インタビュー

【弘前市 佐々木絵理氏:第2話】「文句を言ってやろうと思ったけど、熱意に負けたよ」

佐々木絵理2

はじめは相手にもされなかった

加藤:地域コミュニティの難しさがあったわけですね。そこからどうやって、関係を構築していったのでしょうか。

佐々木氏:町会連合会では月に1回定例理事会という集まりがあって、その連合会の理事会の中で、担当になってすぐに市役所の担当者という立場から話をさせてもらうことになったんです。まず、初めのミッションのとっかかりとして、「先進地視察に町内会の関係者と一緒に行って、先進地のノウハウを学んで次につなげたい」という目標があったので、そこで「今年度は町内会支援の取り組みの先進地に一緒に視察に行って、一緒に学びたい」と話をしていったんです。

 ただ、採用2年目の、「町内会とはなんぞや」ということすら、あまりよくわかっていない若手ぺーぺー職員が話したところで、「そんなことやる時間があったら、他のことをやれ。課題は他にもいっぱいなんだ」とマイナスなことばかり言われ、はじめは相手にもされないような感じでした(笑)。一緒に前向きに地域を良くしていきたいのに、お互いの理解や信頼もないので、丁寧に説明したつもりでもなかなか前に進まなくて、「協働」の難しさを非常に感じました。

粘り強く話をして人を動かしていく

佐々木氏:でも、その難しさを知れたのは本当に大きかったです。そこからは、自分で気になった町内会の疑問はとにかく徹底的に調べ続けました。庁内の関係する課はもちろん、役所以外でも関わりがありそうな人へもヒアリングしました。そこで、それぞれの立場で考えていることを知ったり、町会連合会の事務局も職場に近かったので、機会があるたびに挨拶したり、町内会の抱えている課題やその解決策について自分が考えていることも、事務局の職員さんにどんどんぶつけてみたりもしました。

町内会3

 結局、そこからそうやって粘り強く話をしていったりして、2ヶ月ほど経った頃に町内会長さんと市の担当職員で、一緒にいくつかの視察に行くことになったんです。その時私が一緒に行った町会長さんは、会議の場で行政に対して、結構厳しいことを言う方だったのですが、一緒に過ごす中でたくさんお話していくうちに、厳しく行政に対して言うのは、それだけ本気で自分の関わっている町内会の活動に想いを持って取り組んでいること、町内会長も地域に戻ると住民の要望だったりクレームを聞き、精神をすり減らしながら日々頑張っていること、でも抱える課題はたくさんでどうしようもない状態なんだということをはじめて知りました。

 ようやく、ぼんやりと町内会の仕組みがわかってきた自分としては、その時の町内会長さんの生の声の衝撃がすごくて、自分なんて全然甘いと思いましたね。いくら頑張っていても、地域が自分たちの力で変わっていく意思を持てなければ、この課題はいつまでたっても変わらない。

 そんな中、「これは仕事だから・・・」という表面だけの薄っぺらい気持ちで自分が町内会長さんたちと向き合っていても、何も変わらないなと思いました。絶対、頑張る町内会長さんたちが報われるように、少しでも楽になるように、少しでも今取り組んでいる活動にもっともっと誇りが持てるように行政としてサポートすること、「行政=敵」ではなく、同じ未来に向かって進むべきパートナーだと思ってもらえるよう努力することを、その時心に決めました。

議論2

「文句を言ってやろうと思ったけど、熱意に負けたよ」

佐々木氏:そこからは、「視察で学んだことを一緒にやっていきましょう」という提案をしていきましたが、否定的な意見は毎回出ました。なぜ否定的な意見が出てしまうのか、その背景がなんなのかを一個一個丁寧に聞きながら、その上で、「我々はこうできればと思っています」だとか、「こういう風にしたいです」っていうのを伝えながら、事業を担当している先輩と一緒に提案を実行していきました。そうやって、しつこいぐらいに話し合いながら、小さなアクションと成功体験を積み重ねていくと、少しずつ、自分たちのやっていることに対して理解してくれる人や助けてくれる人が増えてきました。

 年度末に近づいてきたある日、次年度からの新しい提案をする場をつくってもらったんです。その日を迎えるにあたって、何か伝えてもまた叩かれるんじゃないかとビクビクしていたんですが、当日、思い切って私の気持ちを含めて伝えたら、批判ではなく拍手をしてもらったんです。そしてその提案はとりあえずやってみるという方向に。

 中には「絶対文句を言ってやろうと思ったけど、佐々木さんの熱意に負けたよ」ってあとからこっそり言ってくれた人もいましたが、その言葉はすごく嬉しかったですし、約1年経ってようやく、信頼関係が築けるようになってきたのかなと思った瞬間でした。

町内会2

動き出した自治会との取り組み

加藤:たとえばどういう取り組みをしたんですか?

佐々木氏:基本的には、他の自治体でも既にチャレンジしていることをマネしてみながら、事業を一緒に担当している先輩と一歩ずつ取り組んでいます。たとえば、町内会が具体的に何をしているのかがわかる情報やPR活動も何もなかったので、まずは市のHPに情報を載せたり、町内会の活動内容がわかりやすくて手に取ってもらいやすいカラーのチラシを作りました。

 それらを使って、不動産団体さんと協力しながら、アパートなどの物件の契約時にチラシを配って声掛けをしてもらえるような仕組みをつくったり、市役所の転入手続きの窓口からもお知らせをしてみたり。

 実際に、それがきっかけで市役所に加入の問い合わせがあって町内会に入る人もいましたし、町内会長さんも自らチラシを活用してお知らせした結果、加入したと喜びの声もあったりしました。他にもいろいろ取り組んできたのですが、周りから見て目新しいものではなくても、こうやって地域側と一緒に成功体験を積み重ねていくことで、確実に、互いが以前より前向きに、そして新しいことも受け入れてみようという雰囲気が広がってきたように感じています。

関わり合いの多い元気な地域にしたい

佐々木氏:自分が直接企画したものとしては、町内会や地域コミュニティに普段関わりがなかったり興味がない人でも、地域の中での対話の場から関わることができるようになればいいなと思い、『まちづくりファシリテーター養成講座』という講座を作りました。

 幸い、他の課の事業で中学校区をベースにした対話の場づくりを行っているところがあったので、他課とも協働しながら、地域の中で活躍できる市民ファシリテーターの育成も行っています。講座の中では『ファシリテーショングラフィック』という、ファシリテーションにおいてものごとをグラフィック化、可視化をしながら対話を促進させる会議などの場づくりの時に活用するやり方も学ぶのですが、私も仕事の中で少しずつ活用しています。
ファシリテーショングラフィック

 そういうことによって、自分たちが住む地域の中で世代を超えて集まる場、対話できる場、そしてそのような対話を上手く促進できるような市民も増えて、関わり合いの多い元気な地域になったらいいなと思っています。静岡市でやっていた対話のコンファレンスにさっきまで行っていたんですが、事務局を行っていた静岡県牧之原市では、そういう『場づくり』を、市民ファシリテーターを育てながら、もう10年以上かけてやってきたりしていて、そういう学ぶべき先進事例もあるんです。

※本インタビューは全6話です

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