インタビュー

【元栃木県庁 西須紀昭氏:第5話】地域を知ることは、座学ではできない

県庁の裏で産学官民100人以上が集まって花見

加藤:県庁の裏で100人以上の県職員や、産学官民の皆さんと一緒に花見をされていたと聞きました。これはどういう経緯で始めたのでしょうか。

西須氏:誰だって花見のシーズンで、自分の職場の裏にお花がいっぱい咲いてりゃー、まあ行きますよね。その延長線上で考えて、役所のポジションの上下関係を省いて、思い入れを持っているであろう県庁の中堅若手、上層部も含めて、上下取っ払ってやりとりができる場になったらいいはずだという思いで、あちこちに声をかけて呼びました。あとは、地域で頑張っている市町村職員から来ている人たちがいるのよ。彼らも、みんながみんな、居心地がいいわけじゃなかっただろうから。

 もちろん、「こいつには期待したい」って思うやつしか誘わないんだけど(笑)。それで、そこから「さらに仲間を呼んできな」っていうことで、だんだん広がっていった。

加藤:それは、いつぐらいのことになるんですか。

西須氏:2001年あたりかな。今、61歳だから。45、46歳の頃ですかね

加藤:当時、県庁は何人くらいの職員の方がいらっしゃったんですか。

西須氏:5,000人弱とか。本庁舎の裏で花見をやったんだけど、本庁舎には2,000人ぐらいですけど。

西須紀昭さん花見

県庁の裏で花見

花見の日程は1週間前に決める

加藤:最初のスタートした時の参加者はどういう方が多くいたんですか。

西須氏:職場内。当時、私がいた企画調整課っていう課の仲間だけでした。例えば、飲み会って5,000円ぐらい払うのが当たり前なわけだけど、コンロを持って、フライパンを持っていってね。せこい話なんだけど、即席焼きそば5食入りを2束くらい持っていって、ガチャガチャやっていれば、適当に飲み物を持ち寄ってもせいぜい数百円だろうと。

 俺が1週間前の天気予報見て、この日が晴れだっていうのが確認されてからしか告知はしない。当然出られない人はいて、それでも良い。1ヶ月前から決めたらさ、なんとなく「上下関係の中で行かなくちゃならない」とか思われたら嫌じゃん。

加藤:そうですね。

各都道府県職員の中には市町村とともに歩む親分みたいな人がいた

西須氏:段々歳をとるごとに、地域活性化とかそういう領域に自分自身の意識が強くなってきていて、できるだけ中小企業人であるとか、地域で頑張っている人と役所のつながりを強くしたいと思った。

 あと、一つあったのが、市町村の元気で優秀な職員を盛り立てたかった。県庁はどうしても市町村との関係が希薄になっていった。いうなれば遠い昔は市町村との関係っていうのは、良くも悪くも上命下達というか、上意下達というか、そういう関係でそれなりに強固だった。

 その強固さの中でも、各都道府県職員の中には市町村とともに歩む親分みたいな人がいて、そういう人は本当に一生懸命市町村を見ていたからすごく信頼もされていた。時代と共に、その上意下達もだんだんなくなり、段々その『親分』みたいな素晴らしい人材がどんどん消えていっちゃって、そういう意味では、親分が存在する時代は終わってしまった。

 時代の中で市町村との関係っていうのが、事務処理上の関係にどんどんなっていっちゃったんですよ。

西須紀昭氏 5話目途中

熱い人間が知り合いにいると仕事が進む

西須氏:一方において、それこそ地域活性化とか、そういう方向性への期待が高まっているにも関わらず、市町村自身もだんだん疲弊している。実は地域活性化で一番現場に近くて、一番活躍する場所のある人たちが、人員削減などによって、ルーティンのような事務処理に追われてきている。そして、その志の部分を彼ら自身誰かと共有しあうとか、そういう場を失ってしまっているように見えたんです。

 幸いなのか、県に市町村のエース職員が出向派遣で来ているし、そういう元気なやつを県庁の元気な連中と交わらせると、市町村に帰っていったときに、その関係性が役に立つ。

加藤:なるほど。

西須氏:行政の仕事っていうのは、何かやりたい時には、話すべき相手のセクションに考えをぶつければいいんだよ。それが、知らない者同士でも、ちゃんと機能するならいい。だけど、そんなことありえないんだよ。

 それに、こんなことを聞きたいと思った時に、実は直接の担当課に電話したってろくな答えが返ってこないとかね。そういう時に、知っている熱い人間がいるとそこを介して話せるわけですよ。そういうことで、解決できることも多いんですよね。

地域を知ることは、座学ではできない

加藤:今、宇都宮大学で特任教授をなされています。具体的にはどういうことをなさっているんですか。

宇都宮大学

宇都宮大学

西須氏:求められている目標があまりにもでかすぎて、はっきり言えばうろたえているっていうのが正直なところです(笑)。これは地方国立大学すべてに求められているところなんですけど、「地域に愛着を持ち」、「地域に骨をうずめてくれる、地域に就職してくれる学生を増やせ」ということ。

加藤:難問ですね(笑)。

西須氏:難問です(笑)。一番の目先は地域に就職する学生を増やすということ。そのために地域に愛着を持たせるというのをひとつ掲げなくちゃならない。そのために全国の駅弁大学は、地域学みたいな、いうなれば茨城学とかね栃木学とか、っていうその授業を開講せざるをえない。だから、これを来年度から開講していくんです。

 それはそれでいいんだけど、俺的に言わせてもらえば、残念ながら地域を知るって、座学ではないんです。付け焼き刃で「ちょっと何コマか聞きました」くらいじゃ、絶対ありえないんで。

※本インタビューは全7話です

他のインタビュー記事を読む

ネイティブアド



頁トップへ