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小泉進次郎と脇雅昭が語る今後の日本と公務員の役割(中巻)

小泉進次郎 脇雅昭

公務員は政治にとってのシンクタンク

小泉氏:僕みたいな政治家の立場からすると、官僚や公務員の皆さんの存在って本当に大切なんです。やっぱり、日本はアメリカみたいにシンクタンクとかがないですから、実際にこうやって政治の中で、どっぷりと公務員の皆さんと一緒に仕事をするんです。これは国家公務員、地方公務員に垣根なく、皆さんが政治にとってのシンクタンク的な役割を持っていて、日本では今後もあまり変わらないと思う。

 これは、いままでマイナスに評価をされてきたところはあるんですよ。シンクタンクがないから、政権交代が起きても、公(おおやけ)の世界に流動性がないということはもちろん課題なんです。

公務員の生き方に流動性が足りない

小泉氏:僕は今回の文科省の天下りの問題だって、大きな流れの一つで言えば、公務員の皆さんの生き方の中に流動性が足りないと思っている。この流動性をもっと高めないといけないというのは、働き方改革の一番のエッセンスだったと思うんですよ。これは民間だけでなく、公務員の世界も同じだと。

 だけど、少なくとも霞ヶ関の皆さん、公務員の皆さんの政治家に対するインプット。それと、僕らから見えていないところを見てくれているところ。そういった、切磋琢磨を含めたものって、僕はもっと肯定的に評価しているし、僕にはないものを公務員の皆さんは本当に持っていますよ。

県の職員のことは悪人。国家公務員のことは極悪人

脇氏:この『よんなな会』をやっている趣旨は、地方創生、日本を元気にしていくうえで、「人」ってすごく大事だなと思っていて始めたんです。ちなみに、「人」というところに注目して、小泉さんが作られた『地方創生人材支援制度』という国や民間などから地方に人材を派遣する制度、あれはどういうきっかけでやったんでしょうか。

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小泉氏:きっかけはもう間違いなく東日本大震災なんですよ。僕がずっと被災地を回っている中で、岩手県の釜石市に派遣で行き、副市長になった嶋田さんという財務省の官僚がいるんですね。

 彼は最初、副市長ではなかったんだけども、それが功を奏したんだと思います。いきなり副市長として財務省から来ると、やっぱりお膳立てされるじゃないですか。現地の役人からしてみたら、国家公務員でしかも財務省の官僚が来て、もうそれだけでお神輿の上ですよね。だけど、そうじゃない形でいったことが彼にとってはプラスで、結果的にいろいろ巻き込まれてこき使われたんです。

 その中でも、やっぱり優秀だから目立つんですよね。そしたら、いきなり市長から「お前、副市長やれ」ということで副市長に上げられた。それで、外から入って来るNPOとかボランティア団体、企業とか、そういった皆さんと町をつなぐような動きをやってすごく感謝されたんですよね。恐らく、東北の被災地の村とか町を、財務省の官僚の方で見たことない人はいっぱいいますよね。

 市区町村から見ると、県の職員のことは悪人。国家公務員のことは極悪人と思っているところも、一部ある中で(笑)。

脇氏:今日この場に来ているのは、極悪人の皆さんということですね(笑)。

小泉氏:極悪人(笑)、市区町村からすると。

将来の種まきとしての人材交流

小泉氏:それで、「どんなもんが来るのか」と構えていたのに、それが一転して「嶋田さんいいね」となったんです。何か言えばすぐ誰かをつないでくれるし、いろんなアイデアを持っているし、パッパと仕事を捌いちゃうから。

 これと同じようなケースで、霞ヶ関の人間が被災地の副市長や、副町長として送り込まれていて、すごく感謝をされているのを見ていたから、僕が地方創生の担当になった時に石破大臣に、「これ、全国展開しませんか」と言いました。

 霞ヶ関にこもっている国家公務員の中にも、現場を見たいと思っている人間が、きっといるはずだと。そういった人たちにとってもプラスだし、地方の行政にとっても国家公務員とのお互いの理解が深まる良いツールになるんじゃないかなと。

