インタビュー

【山形市 後藤好邦氏:第2話】世の中のための『したたかさ』

後藤好邦2

ターニングポイントは他の自治体職員との交流と山形市の事業評価業務

加藤:公務員になってからすぐに、仕事は上手くいくようになったのでしょうか?

後藤氏:いえ、10年くらいは別に市役所の中で目立っているわけでもなかったです。ただ、常に目的を持って仕事をしていたので、他の人と違う考え方で仕事をしてきたかなとは思っています。また、他の自治体の職員さんたちといろいろと交流することになってから、少しずつ考え方とか意識や振る舞いが変わってきたという感じですかね。

加藤:なるほど。オフサイトミーティングを作るきっかけになった関西での勉強会も、影響としては大きかったのでしょうか?

後藤氏:そうですね。それと、その頃は僕の役所人生の中でも一番仕事が忙しくて、毎月100時間くらい時間外労働していまして、あ・・今は0なんですけどね(笑)。

 その仕事が市役所全体の事業評価をして、各事業のコスト的な部分を見なければならない仕事だったんですが、まだまだ役所、ないしは役所の職員には甘い部分があるなという風にすごく感じたので、そこを改善するためには、やっぱり外を知る機会を持たないと、変わらないんだろうなあと。自分はラッキーなことに外と触れ合う機会を持たせてもらったから、そこに気が付くことが出来たので、そういう機会を若い職員にも増やしてあげたいと感じるようになってから、だんだん変わってきたと思うんですけどね。

加藤:事業評価は、700~800事業くらいのものを全部見られたんでしたっけ?

後藤氏:コンサルによる外部評価もしていましたが、担当3人でそれぞれ見ていたので、僕個人としては200~300事業は見ていたと思います。

加藤:かなり膨大な数ですよね。

後藤氏:そうですね。そういう仕事に全部で6年就かせてもらったんですけども、今でもすごく良い経験だったなと思います。そのおかげで「あそこでは、こういう事業をしている」っていうのが今でもなんとなくイメージがつきますし。

加藤:コンサルというのは、いわゆる大手の会社さんでしょうか。それとも地場の・・

後藤氏:最初の頃は、大きいコンサルさんにお手伝いをしてもらいましたけど、途中からは自力でやっていました。1年半くらいした頃から、多分コンサルさんは使ってないですね。ある程度のノウハウがわかれば自分たちで出来ますし、内部のことだったらコンサルさんより職員の方がわからないといけないことなので。

加藤:人がやるのを見たからといって、いざ自分がやるとなると難しいとは思うんですけども、それは後藤さんが「何が本当に目的としてあって、どうすれば上手くいくか」というのを深く考えられて進めていった結果なのかもしれないですね。

後藤氏:いえいえ、その時には僕だけじゃなくて担当が3人いましたからね。あと、いろいろな先進地事例を見させていただいたり、大学の先生にアドバイザーになっていただいたりして、そういったところから事業評価の革新的なことをいろいろと教えていただきました。

 そのノウハウを山形市に合う形でどうアレンジしていくかっていうのは、コンサルさんよりその自治体を知っている市の職員の方が適していると思いますし、そもそも我々がやらなければならないものなのではないかと思います。

異動したくない部署の方が、かえって勉強になることもある

加藤:ちなみに今までのお仕事の中で、充実していたというか、これは良い仕事だったとお感じになるものはどういうものでしょうか?

後藤氏:そうですね・・まあ成果はその時によって上がったりそうでなかったりだと思うんですが、今の前の前の仕事が、都市計画関係の仕事だったんですね。許認可の仕事だったんですけども、本当は違うところへの異動を希望していて、あまりそういった部署には行きたくないなと思って、最初はモチベーションが落ちていたんです。でも実務においては、許認可は本当に大事な仕事だと思いました。

 単に法律を学んで、その法律に基づいてイエス・ノーを判断するわけではなくて、ノーという答えを言わなければいけない時でも、どうしたらイエスになるかということも伝えられる能力っていうのが問われるんですね。また、相手が望むようなことを先に感じて、それを伝えてあげるとかっていうことが、市役所に限らずどの仕事でも大事なことだと思うんですよ。

 また、市街化調整区域(市街化を抑制すべき区域とされている)への規制に対する許可の仕事があったんですけど、良い社会を作るための法律のはずなのに、その規制が過疎化を促進させているような、そういう良くない方向に誘導していると思ったので、「もう少し規制緩和した方が良いんじゃないのか」という話をしました。

 その時からすぐに全てが変わったわけではないですけど、その頃に一緒にやっていた後輩がきちんと引き継いで進めてくれていますので、自分のしたことは間違いじゃなかったかなと思います。

 「異動したくないところの方が、かえって勉強になることもあるのかな」とすごく思っていて、そういったいろんな感情的なものとか、そういったところも含めて、一番成果が上がったというか、成長させてもらったのが都市政策課ですかね。

 その次が、自分の異動希望が叶って行革というところに異動したんですけど、逆に、大して成果上げられなかったなと思っていますし(笑)。

窓口の対応は、ただイエス・ノーを言うことではない

加藤:先ほど仰っていたように、昔に作られた法令で時代からずれてしまっているというようなものは、後藤さんから見てもまだ沢山あるというイメージですか?

