インタビュー

【弘前市 佐々木絵理氏:第3話】まちの中で一生懸命頑張っている大人たちがかっこいいと思った

場づくりをしたいと思ったきっかけは学生時代

加藤:なぜ佐々木さんは、そこまで『場づくり』にこだわっているのでしょうか。

佐々木氏:「対話」というものの力を、学生時代から感じていたからかもしれないですね。1つは、「キャリサポ」という「NPOカタリバ」さんの青森バージョンみたいな、キャリア教育の取り組みに大学1年生の頃から関わっていて、青森県内の高校をまわって、高校生と将来のことや自分自身の生き方について、ずっと対話をしてきました。
 もう1つは、今の仕事と同じく町内会を対象に、その地域に住む方々と一緒に、「自分たちの地域のこれから」について話し合う場づくりに関わってきました。

 その2つに共通していたのが、「今は特に何も興味がない」「嫌々この場に来ている」「自分たちには力がない」と思っている人たちであっても、多様な人の価値観に触れたり、対話を通して、自分の深い部分に向き合うことができたり、やる気が生まれてきたり、自分事としてとらえて、自分なりの一歩を踏み出すことができたりと、成長できる場になるんだなあという事でした。

キャリサポ

佐々木氏:場を通して、出会いやつながりが生まれて、関心がない者同士も関心を持ったり、楽しいと思えたりするようになる。それって、すごく良いことだなあって思ったし、自分自身ももっと早くそういう場に恵まれていたら、もっと変わっていたのかな・・・と思うところもあるので、なおさら、そういうきっかけとなる場を広げていきたいなあと思っています。

地域コミュニティにはその先の課題がある

加藤:これからは、地域コミュニティにはどういうことが必要だと思いますか。

佐々木氏:世代を越えて、地域に住む人がいかに自分たちの地域に興味をもって、自分ごととして捉えたり、自分たちでできることは自分たちでやってみようと思える環境をつくるかが大事になってくると思います。

加藤:なるほど。

佐々木氏:遠い昔は、行政もあまりきめ細かいサービスというのはしていなかったので、市民が自分たちで、自分たちの必要なものを作る時代だったと思うんです。

 そこから国も豊かになって、行政が必要なサービスを全部やっていくような時代に変わっていったけど、人口減少と少子高齢化が進んでいる現在では、税収は減る一方で社会保障費はどんどん増えていく。役所の使える人もお金もだんだん減ってくる。そうなると、一旦行政が預かっていった役割やサービスを豊かだった時代と同じようにやることは難しくなってくると思うんです。

 でも一度、当たり前になったことに人は慣れちゃうじゃないですか。いったん行政が請け負ったことを地域に戻していくことは、そう簡単じゃないと思います。だから、「町内会の力がより必要になる」「自分たちでできることは、地域の中でまずはやってみることが大切だ」という話になった時でも、あまりそこが伝わらない。逆に「行政の怠惰だ」とか、「それは行政が考えるべきことだ」と言う人はまだまだ沢山いると思います。


佐々木氏:想いがあって自分たちで一生懸命活動している人や団体も地域の中にはいるけど、やっぱり地域の中でお互いが話し合える場やきっかけが今はほとんどないから、団体同士も繋がっておらず、それぞれがバラバラな状態で地域の中で上手くその取り組みが活かされていない例もあるように思います。

 だから、まずはお互いが対話を通して理解しあえる場をたくさんつくること。地域住民や地域の中に住む色んな立場の人が集まって、つながれる場をつくること。その話し合いのプロセスの中で、「これは自分達でもできるんじゃないか」とか、「地域の中で一緒にチャレンジしてみようか」と思えるような機会をつくっていくことが、まずは重要になってくるのかなと思いますし、それを仕組みとしてつくることができればなあと思っています。

加藤:なるほど。そういう危機意識が根底にあって活動を始められたわけですね。

佐々木氏: 今は、スタート地点からもう1歩先のステップにすすんで、一緒にやれることが増えてきたと、この動きが始まってから3年目になってようやく感じます(笑)。

加藤:そうやって、第一歩踏み出したってことはすごく大きいことだと思うんですよね。何かをやっていることも大事ですけど、『一緒に』何かをやっていることにとても大きな価値があると思います。

まちの中で一生懸命頑張っている大人たちがかっこいいと思った

加藤:もともと地方自治体で働くきっかけはどういうものでしたか。

佐々木氏:出身は弘前市じゃなくて青森市なんですけど、大学の時に青森市で自治基本条例っていう協働のまちづくりの基本になる条例を、市民と一緒に検討して作っていく検討委員会があって、それに学生委員として参加させてもらったのがきっかけです。

 当時、市民協働のまちづくりについての意識を地域の中で高めること、住んでいる地域について住民同士語り合う場をつくることを目的に、さっき話をした市内の各町内会をベースに、住民や行政の職員、学生、有志の市民の方とかと一緒に、自分たちの地域について「こういう地域にするために、自分たちができることをみんなで考えよう」という、対話の場づくりをする企画・運営を経験したんです。

青森市 自治基本条例3

佐々木氏:その時に関わっている町内会長さんはじめ、地域に寄り添って活動している方々が、地域のことやその地域に住む住民や子どもたちのことを本気で思って努力をされていて、ものすごくかっこいいなと思ったし、そういう市民の方と一緒に場を作ったり、その地域や地域に関わる様々な人の想いを支えていく職員さんの姿を見て、こういう働き方って素敵だなって思いました。

 地域の中にある日常の生活や暮らしでもないですけど、「自分たちの地域のことは自分たちでやってみよう」とか、その地域で頑張ろうとする方たちの想いを大事にして、そこを育てたり、つなげたり、一緒に地域をつくりあげていくような仕事をしたいって思ったのがきっかけです。

 当時、自分の周りにそういう活動を支援するNPOのような組織があれば良いなとも思ったんですけど、あまりピンとくるものがなかったんです。かといって、そういう団体を立ち上げるスキルや勇気もなかったので、「今の自分の力では、行政の職員として地域に関わって仕事をするスタイルが良いんじゃないか」という気持ちの方が強くなりました。

青森市 自治基本条例4

加藤:そういう活動をしているNPOみたいなのはそんなに多くはないんですか。

佐々木氏:地元で考えると、魅力的に感じる活動団体を見たことがなかったですね。あと、やっぱり「働いて食べていけるのか」っていう不安はありますよね。特に地方だと、仕事といえば公務員か銀行かみたいな風潮があるぐらいなので(笑)。ただ、この職業が全てだとは初めから思ってなかったですし、仕事をしていく中で、「自分が本当に大切にしたい地域との関わり方や生き方はなんなのか?」っていう自分への問いかけは、今でも大事にしています。

加藤:そういう意味では自治体職員という仕事を通じて、まさにやりたいことをやれているわけですね。

佐々木氏:そうだと思います。

※本インタビューは全6話です

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