 それと、今回この地方創生人材支援制度で地方に行っている皆さんの中には、帰ってこない人が一部出てくると思いますよ。片道切符というわけじゃないけど、現場で志が燃えちゃって。一部何人かそういうことを予感しています。どこの誰とは言えないけど(笑)。

 だけど、多くの人が帰ってきますよね。それで20年後、そういった経験をした人が霞ヶ関の中で出世して、役所の中で権限を持って組織を動かしていくときに、そこに行ったということが本当の意味で生きる時が、将来くるんじゃないかと僕は期待しています。種まきですね、だから。

地方公務員には、その地方のプロになって欲しい

脇氏:今その制度では、2年間地方に行くんでしたっけ?

小泉氏:原則は2年ですね。

脇氏:2年間経って、その人が戻ってしまった後には、その地方がどう自走していくのかは考えられていますか。

小泉氏:それは地方の皆さんの意識もあるんじゃないですか。ずーっと毎回毎回、国家公務員を送られ続けることが正解なのかというと、僕はそうではないと思うんです。やっぱり地方行政のプライドってあるじゃないですか。

 僕が地方の公務員の皆さんに期待したいことは、地方のプロになって欲しいですよね。ときどき残念だと思うことは、僕なんかもかなり全国を回っているんです。それでも、今日もマラソン大会に出たとか、しょっちゅう地元回りをやっているんですよ。

 そういった中で、ときどき行政センターの館長とか、地方の公務員さんと会った時に、僕の方が人を知っているんですよ。そして、僕の方が地域で何があったとか、誰々さんが亡くなってこの前お葬式があったことを知っていて、それを話した時に、「え、そうなんですか?」ということを言われたりすることがあると、ちょっと残念ですね。

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 だって、僕なんかは全国の活動があるじゃないですか。国会もあるし、地元の活動もある。地方公務員の皆さんは自分の地元にいられるじゃないですか。もちろん、いっぱい大変なことがあるのもわかりますよ。だけど、フォーカスできる立場にある中では、誰よりもミクロのことをわかって欲しい。そこって、すごく期待をしたいところですね。

 あとは、本当に地元のことを好きになって欲しい。この前、陸上の為末さんと話していたんですけど、その通りだと思ったんです。それは、「どうやったら早く走れるか」とか、「どうやったら勝てるか」ということは教えることができても、「勝ちたい」という気持ちや、好奇心のない選手には何を教えても意味がないという話で、これは公務員の皆さんも同じだと思うんですよね。

 「公務員の皆さんに何を期待しますか」って問われた時に、期待することはいくらでも話せるけど、思いのない人に言っても響かないじゃないですか。

思いのある人と仕事したい

小泉氏:今、僕は農林部会長なので、農水省と仕事することがすごく多いんですけど、すごく信頼している若手のチームがいるんですよ。僕が部会長になってから事務次官に頼んで、若手チームを作ってくれないかと。僕を支えて欲しいと。やっぱり僕と局長では年も全然違うし、そうやって支えてくれる若手の皆さんのやってくれていることに感謝しています。

 皆さんはわかると思いますけど、役所の中に「この問題だったら、この人に聞け」みたいなのってありますよね。『ミスター○○』みたいな人。一つの例をあげると、農水省の中に『ミスター畜産』というのがいるんですよ。もう、この人に畜産のことを聞けば何でも出てくるみたいな。歴史の証人なんですよ。

 その人と牛と豚の話をした時に、僕が胸を打たれたことがありました。彼は、「部会長、牛はいいんですよ。牛はいいんですよ」と、心を込めて言うんです。だから、「牛の何がいいんですか、豚はダメなんですか?」と聞くと、「やっぱり牛ですね」と。

 「じゃあ、牛のいいところを教えて下さい」って聞いたら、こう言うんです。「部会長、いいですか? 牛はですね・・・人が食べない草を食べて、人が必要な栄養分のある牛乳を生産してくれる、奇跡の生き物なんですよ」と。

