利益に繋がる情報を発信しているというところが、公務員としてのあるべき姿を見事に実践されているように思います。

 ところで、そもそも田中さんは、なぜ自治体職員になったんでしょうか。

田中弘樹氏:公務員そのものに特別になりたかったわけではないんですけど(笑)、実家がスーパーマーケットをやっているんですが、年中無休で仕事をやっているのを見て、「俺は休みのあるところに努める」と決めて(笑)、それぐらいの気持ちでした。

 結果、うちは弟が家業を継いでいるんですけど、一時は弟以上に仕事をすることになっちゃいました(笑)。「なんのこっちゃ」って話かもですが(笑)。

加藤:(笑)。そうして、最初に入庁して税務課で7年、これは長いですね。この時のご自身の実績というと何を思い浮かべますか。

砥部町町役場

砥部町役場

田中弘樹氏:この時は、マイクロソフトのアクセスよりも前のメガボックスというデータベースソフトがあったんですけど、それで農業従事者の税申告をデータベース化して、ボタンを押したら、すぐに計算が完了するようにしていました。

加藤:大学では理系の勉強されているんでしょうか?

田中弘樹氏:いえ、文系で経済です(笑)。

加藤:(笑)。元々、休みが欲しいという気持ちで仕事を始めたのに、なぜそこまで大変な仕事を抱え込んだんでしょうか(笑)。

田中弘樹氏:なんでしょうね。性分なんでしょうか(笑)。

 これは変えた方がいい、これはこうした方がいいと思うと、改善していきたいんですよね。辛いこととか、しんどかったことは沢山ありますけど、それが強いほど逆に楽しくなるんですよね(笑)。

加藤:だからこそ、やり甲斐を感じるんですね。

田中弘樹氏:自分で考え抜いてこうだと思ったことに関しては、「しんどい・辛いこと」と「楽しいこと」はイコールかもしれません。

加藤:力強い骨太な考え方ですね。その後、会計課でも7年。ここでは何をされたのでしょう。

田中弘樹氏:一番大きかったのは、アクセスで財務会計システムを作ったことですね。

加藤:ここでも仕組み化ですね。今度は介護福祉課に行きました。これはどういう仕事をしたんでしょうか。

田中弘樹氏:これは1年だったので、これということはできませんでしたが、保育所の予算や決算をフォローするような役割で、事務員さんに会計の話をレクチャーさせていただきました。

ケンカをする事があっても進めた

加藤:その後、企画財政課に異動されて、先ほどのお話の通り資産台帳の整備をし、これもデータベース化をされたわけですね。このデータベース化というのが、田中さんのお家芸という感じですね。

田中弘樹氏:そうかもしれないですね(笑)。ただ資産台帳を整理した時は本当に膨大な量があったのと、しかも当時は役所内の理解もあまりない時代だったんですよ。

加藤:確かに、今だと国からも「やりなさい」という話があるので動きやすいと思いますが、その当時だと協力的になってもらえないこともありますよね。

田中弘樹氏:時には、ケンカもしながらやりました(笑)。

加藤:私のイメージだと、今お話ししていて、田中さんはとても柔らかい雰囲気なので、ゴリゴリ進めている印象が浮かばないですね(笑)。

田中弘樹氏:そうですか、ありがとうございます(笑)。後輩はできるだけ怒らないようにと気をつけていましたが、かなり強い気持ちで進めていったことは間違いないですね。

加藤:それぐらいしないと、そのタイミングにおいては進められなかったのかも知れませんね(笑)。それから会計課に異動されたんですね。

田中弘樹氏:結局10年、企画財政課にいて公会計担当をしていたんですが、去年の4月から公会計担当が、財政課から会計課に移りました。その時に私も会計課に移ることになりました。振り返ると、およそ12年間公会計に関する仕事をしていることになりました(笑)。

