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大分県庁からベンチャー企業に1年間出向~官民の人材流動化は地方を活性化させるか?~

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 8月4日(木)に『越境会議vol.2』が開催された。『越境会議』は「31VENTURES Clipニホンバシ(運営:三井不動産株式会社)」、出向制度のオープンな活用を提唱する「企業間レンタル移籍プラットフォーム ローンディール(運営:株式会社ローンディール)」両社のコラボレーションにより、「新たな働き方」「新しいビジネスの創り方」の具体策を探っていく場である。第2回目となる今回では、「官民の人材流動化は地方を活性化させるか?」というテーマでイベントが行われた。

2016年4月から1年間ベンチャー企業に出向

 登壇した高倉圭司氏は新卒から大分県庁に入庁したが、2016年4月から1年間『トーマツ ベンチャーサポート株式会社』に出向をした。トーマツ ベンチャーサポート株式会社は国内外約3000社のベンチャー企業支援、大手企業イノベーションコンサルティング、官公庁向け政策提言や実行支援を行っている。

 高倉氏は同社で地方創生チームに配属となり、地方のメンバーと連携しながらベンチャー企業の支援を担当した。当初は勝手がわからず壁にぶつかった。そこで、自分の強みは何かと立ち返ることとなる。それからはバックグラウンドである自治体職員としての見識を生かし、ベンチャー企業と地方自治体の事業提携を支援することで成果を積み重ねていった。

 地方で同窓会を代行して開催するベンチャー企業の社長と一緒になって、土日を返上して提案書を作ることもあった。その支援をした会社が受注を勝ち取った時には、喜びもひとしおだったという。

 また、うつ病患者の家族を支援するためのSNSを開発している会社、その他、インフルエンザや結核などの空気感染を防ぐ装置を開発しているベンチャー企業の事業提携やPRも担当した。関わった仕事はこれだけに留まらない。地方自治体とベンチャー企業がマッチングする場を創出するため、全国8カ所でイベントを開催し、10数件の提携実績を生んだ。

 高倉氏は今年の4月に出向元の大分県庁の勤務に戻った。現在の役割は県内にある課題と、その課題を解決する技術を持っている企業をマッチングさせてプロジェクトを立ち上げることだ。この大分県庁の人材配置には、同氏が1年間民間企業で得た知見を生かそうという意図が浮かび上がる。

越境会議 高倉圭司氏

大分県庁 高倉圭司氏

自分の所属する組織のミッションが よりクリアになった

 高倉氏の登壇後には、総務省から神奈川県庁に出向している脇雅昭氏、イベントを主催したローンディール株式会社代表の原田未来氏を交えてパネルディスカッションが行われた。

 参加者から「精神的に一番きつかった時はいつか?」という問いに対して高倉氏は「右も左もわからない中で、自分の考えや仕事の仕方を適応させなければいけなかったこと」と答えた。

 続けて同氏は、「出向先では『公務員はイケてない』と思われていることが前提だと感じていて、プレッシャーがあった」と述べた上で、「実績を作る中で、自分のペースで仕事ができるようになっていった」と振り返った。

 また、「出向を経て、何が一番変わったか?」という質問に対しては、「所属する組織(大分県庁)における自分のミッションが、よりクリアになった」という。これは、自分の故郷や国の外に出ることで、初めて自分の所属していた地域や世界を、客観的に見られるようになることと同じ感覚かもしれない。

公務員が如何に安全で守られている場所にいるかがわかる

 また、ディスカッションの中で、総務省から神奈川県庁に出向している脇氏は、島原市の行なうIT企業への派遣研修制度に触れた。この取り組みでは、2週間の短い期間であっても、ベンチャー企業で業務を体験できるというものだ。

越境会議 パネルディスカッション

パネルディスカッション <左=原田未來氏><右=脇雅昭氏>

 脇氏は県庁での勤務経験からこう説明した。「神奈川県も行政職員数がここ20年間で約4割削減された。職員数の削減が進む自治体において、人事課が1年間もの間、人材を派遣する決定を下すことが難しくなっている。

 ただ、ベンチャーの『生きるか死ぬか』という厳しい環境を2週間経験するだけでも、公務員である自分が如何に安全で守られている場所にいるかがわかり、意識が変わります」と述べ、この取り組みの参加者の感想(資料右下)を読み上げた。

島原市職員のIT企業派遣研修

島原市職員のIT企業派遣研修

受け入れ側のベンチャーは100点を求めていない

 レンタル移籍プラットフォームを提供する、ローンディール原田氏にも質問が飛ぶ。「受け入れるベンチャー企業のメリットは何か?」、それに対しての原田氏の考えはこうだ。

 「そもそも、受け入れ側のベンチャーは100点を求めていません。『変化したいという意志』がある人間を欲しがっています。また実務的に期待される能力としては、社長がこなしていた俗人的な業務の仕組み化、汎用化などがある。仕組み化は大企業の人材が得意とするところです」

 レンタル移籍という目新しいサービスへの興味があってか、原田氏への質問が続く。「このレンタル移籍を進める上での難しさは何か?」、これに対して同氏は以下のように分析した。

 「人材育成ということの成果は可視化しづらい。今いる環境の外に人を出すことの価値がまだまだ認められていません。その価値を認識してもらうために、最もニーズがありそうなところから始めています。今は大企業からベンチャー企業に人を送ること。そこが一つ成功すると、他のパターンもトライすることができるようになります」

ベンチャーと行政が一緒になって公を作っていける

 最後に登壇した、高倉氏、脇氏は以下のように締めくくった。

 「(高倉氏)ベンチャー企業への出向によって自分自身の人生が変わった。同じ組織に戻ったとしても、心の持ちようは大きく変わる。そういう意味で組織を越えていく『越境』はとてもオススメ」

 「(脇氏)ベンチャー企業が社会課題に向き合い、公に関わることが増えてきた。こういう人たちと行政が一緒になって、公を作って行ける時代だからこそ、ともに行動に移して行きたい」

 
<当日のスライド>ローンディール社のレンタル移籍の仕組みと越境学習の効果

 

記=加藤年紀

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