 そこで、こう聞いたんです。「なるほど。じゃあ、豚はなんでダメなんですか?」と。その答えが・・・「だって、豚は僕らが食うものを食うんですよ」って。

会場:(笑)。

小泉氏:・・・という会話があったんですよ。この話の中身をどう受け止めるかは別として(笑)、僕の中には少なくとも、この人の牛に対する愛は伝わったわけですよ。そういう瞬間に政治家としては、この人と仕事をしたいと思いました。思いがあるから。そういう思いを持ってくれる公務員の方と会うと、一緒に仕事をしたいと思います。

思いのある公務員の方と出会うのはすごく嬉しい

小泉氏:時に、偏っている人もいますよ。この人こういうタコツボの中で生きてきてしまったから、こういう発想しかないんだなと。何言っても聞いてくれない。それはよくないけど、思いのある公務員の方と出会うのは、僕はすごく嬉しい。何かあったらその人に聞く。レクもその人を指名します。

小泉進次郎 脇雅昭4

 先ほどの話とまた別にね、『ミスター土地改良』という人がいるんですよ。

会場:(笑)。

小泉氏:今度、土地改良法の改正法案を国会に提出するんですけど、その時にその人はこう言ったんです。「部会長、この法律はですね。土地改良やってきた人間にとっては・・・40年の悲願なんです」。そんなの聞いてしまったら、「その仕事に圧倒的な思いを持っていたんだ」と肌感覚でわかるじゃないですか。

 さらにもう一つ、僕はオリンピックのパラリンピック対応も含めて、日本の農業の中で国際認証を広げるってことをやっているんですけど、その『ミスター国際認証』っていうのがいるんですよ。

会場:(笑)。

小泉氏:あと、最近見つけたのは『ミセス国際規格』っていう人がいて、「ルールメーカーとして、日本は世界に出ていかなきゃいけないんだ」っていう強い思いを持って、日本の農業の規格を国際規格化することにものすごい情熱を持っている人がいるんです。

 最近、その方とレクで出会ったので、「今度、局長じゃなくて、あなたが僕にレクをしに来てください」ということを言いました。僕はそういうやり方をしています。

脇氏:今度、よんなな会にミスターとミセスの人たちに全員来てもらいましょう!

小泉氏:面白いと思います(笑)。面白い!(笑)。あと、もう一つだけね、僕が政治家になってから今でも忘れないほど、圧倒されたレクをやってくれた官僚がいたんです。これは経産省の方なんですけど、僕がまだ野党の時代ですよ。その時に国会の中の部屋にいたんですよ。そこでレクの予定があったんだけど時間があまりない。そうしたらその人が、レクを始める前に何て言ったかというと、「小泉先生、1分コース、3分コース、5分コース、10分コース。どれでレクすれば良いですか? 合わせて話します」って言って。「あー、じゃあちょっと悪いけど1分で」って言ったら・・・

会場:(笑)。

小泉氏:分厚い資料を用意してきた中で、めちゃくちゃ端折りながら、「ポイントはここと、ここです」という1分なりのレクをやって、「ありがとうございました」って言って、パっと帰っていったんですね。なんかね・・・かっこよかったんですよ。

脇氏:かっこいいですね。

小泉氏:プロだなぁーって。

脇氏:ミスター・・・何ですかね(笑)。

小泉氏:・・・ミスターレク(笑)。

会場:(笑)。

上下関係を気にせず、わかっている人には答えて欲しい

小泉氏:プロ意識を感じますよね。そういう方と会うと、すごく嬉しいですよ。あと、レクで局長と一緒に話す時に、後ろの席に若手の人が座っているじゃないですか。局長が答えに臆している時に、「本当は私答えられるのに・・・」って雰囲気の時ありますよ。そういうときは、せっかく来ているんだから答えようよって思います(笑)。

脇氏:みんなを見てくれているってことですね。

小泉氏:僕のレクの時は、わかっている人は即、答えて下さい。そこから個人的な縁がつながりますから。

脇氏:ミスター・ミスになって下さいってことですね。

※本記事は全3話です

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