インタビュー

【元栃木県庁 西須紀昭氏:第7話】人との関係を嫌がらない、惜しまないことで幸せが生まれる

市町村職員が元気に明るく、前向きでやっていくことが大きい

加藤:受益だけ上げて、負担はそのままにしてきた。その状況の中で、自治体はどのようなことができるのでしょうか。

西須氏:福祉だって結局の話、制度的にちゃんと国民を守れる状態じゃあ全然ないわけ。そうすると例えば、ボランティアさんに集まってもらったりする必要もある。地域資源である『人』に集まってもらって、「こういう支え方をやっていこうね」っていうのが必要で、それを県が旗振ってできるかっていったら、できるわけがないんだよね。

 そうすると、その地域の人たちと接している人間がやるしかない。結局、人と人の関係性を積み重ねた地域が、いい福祉水準を持った地域になっていく。そういうのを1つ2つと増やしていくためにも、市町村職員が元気に明るく、前向きでやっていくことが大きい。

 だから、「自分の周りの人たちのために」「自分の地域のために」「自分自身の明日のために」、本気で頑張るしかないという人たちを支援するための県庁の役割も、より強くしていかなくちゃいけないと思っています。

人と人との関係の中に、存在できたということが素晴らしいこと

加藤:地方自治体でお仕事をする『だいご味』を教えていただいてもいいですか。

西須氏:人との出会いが楽しい。それに尽きるんだわな。それがある意味楽しいと思えちゃう。能天気だから、極楽とんぼだから。どこにでも『嫌な人』って絶対いるはずだもんね。でも、入口は嫌だなと思ったって、一歩踏み込みゃ結局いい人だったりすることも多い。

 そういう中で、俺は本当にずっと恵まれてきちゃったわけなんで。だいご味といえるかわかんないけども、少なくとも、そういう人と人が俺の今までの人生をずっと幸せにしてくれた。

 まぁ、明日、交通事故で死ぬかも知れないけど(笑)、少なくとも生きているうちは、多分これからも、俺を幸せにしてくれるはずと思える。俺は本当にラッキー過ぎるけど、やっぱり人と人の中にあって幸せを感じられる。そういう人と人との関係の中に、存在できたっていうことは素晴らしいことだな。

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幸せは、人との関係を嫌がらない、惜しまないことでも生まれてくる

加藤:豊富なご経験をされている中で、職員の方に伝えたいことはありますか。

西須氏:常に伝えていることは、とにかく地域の現場の中にいる人そのものがシーズなんだよね。そこにいる人と付き合うことによって、自分も楽しく幸せになり、その中でいい仕事ができる。最後は多くの人たちの幸せにつながっていけるはずだと。

 結局は、人の幸せにつながればいいんだから。数字の問題じゃない。例えば、1個の企業が県に来て、県内総生産が1,000億上がりました、まあそれはよかったかもしれない。でも、それと、人々が必ず幸せになるかどうかということは、全然違うことだから。

 幸せっていうのはそれだけじゃなくて、人との関係を嫌がらない、惜しまないことでも生まれてくる。人をつなげて幸せにしようとすると、自分にとってもだんだんそれが幸せに変わってくる。いつも言っているのはそこなんだよ。

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 だから、現場の仕事は大変かもしれないけど、楽しそうな現場があったら自分から入って行くべきだと思う。嫌な現場に入る必要はない。もちろん、業務で義務的に入る必要があるものはしょうがないんだけど、楽しい現場に入って行くことによって、その現場全体が楽しくなっていく。

 その現場に一人の人間が1時間でも入って行くことによって、みんなの1時間が楽しく感じられる。そこに誰も入っていなかったとしたら、そのみんなの1時間の幸せはなかったわけだ。そういうことが、あちこちに広がっていけば、それによって、世の中全体の幸福度がきっと上がる。それはある意味、失われてきている『コミュニティの復活』みたいなものかもしれないね。

加藤:ありがとうございます。インタビューは以上です。ありがとうございました。

西須氏:こちらこそ、ありがとうございます。

西須紀昭 南部せんべい

県庁を卒業する慰労会にて、西須氏を伝説化したいということで作られたプレゼントの一部

編集後記

 ご自身がおっしゃっていた「人が好き」ということ。これは、お話をしていてすぐに感じた。いわゆる包容力というべきか、何かやわらかい空気が西須氏の周りには存在している。都道府県庁には、親分肌を持った人間が少なくなっているということであったが、西須氏がまさにそういう役割を担っていたのではないだろうか。

 世の中には数値化されづらい指標があるが、幸福度というのもその一つではないだろうか。幸福という観点に対して、マクロの視点は持つべきではありつつも、西須氏がいう通り、ミクロにおけるひとつひとつの幸せの積み重ねが、世の中全体を幸せにするのだろう。

 「自分一人の力で世の中を幸せにする」というと、雲をも掴むような話に聞こえるが、「自分がまず身近な人を幸せにする」ということを、みんなが実行できさえすれば、世の中は少しずつ幸せになっていくのではないか。

 私は、人が他人に与えた「幸せ」「不幸せ」そのどちらもが、連鎖していくものだと思っている。そして、その自分自身が他人に与えることができた僅かな「幸せ」が、周り回って大きな幸せになっていくと考えているし、多くの場合は自分に跳ね返ってくる。

 その逆もまた然りだ。だから、他人を蹴落として「不幸せ」にしていくような人たちは、いつかどこかのタイミングで『何か大切なもの』を失うことになる。例え、お金や地位が運よく手元に残されたとしてもだ。

 そう思うと、日頃から肩ひじを張ることなく、自らが直接関わる人たちへ、ささやかな幸せを感じてもらえることを意識して生きるだけでも、それは十分に世の中にとって価値のあることなのだと思う。

 やがて、それが人を伝い、回り回ることによって、自分では目の届かない場所も含めて、指数関数的に幸せを生み出すことにつながっていると思えば、意外と一人の人間の持つ力というのは、我々が認識しているより大きなものなのかもしれない。

 日々の仕事を通じて人を幸せにできる現場に自治体職員はいる。現場の最前線にいる彼らが生み出している「幸せ」は、彼ら自身にも見えないところで、彼ら自身が理解しているよりも、至大の幸福を生み出しているのではないだろうか。

※本インタビューは全7話です

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