インタビュー

【塩尻市 山田崇氏:第6話】上司は5年もすればいなくなる

山田崇6

死を意識するから 生が輝く

加藤:ストレス耐性は強いですか?

山田氏:感受性が強いので、結構持っちゃいます。

加藤:それはどう向き合っていますか。

山田氏:中2の時に両足の膝のあたりに軟骨が出て来ちゃって、両足を手術して一週間入院したんですよ。その時、『ノルウェイの森』を読んでいて、上巻の48ページにね、唯一ゴシック体でこの言葉が書いてあるんですよ。

 「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」。生きている、だから死をいつも感じています。「最後は死ぬからさ」って意識するから生が輝く。将来、自分の未来で決まっていることは、死ぬことだけだと思うくらい、俯瞰しちゃう。

90万人の地方公務員が存在することにも意味がある

加藤:だからこそ、ストレスを感じるようなことがあっても、「まあ、死ぬことに比べれば大した問題じゃない」と割り切れるのでしょうか。

山田氏:そうそうそう。それと、世の中に起きている事象は、まさに「起こるべくして起きている」と思っています。

 だから、約90万人の地方自治体職員が存在すること自体にも意味があって、一人ひとり、その価値がある。ひょっとしたら、クビにならない我々だからこそ、痛みやストレスを感じるべきなのかもしれない。

 もしかしたら、痛みと思っているものを遠ざけると、本質までたどり着けないのかもしれない。公務員だから、文句も言いやすいというのもあるじゃないですか、いろんな人からね。

加藤:なるほど。

山田氏:あ・・・、あと、酒がすごく好きだから飲んでいますよ(笑)。

居心地が良いということは 本領発揮できる場所じゃない

山田氏:ただ、今ちょっと感じているのが、昔は「役所は変わってかなきゃいけないよね」って言っていたんだけど、今は、「自分がなんかど真ん中に来ちゃっている」という違和感があるんですよ。

加藤:その違和感は何処から来るんでしょうか?

山田氏:割と居心地もいいし、職場にも、職場外にも多くの仲間もできてきた。ただ、「全てのものが陳腐化する」というドラッガーの言葉を思い出すんです。居心地が良いってことは、私が本領発揮できる場所じゃなくなってきているのかなと。

 だから、また自分の中で新しい挑戦をしないといけないと思っています。

地域に飛び出す公務員アウォード2013 山田崇

地域に飛び出す公務員アウォードを受賞した山田氏

市役所は民間に比べてぬるいから すぐに頭が出る

加藤:地方公務員を辞めるということは考えないのでしょうか。

山田氏:ソフトバンクの人事部長と話したりとか、リクルートの新規事業開発室の人と話して感じるのは、一緒に争いたくないなって(笑)。さらに言うと、市役所って民間に比べて全然ぬるいから、ちょっと頑張ればすぐに頭が出るじゃないですか(笑)。

加藤:でも、民間人ではなく公務員として山田さんのような人がいるから、民間と行政が一緒に動けるというのはありますよね。

上司は5年もすればいなくなる

加藤:組織が硬直化していて、山田さんのように活躍できないという人もいます。山田さんはどう向き合っていますか?

山田氏:よく若い職員が「上司のせいで・・・」って言ったりとか、「今の体制ではできない」とか言うじゃないですか。

 「でもね、上司、特に部長課長は5年もすればいなくなるじゃん」って言っています。年功序列だとか終身雇用ということの悪さでもあり、良さでもあるんですよね。ある意味、誰でもその挑戦ができる。

 ただ、60歳で自分が部長という役職に就いたからといって、急にその日から本領を発揮できるわけじゃない。今から自分で鍛えていかないといけない。

変えたらインパクトの大きい10人が誰なのか

加藤:いずれにせよ、自治体は今よりも良くなっていくと考えているのでしょうか。

山田氏:多分ね、自治体の規模によっても違うと思います。例えば、職員が2万人とかもいたら、簡単じゃないですよ。

 でも、560人の塩尻市だったら可能性はある。『MICHIKARA』を一緒にやらせてもらっている株式会社チェンジウェーブの佐々木裕子さんは、「500人の民間企業も塩尻市も、変えるのは一緒。最初に変えたらインパクトの大きい10人が誰なのかと考える」と言っていたんですよ。

 3年から5年やってみると、50人くらいになる。「そこに来るまで我慢だ」と言われました。だんだん、変わろうと思っていなかった層が、ソワソワしてくるんですって。よくわからないけど、「俺らもそろそろ、あのプログラムやらなきゃいけないね」と。これが2万人になると、私もイメージがつかない。

加藤:なるほど。

山田氏:だけど今、人口5万人から10万人規模であったら手応えを感じています。変えていけるなと。

 もっと言うと、西粟倉村とか、海士町のような人口2000人前後の自治体は、既に何となくモデルが見えてきているじゃないですか。イケてる首長と、それに伴走する市の職員、そして、イケてる民間の人たちや移住者が活躍できる場が存在している。

山田崇6-2

やる中から必ず何か生まれてくる

加藤:仕事の中で、意識されていることはありますか?

山田氏:私自身、自分を信用してないんですよ。要は、自分にPDCAの、良いP(プラン)があるわけないと思っているんです。

 だから、やってみなきゃわからない。でも、やりながら考え続けなきゃいけない。この2つのサイクルがあります。商工会議所の時も、3年間で10個ぐらいの新規事業立ち上げたんですよ。だって、どれが当たるかわからないから。

 本当は、正解がわかっていてやるのが一番いいけど、私は自分自身をあんまり信用してない。だけど、やる中から必ず『何か』が生まれてくるということは、仮説として持っている。

加藤:やってみて、状況を見ながらまた変えていく方が、早くゴールに着きそうなイメージがあります。

本も新聞も引用するつもりで読んでいる

加藤:山田さんのインプットの量は膨大だと思うのですが、いつ頃からインプットし続けているのですか?

山田氏:人に喋る機会をもらってからなので、10年くらい前からですね。明治大学政治経済学部で話をすることだったり。

 ラーニングピラミッドでいうと、座学が一番下だとしたら、人に教えるっていうのが、一番自分のラーニングになっているというのは実感していますね。あと、元ナンパ師的に言うと、モテたいから、人に言えるために読んでいます(笑)。モテたいから(笑)。

抱くと決めたら抱く

加藤:今もモテたいと思っていますか?(笑)

山田氏:モテたいと思っています。新聞も人に言うつもりで読んでいるし、本も、さっき言ったように引用するつもりで読んでいます。もう最初っから。

加藤:めちゃくちゃ面白いです(笑)。

山田氏:これも元ナンパ師的に言うと、抱くと決めたら抱くんですよ。人を動かすことも同じなんですよね。本当に目に見えて変化を起こしたいからこそ、エビデンスを使って相手に動いてもらう。

※本インタビューは全7話です

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