【八幡浜市役所 高倉万記子氏】システムのスペシャリストが創出した役所の外に広がる輪(3/5)

facebookのグループの活用と無料のメルマガ発行

加藤:今の業務以外の活動を教えて頂けますか。

高倉氏:facebookで自治体職員らが業務で情報交換できるグループを「ICT」と「マイナンバー」それぞれの領域で運営しています。例えば、「ICTの説明会でこんな話があった」、「総務省からのこの通知に対してはこんな解釈でいいのか」、「うちの役所はこんな取組をしている」とか、「こんなトラブルがあったから気を付けよう」とか。

加藤:facebookのグループはいつから運用を始められたのでしょうか。

高倉氏:ICTグループの方は開設してから6年近くになりますが、「セキュリティ」から「オープンデータ」、「IT調達」、「システム監査」等、グループ内で情報交換やディスカッションする話題も広いですが、そのグループ上で今まで全国で30回以上実際に面と向かって会えるオフ会も開催してきました。

 10人ぐらいのときもあれば、50名集まったときもあります。自治体職員、省庁の職員、CIO補佐官や自治体の委員を経験した民間ベンダー、大学の先生等、様々なメンバーでざっくばらんな話をする場として喜んでいただいてリピーターも多いです。

加藤:なぜ、こういったグループを作ったのでしょうか。

高倉氏:これは、自分が困っていたことがきっかけになったと思います。元々、自分が八幡浜市役所でシステムを作る仕事をしていた時、国民健康保険の法改正に伴うシステム改修の仕事があったんですね。

 こういう時は、最初にどういう法改正なのかを調べた上で要件を作るんですが、なにぶん制度が複雑なため、すぐに全体像が理解できないことも多いんです。

 そういう時は役所内の制度の担当者に聞くんですが、担当者も忙しいので相談しても解決できずに自分一人で悩むこともあって、そんな時にmixi経由で自治体職員とか、開発のベンダー職員とか、知り合っていた方に相談できたんですね。

 また、後期高齢者医療制度が始まる時に、後期高齢者医療制度SNSという、「皆が相談できるグループ」を運営している方がいて、そこで情報収集できることにも恩恵をとても感じていました。

 その後、facebookでグループができることを知った時に、繋がっていた友達を誘ってICTに関するグループを作ったら利用者が増えて、参加者にも喜んでもらえたので、「じゃあ沢山勧誘しよう」なんてやっていたら、他にも入りたいという人が増えて500名ほどのグループになりました。

加藤:かなりの数ですね。

高倉氏:マイナンバーのfacebookのグループは、3年ほど前にできて、番号制度が始まる前に作りました。当時不安に思っている人が多いことを知り、声をかけたらどんどんメンバーが増えていって、今は1,000人を超えています。

 こちらも自治体職員を中心に国や関係者の人達にも入って頂き、個人番号カードからシステム情報連携の話まで、活発な議論をくり広げています。

加藤:それぞれの地域で活躍されている方が、そこで情報交換をされるんですね。500~1,000名規模になると運営は大変ではないですか?

高倉氏:そうでもないですね(笑)。facebookのグループ宛てに参加リクエストが来るんですけど、その時にその方のバックグラウンドがわからないと、「あなたは情報関係のお仕事ですか?」なんてコミュニケーションを取ることぐらいはありますが、グループ内では皆さん大人なので喧嘩もしないですし(笑)。

加藤:因みに、総務省自治大学でコーディネーターや講師のお仕事をされています。それはどういう経緯があったのでしょうか。

高倉氏:それはfacebookのICTグループの参加者がCIO(※Chief Information Officer = 組織の情報システム部門の最高情報責任者のこと)研修を行うということで、外部講師として、「facebookのグループについて話をしてくれ」と言われたんですね。そこから始まりました。

総務省自治大学 CIO研修

総務省自治大学 CIO研修

 その翌年からは、自治体の仕事に関係する方を呼んでマイナンバーについてパネルディスカッションをしたりとか、政府関係者や大学の著名な先生方を呼んでセキュリティ関係について話をしてもらったりしました。

マイナンバーがテーマのナイトセッションの総括

マイナンバーがテーマのナイトセッションの総括

加藤:そのお呼びした方というのは、facebookで繋がった方なのでしょうか?

高倉氏:そうです(笑)。

加藤:それは財産ですね(笑)。

高倉氏:そうなんです。facebookで投稿とかを見たり、それにコメントをしていると、会っていない間でも、どんどん仲良くなっていくので、実際に講師やディスカッションにお呼びすると来て頂けるんですよね(笑)。

加藤:確かにコミュニケーションの広がりはありますよね。

 一方、個人として無料のメルマガを4年間発信されていますよね。これは、どういう内容を発信されているんですか?

