インタビュー

【○○市 匿名A氏:第1話】市役所が児童虐待に向き合う現場とは

匿名

※ご本人及びご本人が所属される組織より、匿名にすることを条件に掲載しております。関係者へご迷惑をおかけする可能性があるため、人物の類推・特定などは、お避けいただけますと幸いです。

―A氏(40代男性)は児童虐待を防ぐために日々奮闘している。今回は、児童虐待というセンシティブな内容も含むため、都合によりA氏とさせていただいた。児童虐待を防ぐため現場では何が起きているのか? 何が課題なのか? 今後どういうことが望まれるのかを聞いた。また、後半では自主研という自主的な勉強会に参加することで、活躍の場が広がっていくさまと、今後の自主研のあり方、地方自治体に対する思いなどを伺った。

児童虐待を防ぐ仕事をしている

加藤(インタビューアー):現在のお仕事について教えて頂いても良いですか。

A氏:2012年度から主に児童虐待の対応業務をしています。4年間は担当者として、今年度からは係長として勤務しています。普段の業務では、近隣の方から「子どもの泣き声や、親の大きな怒鳴り声がする」というような連絡がきた時に、子どもの安全を確認し、必要に応じて注意喚起をしています。

 それと、学校や保育園などから「虐待を受けているかもしれないお子さんがいるので、一緒に支援して欲しい」という連絡が入ります。そういう連絡を受けて、お子さんやご両親に会って状況を確認します。それが虐待ではなく、ただ泣きやすいお子さんという場合もあって、「大変ですよねー」と言って済むのが一番良いんですけど、実際にはお母さんが育児に大きなストレスを抱えて、手を出してしまっている時もあります。

 そういう時は、保護者を支援することになり、相談員がお母さんの話を聞いたり、ヘルパーさんを派遣したりするなどのサポートをして、虐待の防止を目指しています。

相談員には女性の方に適性がある

加藤:係長であるAさんが相談員の方をまとめられているんでしょうか。

A氏:そうですね。

加藤:直接、○○市役所が相談員の方を採用されているのでしょうか。

A氏:はい、その通りです。

加藤:相談員には、どういうバックグラウンドを持たれている方がいらっしゃるのでしょうか。

A氏:○○市の相談員は社会福祉士や精神保健福祉士、あと、保育士などの資格を持っています。

加藤:女性の方が多いんですか?

A氏:全員女性ですね。実際問題、「男性じゃ勤まらないことも多いだろうな」と思います。

加藤:女性の方に適性があるということでしょうか。

A氏:あると思います。

加藤:どういう所にその適性を感じられますか?

A氏:分かりやすいことだと、産後のお母さんが一人でお家にいるところに、男性の人が来たら多分怖くて玄関を開けたくないですよね。

加藤:確かにそう思います(笑)。

A氏:そこからしてまず、女性の方が適していると思うんですよね。あと0歳児がいるお母さん向けの教室を開いていたりすると、授乳の時間もあったりして、どうしても男性がそこにずっといる訳にいかなかったりもします。

虐待の通報があった時の対応

加藤:「虐待の可能性がある」と連絡が入った場合は、誰が訪問に行くのですか。

A氏:最初の訪問では、市の事務職員1人と相談員との2人体制で行くようにしています。

加藤:なるほど。

A氏:対応としては、心配の連絡が来た時に『緊急受理会議』というものを開き、その場にいる担当者全員が集まって、どのように対応しようかというのを決めます。もし、該当する世帯に関わりのある方、例えば幼稚園や保育所に通っているなどが分かれば「どんなお子さんなのか」とか「どんなお母さんなのか」というのを聞いたりして、訪問すべきかどうかなどを話し合います。

 ただ、「隣の家の子どもが、今まさに大きな声で泣き喚き続けている」とか、「子どもが一人外で泣き続けているので心配」となると、じっくりと調査をしている場合ではないので、とりあえず、すっ飛んで行くという感じですね。

加藤:緊急ではないケースというのは、どういう形でお話が来るんですか。

A氏:例えば、保育園から「お母さんが育児でストレスを抱えて大変そうだよ」といったことがあります。ただ、本当に「わが子の面倒を見たくない」と言っている人はそんなに多くなくて、どちらかというと、お母さん自身も大変な思いをされていて、余裕がない方が多いです。あとは、重い病気を抱えている方や、鬱になっている方もいます。

加藤:そういう連絡というのは月に何件くらい来るんですか。

A氏:時期によって偏っているので、月によって平均というのは難しいですね。年度の前半が多くて後半が静かになるんです。前半が多いのは、窓が開いている季節の方が泣き声や怒鳴り声を聞こえやすく、寒い季節に差し掛かり窓が閉められると減るのではないかとは言われてます。

加藤:シビアな状況が多く、相談員の方に掛かる精神的な負担が大きいと思います。そこはどう気をつけていますか?

A氏:担当内で情報を共有して、職員が一人で抱えずチームとして判断をする仕組みにしています。その方がより適切な判断ができるということもありますが、そうでないと、何か事件が起きた時には一人で背負いきれなくなってしまう面もあるためです。

「私がもっとどうにかできたんじゃないか」と抱え込んでしまう恐れ

加藤:どういうシュチェーションの時に、相談員が疲弊してしまうのでしょうか。

A氏:やはり相談で関わっている方の、生死に関わるような話や、重篤な虐待に発展してしまうことがあると、大きなストレスにつながると思います。
 生死に関わる話についていうと、高齢の方が病気や老衰でお亡くなりになるのと違って、相談対応していたお母さんが自殺を図ったりしてしまうと、相談員としては「もっとどうにかできたんじゃないか」と抱え込んでしまうようなことにもなるので、そういうところは本当に注意しています。

 また、わたし自身も過去の経験として、訪問などで関わっていた家庭であっても虐待の真相に気がつくことができず、大きな事件に発展してしまったこともあり、「あの時にもっとしっかり確認しておけば・・」と自問自答してしまうようなこともあったので、後悔することがないような動き方をしていこうと担当内で話し合いながら日々対応しています。

※本インタビューは全6話です

他のインタビュー記事を読む

頁トップへ