後藤氏:法律の目的の記述はずっと変わっていないために、その手段も前例踏襲で変わっていない部分があるんですよ。なので、「こういうことをやりたいんだけど」と言った時に、「それは今までもいろいろ相談受けたんですけど、出来ないんですよ」となってしまうことが出てくる。

 でも、法律で一番大事なことは目的なので、その手段は時代によって大きく変わっていいと思うんですね。だから法律ってずるくてですね、「その手段の考え方は自治体の判断で決めても良い」、そういう条文が必ずどこかにあるんです。

 だからもし、そのやりたいことが地域の実情に合っていて、なおかつその法律の解釈の仕方によって出来る方法があるのであれば、積極的にそういう方向に導いていくっていうのも役所の職員の仕事だと思うんですね。

 窓口の対応自体は、決して民間と比べて接し方が悪いというわけではなくて、問題は、多くの自治体職員がイエスとノーでしか回答していないというところだと思います。

 つまり、相手の望むことを先に気付いて出来ることをお伝えしたりとか、さらには、やろうとしていることが地域のためになるのかならないのか、同じような解釈の仕方で出来る出来ないがあったとしても、地域のためになるのかならないのかというところも含めて、この人だったらお手伝いした方が良いなとか、この人は公益的なことじゃなくて私益的なことしか考えていないから良くないなとか、そういう判断をしながらきちんと導いてあげられるというのが、一番良い窓口業務のあり方だと思うんですよ。

 それは窓口だけでなく他のことでもそうなのかもしれないですけども、上手に法律を使っていくということ、単に今までの考えだけでイエス・ノーを言わないことが大事なのかなと思いますけどね。

世の中のための『したたかさ』

加藤:そうすると解釈の幅っていうのはものによっては広く取れるということですね?

後藤氏:はい。だと思いますね。例えば法律で「何々しなければならない、ただし・・」ってところがあるので、その『ただし書き』をどう使うかが大事になってくると思います。いかに例外をうまく上手に使うか、ただし、例外を使うとその良くない波及効果も生み出すリスクがあるので慎重にバランスも取らなければならない。

 そして、その逆の状況もあるんですね。自分では認めない方が良いと思うことなのに、上の判断で認める方向に動いている場合です。人が判断を行うので、解釈のずれが発生することは当然あります。そして自治体は組織なので、最終ジャッジはその決裁権者となります。だけど、そういう時でも、最終的にはここは認めますけど、ここは法律の趣旨と違うところだから譲れませんとか、そういうことも出来るんですよね。

加藤:組織の中のことなので、最終的には決裁者が判断しますからね。ただ、だからといって諦めて何もしなければ流れ作業と一緒で、自分自身の価値は産み出されないですもんね。

後藤氏:はい。最終的には組織の判断にはなると思うんですけど、自分の意思として、すべきこととすべきではないことを上司に伝えて、認めるべきではないことは元の通り100%ではなく、100%より90%、90%より80%としにいくべきだし。

 逆に、やるべきことであれば、0%から10%、10%から20%に上げていくような努力をするってことが大事かなって思います。ただ、そこであまり頑張りすぎると組織からの評価も悪くなって、長期的には自分の意見が通らなくなるようなこともあると思うので、そこは賢く『したたか』に(笑)。

加藤:『したたかさ』は、すごく大事だと思います。『したたかさ』というと、悪く受け取る人もいると思いますが、公益、組織のための『したたかさ』というのはとても大事。民間組織でも同じですね。組織内のバランスを考慮しながら、長期的に最大限の結果が出せる状態に自分を置くというのは、組織の目的を達成する原動力になるためには間違いなく重要だと思うので。

後藤氏:基本的にこういう考え方をしている公務員ってマイノリティだと思っています。ただ自分は組織の中で認められているマイノリティになりたいなっていう風に思っています。「公務員なんて外でネットワーク作っても、何の役にも立たないのによくやるよね」って言われるのはマイノリティである証拠ですからね(笑)。

加藤:すごく良いことだと思いますけどね。

後藤氏:でも、「良いことだよね」で終わっちゃいますからね。悪い言い方をすれば物好きって言われて(笑)。

加藤:それは大分悪い言い方だと思いますけどね(笑)。オフサイトミーティングに何百人集まったと言っても、実行してやるのとただ言うのは違くて、実際にはそこまで大きくなるまでに物すごいご苦労があったと思うんですよね。その空間で、モチベーションの高い人たちが垣根を越えて出会って意見交換が出来る。素晴らしいですよね。

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