役場のお金を使わず貢献できることをしていきたい

加藤:今後、ご自身が活動していきたいことは何でしょうか。

田中弘樹氏:公会計プロジェクトのメンバーと、町の予算を使わずにお仕事ができたらいいなと思います。

 専門の方をお呼びして、財務諸表の分析をしたりだとか、小学生に税金教室をやっているんですが、公会計に関わる話も付け加えてみたりしたいですね。「この体育館っていくらでできていると思う?」とか「皆は材料代しか払っていないけど、本当の給食費っていくらだと思う?」とか。

加藤:すごく大事だと思います。

田中弘樹氏:そして、「それは全部、君のお父さんやお母さんが払ってくれているんだよ」って。伝えたいんです。

加藤:素晴らしいですね。社会の仕組みを伝えながら、子供が親を尊敬してくれたら最高ですね。

 税金の仕組みって、あまりしっかり勉強しない中で社会人になりますし、普通の会社員になると、会社が殆どやってくれるので知識を入れる機会がないんですよね。

田中弘樹氏:以前に公会計の話を大学生にしたことがあるのですが、学生の間に一度会計の話を聞いていると、その後、社会人になった時に感覚が違うと思うんですよね。また、講義の中でふせん紙仕訳ゲームっていうのをやっているんですけど、多くの学生さん達に楽しんでもらえました。

松山大学で講演

松山大学で講演

加藤:結局、政治行政ってお金を集めて再配分することじゃないですか。そこに多くの人がまだまだ関心を持たないというのは、自分がそもそもどれくらい税金を払っていて、どう使われているかっていう情報をしっかり頭に入れられていないからだと思うんですよね。

田中弘樹氏:そうですね。学生達が、自分の親が納めた税金がどこに使われているのか、そんなことを考えるきっかけになれば、そして自分が社会人になったときにもタメになる。そんな経験をするって、楽しいことだと思うのです。今後も役場の外で貢献できることをしていきたいと思っています。

加藤:素晴らしいことだと思います。

すぐに話が通らなくても、アクションを何度も繰り返す

加藤:次の質問です。地方自治体と職員の方が今以上に活躍するには何が有効だと思いますか?

田中弘樹氏:自治体はリスクを取ることを恐れる文化なんです。だから、1人や2人ではあまり物事が進まないと思うので、若い感度の高い子達と一緒に動いて、役所の上層部にやりたいことの意思表示や提案をして行くことが大事だと思います。

 すぐに話が通らなくても、それを何度も繰り返すことで、やるべきことを動かしていくことが必要だと思います。あと、「近隣の自治体よりも先に何かをする意味はどこにあるのか」といった雰囲気を感じることもありますが、先陣を切って何かをやっていくことには相当の経験値を頂けるものと感じています。

 それは、その後の仕事にも必ず繋がると思いますね。自信とか強さ、もしくは忍耐力みたいなものが芽生える気がします。先程、加藤さんも仰いましたが、「全体の利益」、これを考えられる人が多ければ、あまり意味の理解できない反対も少なくなるのではないかと思います。

加藤:新しいことをやる時に、若手の職員の方がボトムアップで判断スピードを上げてもらおうと思ったら、組織の誰にアプローチしたら変わっていくんでしょうか。

田中弘樹氏:その部署の部長さんクラスだと思います。うちの自治体だと部長がいなくて課長なので、課長に理解してもらうことだと思います。あと、自治体の場合だと議員さんの影響もかなりあると思います。議員さんが興味を持ったら課長の行動が変わりますし、課長が変われば課長補佐が変わるので、普段の業務等で議員さんへの理解をしてもらうということも大事かもしれません。

 同じ意識をもった人が集まっていれば、判断スピードは瞬間的です。「あっ、それいいね!」「これから始めようか!!」と、2秒で決断されます(笑)。しかし、そのような考えのある人が集まるということは現実的には難しいですよね。そうなると、普段から今のチームでどう意思疎通をしているかということになります。

加藤:組織内で調整する力というのは、大事ですよね。

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2017/01/03

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