高倉氏:自治体職員が業務上役に立つようなニュース・情報を集めたメールマガジンを発行しています。メルマガについては、元々システムの仕事をしていた時に情報収集が日課になっていたので、その情報を少しでも還元できるようにと思って4年以上続けて来ました。

高倉万記子メルマガ

自治体関連の情報をまとめて送るメルマガ

加藤:どのくらいの頻度で配信しているのでしょうか

高倉氏:不定期なんですけど、大体、月に5本ぐらいですね。仕事の時以外は何もなければ常にネットをチェックしているので、地方自治体職員に関係するウェブ上のニュースやコラムをみつけるとそれをストックして、30個ぐらい貯まると、そのリンクを送っています。今送っているので、479号です。

加藤:その凄い数をしっかりと続けられているのですね。

「公務員の仕事は暇」なんて嘘だ

加藤:話が変わるんですが、そもそもどういう経緯で自治体職員になったのでしょうか。

高倉氏:あまり将来については深く考えていなかったんですよ。小学校の時は星が好きだったので、「天文学の先生か、看護師になりたい」と考えていたり、中学の時には「司書か保育士になれたらいいかな」と考えていたし、高校もゲームが好きだから、情報処理科に入っただけなんです。

 高校は八幡浜高校という進学校にいて、成績によっては四国の電力会社にいける枠があったんで、そこを目指していたんです。情報処理が好きで得意だったこともあり、当時の成績を維持していればそこに行けたのですが、親が市役所を受けろと言うので市役所を受けました(笑)。実は、他にも公務員試験を受けましたけど、県と自衛隊は受からなかったです。

加藤:社会的な信頼があるから、行って欲しいということだったのでしょうか?

高倉氏:それもありますが、地元にもいられるということも大きかったんだと思います。電力会社だったら松山に行かなければいけないという話もあるので。ただ、仕事については市役所に入ってから相当鍛えられましたね。体育会系だったので。

八幡浜市役所

愛媛県 八幡浜市役所

加藤:なるほど。最初はどのような仕事だったのでしょうか。

高倉氏:最初に市民課年金係に配属されました。採用されて3、4日後には22時まで年金保険料の督促電話をかける仕事があって、市民からお叱りを受けることもあれば、必要書類を書いてもらう為に市民の家に行ったら、単身者の家で5時間ほど帰してくれないこともありました。

 初めての社会経験ばかりということもあり、時間をかけてしまったことはあると思いますが、「公務員の仕事は暇」なんて嘘だなって思いました(笑)。

加藤:他にも大変なことはありましたか?

高倉氏:精神的なものありました。なにぶん狭い人口3万人台の小さな田舎なので、市民課時代は、仕事上で自分が話をした児童扶養手当の受給者である母子家庭のお母さんとスーパーなんかで会うんですね。そういうことでは、少し気を遣いました。

 田舎だから、コミュニティが狭いので妹の同級生の親とか、行く先々で受給者が働いていたりとかそういうのはしょっちゅうでした。どちらかというと、受給者の方が私のような若い職員に家庭の話をすることが嫌だったんだと思いますけど、その微妙な空気感が伝わってくるので。

加藤:相手の方が年上になるわけですよね。

高倉氏:はい。その当時、私はまだ20歳ぐらいだったので。

加藤:その後、ご自身の希望で電算係に移られたんですね。

高倉氏:総務課電算係で基幹系システムの運用保守部門に配属されました。そこで使っていたソフトが、高校時代に使っていたものと一緒だということがわかり、プログラミングは得意だという自信もあったので志願して異動したところ、10年出られなかったです(笑)。

 市民課とは打って変わって市民に会うことがなくなり、殆ど電算室にこもって税や保険・福祉の各システムで保険料額を計算したり、通知書類を印刷することをしていました。小規模自治体なので、総務課の仕事と同時並行で、災害時の対応、選挙の期日前投票から開票、国勢調査事務等もありました。

加藤:かなり広範囲ですね。そこでは何が大変だったのでしょうか。

高倉氏:電算の仕事はコンピューターにデータを入れてデータ処理をするだけではなく、法改正や担当課の要望を踏まえてプログラムを修正したり、新規に作成したりしていたんです。その間に市町合併も経験して、システムの再編統合に伴い、担当課とベンダーとの間に入って調整していたら、毎日夜10時や12時なんてあっという間でした。

 体力的に一番辛かったのは、その後の医療制度改正と、人事異動が重なったときでした。システム改修や開発は経験年数がある程度必要な上、変更する理由となる各制度の知識も必要なので、だいたい5年か10年しないと異動できない職場だったのですが、ベテランが抜けてしまった時は代わりに毎日夜の12時から午前2時頃まで働いて、家に帰って3時間ほど寝たら役所に行く準備をして、8時30分には席についていました。

加藤:本当に激務ですね。

高倉氏:作業がうまくいかなくて徹夜したこともありましたけど、無事、朝のオンライン稼働時間に間に合うようコンピューター処理がうまく終わった時はホっとしました。その頃は年間1,000時間ぐらい残業していました。

 ただ、仕事で一番苦労したのはシステム変更を依頼してくる課との意思疎通で、法改正の中身を確認することや、担当者の要望をくみ取ることに、かなり苦心しました。

加藤:なるほど。それで、facebookのグループや外に出ていく活動に繋がって行ったのですね。

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